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「話は分かったわ」
じーさんの執務室で土下座をする男たちを見下ろし、セリアーナはそう言った。
「セラ、こっちに来なさい」
「ほいほい…って!っちょ⁉」
近寄るとジロジロこちらを見てくる。
そして頬を掴み、肩を捻り、裾をめくった。
怪我をした場所を見たいようだが、治療に【祈り】の効果も合わさり傷痕一つ残っていない。
「傷は残っていないみたいね…。それで?どうするのかしら?」
向き直り、彼らに同行したギルドの幹部を睨みつける。
王都内での冒険者同士の揉め事を調停する部門の長らしい。
結構な強面さんなんだが、全く意に介さない。
14にしてこの威厳…、やっぱ大物だわ。
「はい。ダンジョン内での人間同士での戦闘は犯罪となっております。また今回その現場にクランマスターも同道していたことからクラン・ラギュオラの牙は解散となります」
へ~…。
ラギュオラ…東部の開拓初期を描いた「平原の火炎竜」って物語に登場する竜の名前だな。
開拓団の指導者が戦い力を認められて、褒美として山や森を消し飛ばし広い平原を作ったって内容だ。
よくあるおとぎ話かと思ったが、実際ラギュオラと呼ばれる竜が存在したと知った時は驚いた。
さすがにそこまでの力は無かったと思いたいが、ルゼル王国内に戦闘跡と思われるクレーターがいくつか残っているらしい。
彼らのクラン名はきっとそこから取ったんだろう。
無くなっちゃうのか…。
「それだけじゃ無いでしょう?」
ん?
「は…はい。今回被害にあったセラ嬢はミュラー家付きの冒険者であることから、ミュラー伯爵家への敵対行動となり、…はい」
なんとも煮え切らない感じだが、余り穏便な内容ではなさそうだ。
割って入りづらい雰囲気だし、後ろにいるアレクの袖を引いた。
(アレク…この場合どうなんの?)
(一家まとめて死罪だろう。平民相手でも死んでいたら死刑だしな。ダンジョンでの殺しってのはそれだけ重いんだ。ギルド側にしたって結構な失態だな。何人か首が飛んでもおかしくない。)
まじかー……そりゃ青褪めもするわ。
よくよく考えると、変な玉に乗って宙を高速移動し魔物を倒しまくる小さい影。
怪談に出てきてもおかしくない存在だ。
そう考えると攻撃してきた彼らを理解できなくもない。
もっと傷が残ってたりしたらともかく、見事に治ってしまったからな…。
何というか怒りがわかない。
それにこのあとやる事に気分良く挑むために、できれば後味の悪い様なことは避けたい。
とは言え、事態は俺がどうこうってのを越えてミュラー家の問題になっている。
貴族の面子もあるだろうし、どうしたものか…。
「お嬢様お嬢様」
「何?」
「彼らどうするの?」
「死刑だな。ダンジョン関係無しに伯爵家への攻撃はそうなる」
セリアーナの代わりにじーさんが答える。
彼らの顔は見えないけれど、部門長は顔が強張っている。
うーむ…
「なに?欲しいの?」
「いや、いらないけどもさ…」
「お嬢様」
困っているとアレクが会話に混ざってきた。
「ラギュオラの牙は戦闘慣れしていますし、人数も揃っています。どうでしょう?ゼルキス領の開拓村の護衛などにしてみてはどうでしょうか?ダンジョンと魔境と違いはありますが、やれるでしょう」
なあ?とラギュオラの面々に向かってそう言う。
そう言えば新領地で活動する冒険者たちを探していた。
内密にって事だけど、これならゼルキスに連れて行くって事で誤魔化せそうだ。
彼らも助かったとばかりに何度も頷いている。
「ふむ…。どうする?セラの主はお前だ」
「そうですね…いいでしょう。この貸しは大きいわよ。お前もそれでいいわね?」
「いいよ」
「ならこれで話は終わりね。来年私が領地に戻る時に彼らも一緒に連れて行くわ。アレク、彼らとギルドに行って詳細を詰めて頂戴」
「はい」
部門長もほっとしたような顔だ。
もしかしたらこの人も首が危うかったのかもしれない。
まぁ、なにはともあれ、割と穏便に落ち着けたんじゃなかろうか?
俺が悪いわけではないけれど、自分が理由で大量に処刑とかはちと寝覚めが悪い。
よかったよかったと部屋を出て行く彼らを見送った。
さあ!
色々あったけど、ガチャだガチャ!
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・8枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚




