363 セリアーナ side
「失礼します。奥様、フィオーラ様がお会いしたいとのことですが、どうされますか?」
10時の鐘が鳴ってすぐの頃、部屋に使用人が来客の知らせを持って来た、
彼女はこの街の生まれで、私が移り住んだ初期から仕えている者だ。
若くも無いし特別仕事が出来るわけでは無いが、察しがよく苛立たせる事も無いから重宝している。
「構わないわ。部屋に通して頂戴」
彼女がやって来たことも、その理由も予測は付いているが、私も直接確認したい。
部屋に呼ぶ手間が省けたと思おう。
「畏まりました」
そう伝えると、使用人は頭を下げて部屋を出て行った。
「こんな時間にフィオーラ殿とは……珍しいですね?」
「そうですね。何かあったんでしょうか?」
セラ程では無いが、フィオーラも朝は遅い。
その彼女が、この時間に部屋にやって来ることを二人は訝しんでいる。
まだ気付いていないんだろう。
「昨晩、セラが帰還したわ。ただ、屋敷じゃなくてフィオーラ達の家に向かったのよね……恐らくその事を伝えに来たのでしょう」
今までも一人で夜に戻って来た時は、窓から直接入って来ていた。
たとえ眠っていても、その距離なら私は気付くことが出来るが、昨晩は近寄る事無くフィオーラ達の家に行ったのだろう。
だから、セラが帰還している事に気付いたのは今朝目を覚ましてからだった。
帰還している以上、王都で何か問題が起こったという訳では無いはずだ。
魔物の気配が増えているが、敵対心は無いし、それは王都で得た新しい潜り蛇だろう。
そうなると、帰路で何かが起こったか……?
まぁ、一晩空ける余裕がある程度の事だろうし、緊急の事では無いか。
「ごきげんよう。朝から悪いわね」
程なくして部屋にやって来たフィオーラが、かけらも思っていない様な事を口にする。
案内してきた使用人がまだ部屋にいるから、そちらに配慮してだろう。
ジグハルトもだが、彼女達は私の事を敬いはしないものの、一応尊重はしてくれている。
「構わないわ。さあ、かけて頂戴。貴方は下がっていいわ。ご苦労様」
この街に移った初期から仕えているだけあって、余計な事は言わずに頭を下げてすぐに出て行った。
彼女が部屋から十分に離れたら話を始めよう。
◇
「……魔王種を倒したですって?」
話が始まってすぐに、予想だにしない言葉が飛び出した。
精々、帰りに寄り道をしていたら野盗の隠れ家でも見つけて、そこで壊滅させたついでに、面白そうな物でも盗んできたのかと思っていた。
正面からの戦闘では弱いけれど、夜間の奇襲なら潜り蛇を使えば、野盗程度はどれだけいても簡単に無力化できるはずだ。
だが、これは……エレナ達を見ると二人も驚きを隠せない様子だ。
驚く私達をよそに、フィオーラはセラから聞いたであろう、魔王種との遭遇や戦闘の様子を語った。
「奥に遺骸を入れてここまで運んで来たそうよ。浴槽で水に沈めて、さらに氷を入れて冷やしていたし、今は私が氷漬けにしているから、まだまだ劣化することは無いわね」
そして、そう結んだ。
折角の魔王種の遺骸だ。
廃棄せず持ち帰れて何よりだと思うが……それよりも気になることがある。
「位置的にユークトよね?そこの兵が追わずに放置したっていうのはどういうことなの?もしかして魔王種を何か近隣領地との揉め事に用いようとしているのかしら……?」
領内で魔王種を取り逃がすのは恥だし、何より魔王災を防ぐ為にも人里近くで発見した場合は、元凶である魔王種は何を置いても討伐しなければいけない。
たとえ他領に逃げようともだ。
周囲に魔物が残っていてすぐに追う事が出来なかったとしても、今の話では一時間近くの間、セラは山を下りてすぐの場所で【隠れ家】を発動していたようだ。
それなら、兵が追ってきたのなら見逃さないはずだ。
だが、兵は追って来なかったと言っている。
どういうことだ?
「ああ……貴方はずっと東部ですものね……」
と、肩を竦めている。
「そこまで魔物の脅威にさらされていない領地だと、末端レベルの兵士では本気で魔王種を狙う事は少ないわ。流石に領主や貴族は違うけれどね」
……どういう事?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




