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「はっ……はい!」
ほんの数秒程度だっただろうが、そのわずかな時間でアレコレと考えてしまった。
追い詰められると脳の処理速度が上がるとか言うけれど……それか?
ともあれ、王様直々のご指名を無視するという選択は無く、慌てて立ち上がった。
立ち上がった後は、いくつかの質問をされてそれに答えたが、幸いややこしい事は聞かれずに、俺の知っている限りの討伐の計画とサイモドキの情報を答えるだけで済んだ。
「ウチの騎士団団長と冒険者達が分断役を務めた」
「アレクシオ、ルバン、テレサ、ジグハルト、フィオーラと言った、リアーナ領の戦力が直接対峙し、見事討伐……」
こんな感じだ。
まぁ、俺が尻尾を切断したくだりは省いたが、それくらいなら問題無いだろう。
討伐までの一連の作業を、自領だけで賄う事が出来ているし、やましい事は無い。
が、王様の聞きたかった事とは少し違ったようだ。
「ふむ……。報告ではリーゼルは戦場にも直接出向いたとあったが、アレは何をしていた?」
リーゼルの活動内容は一連の作業の総指揮を執って直接参加もした、と先程の報告では大分端折られていた。
しかし、何をしていた……か。
どうしよう……先頭に立って魔王種と直接対峙したとか、カッコ良く伝える方がいいのか、地味ではあるけれど、遊撃として二つの部隊の援護を続けていたと、事実を伝える方がいいのか……。
危険な役割を率先して引き受けるってのはリーダーとして必要な事ではあるが、より上手くこなせる者がいる以上無理にリーダーがする必要も無いし、その辺りを冷静に判断して自分の役目に徹する事も同じくらい大事な事だ。
……正解がわからん。
立ち上がってしまった以上、じーさん達にアドバイスを求めようとしても無理だろうし……。
「どうした?陛下がお待ちだ。早く答えよ」
「はっはいっ!」
どうしたもんかと悩んでいると、脇に控える文官のおっさんにせっつかれた。
仕方が無い。
別にリーゼルの行動は咎められるような物じゃ無いし、変に脚色して俺がボロを出すよりは、事実を伝えた方がいいか。
「魔王種と直接戦闘を行う部隊の他に、その戦場に魔物が入って来ない様に壁の役割を果たす部隊が二つありました。リーゼル様は遊撃隊を率いて、その二つの部隊の援護を行っていました。私はその場にいなかったので詳しくは知りませんが、結果、両部隊はケガ人こそ出たものの死者はゼロで済んでいます」
全く詳しくない情報を胸を張って伝える。
「ふんっ……無謀にも魔王種との戦闘に直接参加でもしようものなら、呼びつけて叱り飛ばしていたが……少しは成長しているか。なあ?」
俺の報告を聞いて、つまらなそうにしてはいるが……王様から同意を求められて、周りの者達はリーゼルやリアーナの戦力の事を讃えている。
この流れにしたかったんだろうか……ツンデレさん?
まぁ、俺の返答は間違ってはいなかったみたいかな?
◇
謁見を終え解散となった後、俺達は一同別の間に通された。
調度品が少々豪華すぎる気もするが、談話室みたいな物かな?
その部屋で、じーさん達はソファーに座りお茶をしているが、俺は真っ先に化粧を落とし、【浮き玉】に身を預けて天井付近を漂っている。
想定外の出来事にエネルギーを全部使ってしまったが、空調の風に流されて、何も考えずにフワフワしていると、癒されるんだ。
先程の王様とのやり取りだが、別に悩んだ答えのどちらを選んでも問題は無かった。
俺があまり的外れな事を言うようなら軌道修正をするだろうが、要はあの場で王様がリーゼルの働きを讃える為のものだったらしい。
この部屋にやって来て、じーさんにどう答えたら良かったのかを聞いたらそう言われて、力が抜けてしまった。
「セラ、降りてこい」
「ぬ?」
その声に下を見ると、じーさん達は開けた場に移動し整列している。
何事だろうかと思ったが、一応俺もその列に加わる。
程なくしてドアが開き、文官らしき男達と女性が入って来たが……女性は確か王妃様の侍女だったはずだ。
施療をする予定だし、呼びに来たのかな?
その予想は当たりな様で、じーさん達はこちらに残って何やら話をする模様だ。
そして俺を含む女性陣は王妃様のもとへ……。
……また脱がされんのかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




