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謁見の当日。
着替えを済ませて朝から城に向かった。
メンバーは俺とミュラー家、セルベル家各夫妻の五人だけだ。
城という事もあって、従者は連れて行けないらしい。
城につき、簡単な作法のレクチャーを受けた後は、時間が来るまで待つだけだった。
【浮き玉】だけは許可を取っていたので持ち込めていたが、それ以外は【妖精の瞳】すら不可で、俺の戦闘能力はほぼゼロだ。
毎度の事だが、落ち着かない……。
「セラ、お前は何もしなくていいのだから、少しは落ち着け」
「へーい……」
床から天井付近まで行ったり来たりしていると、じーさんに窘められた。
鬱陶しかったかな?
「式も長いものでは無い。話すのは私に任せて、君は終わった後の事を考えておくといいよ」
ジェイクさんが笑いながら言って来た。
二人とも黒い似たような服を着ている。
家は伯爵で個人では男爵と、身分が同じだからかな?
何もしなくていいってのはわかっちゃいるんだが、いざもうすぐとなると、謁見なんてやった事無いし、どうにも落ち着かないんだよな。
ジェイクさんにどう答えたもんかと悩んでいると、じーさんがドアの方を見ながら口を開いた。
「来たか」
そして、すぐに部屋のドアをノックする音が響き、部屋に使用人が入って来た。
準備が出来た様だ。
◇
謁見の間と言うと、広いホールで入口から奥の玉座まで絨毯が敷かれて、広間の左右に騎士や貴族がずらりと並んで……そんなイメージがあるかもしれない。
俺はあった。
そして、確かにそのイメージ通りの広間もあるらしいが、そこが使われるのは、新王の即位や新領地の設立、あるいは王族の結婚等……国を挙げての一大イベントの時くらいで、毎回毎回そんな大袈裟な事はしないそうだ。
そして、俺達が使うのはもっと狭く小さい部屋だと聞いて、正直ホッとしたもんだ。
なのに、今俺が跪いている部屋は、テニスコートくらいはありそうな広さだ。
確かにだだっ広いホールに比べたら狭いかもしれないが……落ち着かない。
すぐ隣に転がしてある【浮き玉】に手が伸びそうになる。
その部屋では、ユーゼフを始めとした騎士団の偉そうなおっさん達に、文官らしき姿のおっさん達、王都の屋敷を任されている貴族のおっさん達……おっさんばっかだな……。
まぁ、そのおっさんだらけの部屋で、ジェイクさんやじーさん達と一緒に跪きながら待っていると、この国で一番偉いおっさんである、王様が、近衛隊の隊長のゼロスを伴い入って来た。
もっとも、それは入室の際に兵が告げたからわかったのであって、俺は頭を下げたままなので、今がどんな状況なのかはわからない。
文官らしきおっさんの1人が、魔王種との戦いがどのようなものだったかを語っているが、誰も一言も発さないからな。
多少脚色されたりと、事実とは少し違っているが、概ねあっている。
十分ほど続いたそれが終わると、ジェイクさんが代表で名を呼ばれ、今朝方隣の控室で返却された素材を渡した時は、少し部屋がどよめいたが、それもすぐに静まった。
ここまでは事前に聞かされた予定通りだ。
後は王様から、ご苦労的なお言葉を賜って、終わり。
そのはずだったんだが……。
「セラだったな?顔を上げよ」
何故か俺の名前が出てきた。
これは予定に無い事だな?
指示を仰ごうとチラっと隣のじーさんを見ると、同じくこちらを見て頷いている。
言われた通りにしろって事だな。
顔を上げると3メートルほど離れた場所に置かれた椅子に座る真っ白い服を着たおっさんが目に入った。
禁色って程じゃないが、男性の正装で上下白を着るのは王様だと聞いた。
他の人は差し色や勲章の様なものが違ってはいるが、下が白で上が黒の恰好だし、これは一目でわかるな。
年の頃は40半ばくらいだろうか?
金の総髪で、口元にビシッと整えられた髭を蓄えた、渋いおっさんだ。
リーゼルやエリーシャは母親似だな……。
「貴様も討伐に参加したと聞いた。貴様の口から話してみよ」
又聞きじゃなくて、当人から聞きたいのか。
しかし……これも予定に無い事だな。
手にジンワリ汗をかいているのがわかる。
というよりも、俺は会う人会う人から何もしなくていいと言われているんだけれど……。
後で王妃様に【ミラの祝福】をするから、その際の事はオリアナさん達と打ち合わせしていたけれど……これは全くの想定外だ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




