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「うーむ……ちょいと想定外のペースで来てしまったな……どのタイミングで出て行くべきか……」
領都を発ってから四日目の早朝。
街道から外れた草原に出した【隠れ家】内に潜み、リビングで朝食を取りながら眺めるモニターには、小さく王都の東の街壁が映っている。
まだまだ時間が早く、入場待ちの列は出来ていないが、今日も晴天だしきっと人が集まって来ることだろう。
俺の想定では、順調にいって到着は四日目の夕方だったのだが、それより半日縮めてしまった形だ。
リアーナやゼルキスは街道から外れるとすぐに森や山にぶつかってしまう。
俺一人での移動だと少々安全に不安があり、その結果、移動は街道沿いになる。
その辺は俺も一人で移動したこともあるし、わかっていた。
ところが、ゼルキスより西の領地に入ると、徐々に人目の付かない空白地帯も増えていき、特に平地続きの王都圏に入ると、その状況はより一層顕著になっていった。
街道沿いの発展具合は王国東部よりずっと上だったし、住人の数もそうだ。
それだけの住人を賄えるだけの広大な農地も有り、牧場らしきものまであった。
でも、それらが街道沿いの街や村の周辺だけで収まってしまっていた。
上を飛んでいて思ったのだが、単純に土地が余っているんだろう。
元日本人としては、この土地が余るって考えが頭に浮かばなかった。
重機も無いし、わざわざ離れた場所を利用しなくてもいいんだろうな。
羨ましい……。
それはさておき、これからどうするかだ。
正規の入場だから門から入ることになるが、まだ閉まっている。
門が開くまでここで待つのも、距離があるとはいえ遮蔽物が無いし、人目に付くかもしれない。
かと言って、ここで暗くなるまで待つのもな……。
他の街と違って、王都には街壁の外にはスラムっぽいものが広がっているし、あまり門前で長時間一人でいるのも変なのに目を着けられるかもしれないし……。
遅くなった時のことは考えていたけれど、早くなり過ぎた場合の事は考えていなかった。
詰め所で待たせてもらおうかな……?
◇
どうしたもんかと迷っていたが、結局詰め所で待たせてもらうことにした。
東門は俺が滞在中に【ミラの祝福】の練習に近くの村に行く際に利用していた門だ。
俺の事を知っている者もいるかもしれないし、王都の警備隊になら多少は顔が利く。
公爵様の使いでもあるし、それくらいなら我がままを通せるんじゃないかと思ったが、幸い俺の事を知る者がいた。
流石に王都の中に入る事は出来なかったが、その代わりにわざわざ伝令を出してくれた。
ミュラー家の王都屋敷には24時間警備の兵がいるが、その彼に俺がすでに到着している事が伝わった。
これで屋敷の人間が動き始めたら、迎えを寄こしてくれるだろう。
そして、それまでの間は中で待たせてもらうことになった。
彼等の業務は門が開いてからが本番で、一応交代で外に出たりはしているが、今の時間帯はまだまだやる事が無い。
中には時間つぶし用のカードやボードゲームが転がっている。
銀貨が机の上に置かれているし、きっと賭けでもしていたんだろう。
俺がそれに混ざるのはちょっとまずいが、観戦でもしながら時間を潰そう。
◇
つい先程7時の鐘が鳴ったばかりで、近くの農場の者など特別に許可を受けた者だけは、隣の別門を通れるが、まだ正規の門は開いていない。
しかし、少しずつ門前に人の列が出来始めてきている。
詰所の兵達もゲームを止めて、列の整理や万が一に備えて武器を手に、外に出始めたのだが……。
「セラ、お屋敷からの迎えの馬車が到着したぞ」
「はやくねっ!?」
たしかにじーさん達は早起きだったけれど……。
「……どうしようか?」
迎えに来てくれたはいいけれど、まだ正規の入場は行っていない。
入場開始は確か8時だったし、それまで一時間近くある。
どうしたもんかと兵の方を見ると、なんともないように言ってきた。
「入って構わないぞ。もともと身元も目的もはっきりしているしな。それでもお前だけなら無理だったが、中から貴族の迎えが来たんだ。留める理由はないさ」
と、中へ通してくれた。
「……ぉぉ」
久々にお貴族様の力を目の当たりにしたぜ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




