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「そう言えば、外から帰って汗を流したらすぐここに来たのよね?リーゼルの所へは顔を出していないの?」
ベッドで寝転がりながら本を読んでいると、セリアーナがそんな事を言って来た。
確かに風呂入ってすぐにここへ来た。
俺の仕事はあくまで準備で、肝心の結果には関わらないし、必要無いと思っていたのだが……。
「そうだね……風呂から出て真っ直ぐここに来たけれど。行った方がよかったかな?」
「作業の事なら、フィオーラかオーギュスト経由でするのが筋だしお前が行く必要は無いわ。ただ、お前へ任せたい仕事があるの。リーゼルから聞いて頂戴」
「ふむ……」
ここで言ってもよさそうなのにそうしないって事は、個人じゃなくて領主からの命令って事なのかな?
まぁ、俺に出来ないことは言わないだろうし、構わないか。
「わかった。んじゃ、聞いてくるよ。はい、起きて起きて」
お腹に触らない程度に足をパタパタ動かし、セリアーナに起きるよう促すと、渋々といった感じで起き上がった。
「仕方ないわね……。行ってきなさい」
起き上がるとすぐにテレサが側に寄って来て、服と髪を整えてくれた。
「ありがと。んじゃ、二人をよろしくね」
「お任せください。行ってらっしゃいませ」
テレサに礼を言うとニコリと笑って答えた。
相変わらずセリアーナは部屋に立ち入る人間を増やしたがらないから、何だかんだでテレサは今俺だけじゃなくて、セリアーナとエレナの面倒も見ている。
その分、俺の副官やそれ以外の仕事は行っていないが……、それなりに楽しんでいる様だ。
相変わらずの仕事好き人間だな。
「じゃ、行ってきまーす」
ベッドの下に転がる【浮き玉】に乗り浮き上がると、そう告げ部屋を出た。
◇
リーゼルの執務室に行くと、別室に通されて、そこで俺に一人で王都に向かって欲しいと言われた。
部屋にいるのは俺とリーゼルと、ミオがいる。
ミオは、一応男女二人きりって事を避けるためにいるってだけで、ドアの前に立っているから、大声を出さなければ内容を聞かれることは無いだろう。
リアーナ領から王都へは、魔物や野盗に襲われる危険がある最短距離を行けば半分程縮められるが、通常の陸路で行くと二ヶ月と少しかかる。
ゼルキスまでが一週間で、そこから王都までが二ヶ月だ。
マーセナル経由の船便を使えば、二十日そこらだが、それは除外しよう。
距離にしたら1000キロ以上あると思う。
「可能かい?」
「……そりゃ道は知っているし、可能だと思うけれど」
リーゼルの問いかけに、とりあえずそう答えた。
基本的に街道は王都に繋がっているから、方角さえわかれば辿り着くことは可能だ。
山越えと迂回のどちらを選ぶかはともかく、距離も問題は無い。
「魔王種討伐の報告を陛下にする必要があるんだ。その際に素材の一部を献上するが、それの運搬を君に頼みたい」
……ふむ。
「運ぶだけなら陸路も水路もあるけれど、何でまたオレが?」
魔王種の素材は貴重らしいけれど、それでも運ぶ方法はちゃんとある。
むしろ俺が1人で運ぶ方が、何となくだがうさん臭く思われそうだ。
「今リアーナから王都への最速便は、マーセナル経由で14日だ。君にはそれを更新して欲しいんだ。手法は問わないとしたら、君ならどれくらいで王都まで辿り着けると思う?」
「……手法を問わないね。うーん……」
ゼルキスまでが途中の休憩を挟んで一日弱。
距離だけならそれで三分の一くらいだとして、王都に近づくほど魔物は減るが、人目が増えていくはずだ。
普通だとペースは上がるが、俺の場合はペースは落ちて行くから……五日くらいか……?
「そういえば、ゼルキスまでが2日だったね」
「む」
なるほど……その設定はそのまま使うのか。
てことは……。
「10日ちょっとかな?」
「素晴らしい。では、改めて頼もう。セリアには既に話を通しているが、どうだろうか?王都まで行ってくれないか?」
「はーい。わかりました!」
いまいち要領は得なかったが、要は王都までかっ飛んで行けばいいって事だろう。
日数の調整なんかは上手い事やってくれるだろうし、俺にこの話を持ってくる時点で、王都での俺の受け入れ準備も整っているはずだ。
最近ちょっとだらけ気味だったから、ここらでピリッと気分を入れ替えるのも悪くない。
……ところで素材の一部って何を持って行くんだろう?
ゼルキスとマーセナルにも渡すし……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




