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「とぅっ!」
セリアーナの寝室にあるベッドの一つに【浮き玉】からダイブした。
ボフンと、二度三度ベッド上で体を弾ませてから体を起こすと、丁度【浮き玉】も床に降りていた。
最近気づいた事だが、【浮き玉】は使用者が離れるとその場にゆっくりと着地する。
昔ダンジョンで気絶した時もそんな感じだったらしい。
「ご苦労様。作業は完了したの?」
体を起こしたのを見計らい、セリアーナが作業の進捗具合を尋ねてきた。
「オレがやる分はね。フィオさんが残って確認をしているけれど、問題は無さそうだったよ」
そう……と一言呟くと、ソファーから立ち上がりベッドの上にやって来た。
そして、俺の体を裏返し、尻に頭を乗せて横になった。
「……ねぇ、その枕オレのおケツ」
「そう。気にしなくていいわ。それよりも足を動かさないで頂戴」
さらに、やや開かせた足の間に体を押し込み、足を肘置き代わりにしている。
すっかりリラックスモードだ。
「具合はどうなん?」
「問題無いわ。エレナも収まっているし、後は屋敷で大人しくしておくだけね」
エレナの方を見るとこちらを見て微笑んでいる。
「そか」
これ以上は言っても聞かないだろうし、大人しく枕役をやっておこう。
セリアーナの部屋は、応接室とそこと繋がる寝室の二部屋で構成されている。
今までの寝室は、彼女のベッドと親しい者を招いた時用のソファーとテーブルが置かれていただけで、広い部屋だけに大分余裕があった。
そこに今は、エレナ用のベッドも追加されている。
何故かと言うと、二人は仲良く妊娠しているからだ。
この屋敷なら使用人もいるし、一緒の方がいいだろうとセリアーナが提案し、そうなった。
もっともそれだけではなく、セリアーナの妊娠のカモフラージュの為でもあり、それはエレナも了承済みだ。
依然として彼女を狙おうとする者がいる以上、あまり動く事の出来ない妊娠期間は、いくら警戒してもし過ぎって事は無いだろう。
これなら、幼い頃からの付き合いのエレナが、妊娠中に家人のいない家で過ごす事を心配して、屋敷に部屋を用意した……と思わせる事が出来る……かもしれない。
アレクやジグハルトは、なんだかんだ言ってセリアーナも心細いから、側に誰かいて欲しいんじゃないか?と言っていた。
リーゼルは何も言っていなかったが、俺もそうだと思う。
それはさておき、セリアーナは4ヶ月目、エレナはもうすぐ5ヶ月目だ。
前世の妊娠期間は、詳しくは無いが十月十日と言うくらいだし、10ヶ月くらいなんだろうが、この世界の場合は8ヶ月ほどらしい。
二人とももう半分は過ぎたし、つわりももう収まっているそうだ。
時期が重なるのは魔王種との戦いに臨む前に跡継ぎを……って事だったんだろう。
それプラス、秋の雨季や冬といった、外から人が入って来にくい時期でもある。
なにか二人とも座っている事が増えたなーと思っていたが、妊娠していると聞いてびっくりしたもんだ。
「エレナもだけど、セリア様ももう外から見ても大分分かるようになって来たね」
「私は二人ですもの。これくらいじゃないと困るでしょう?」
首だけ後ろを向けてそう言うと、相変わらず尻を枕にしたままのセリアーナが答えた。
そう……、エレナは一人だが、セリアーナは双子ちゃんなんだ。
彼女の加護はお腹の中の子も対象なようで、流石に男女の違いは分からないが、すぐに判明した。
双子等の複数の子供は不吉だって迷信が前世ではあったが、この世界はそんなことは無い。
聖貨っていうファンタジーグッズのお陰で、むしろ縁起がいいそうだ。
ただ、やはり二人分の栄養も必要でその分髪や肌が痛んでいるが、これは前世と同じで妊娠期間中は薬や魔法を受ける事は極力避けた方がいいらしい。
もちろん【ミラの祝福】もだ。
最初セリアーナにねだられたが、どんなふうに作用するかわからないから、俺は断っていた。
ただ、直接お腹に触れずに弱く発動する程度なら問題無いと、色々調べた結果フィオーラが許可を出し、リーゼルもそれに倣ったため、この変な体勢に行きついた。
俺はともかく、セリアーナも相当間抜けな見た目になるが、本人がいいようだし、まぁいいか。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




