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本日は11章の人物紹介も投稿しています。
「……ぺったん、と」
街の東側街壁の、指定された箇所に模様の書かれた紙を貼り付け、裏から少量でもいいので、魔力を込めて版画の様にゴシゴシ強くこすると、その模様が転写されていく。
フィオーラ謹製のこれは、何かに模様を転写する事で、一時的に魔力を通すようになるものらしい。
効果はそれだけだが、大掛かりな……例えば結界の様に大掛かりな代物で失敗が出来ない物を作る時に、事前にこれでテストをするそうだ。
エミュレーターみたいなものか。
「よしっ、完了!……しかし、あちぃ!」
転写するのに力を入れたからか、額から汗が流れ落ちる。
尻尾で日傘をさしているから直射日光はあたらないが、気温はどうにもならんな。
湿度がそこまでなくそこまで不快感は無いが……そもそもこの黒い服がダメな気がする……。
他に丁度いい服が無いから、エプロンを外しただけの黒のワンピースだが、夏場はきつい。
【ミラの祝福】があるし、日焼けなんて気にしなくていいんだし、日射病対策に帽子でも被って、尻尾には傘じゃなくて、団扇を持たせればよかったか。
作業はこれで終わりだし、さっさと本部に戻ろう。
街壁から離れて、移動を開始する。
冒険者ギルドの側を通ると、暑いのに狩りの帰りなのか、獲物を引いている冒険者の姿が見える。
ご苦労様だ。
俺は夏は引きこもっているからな……今日は久しぶりの外出だ。
この作業は、通常は街壁の上からロープで降りて行うそうだが、ウチの場合は俺がいるからな……。
昨日頼まれて、何となく引き受けてしまった。
「……野次馬多いなー」
作業の本部は街の中央広場に設置されている。
場所は多少広めにとっているが、人払いはしていないので珍しそうに街の住民が集まっていて、兵士から説明を受けている。
その中には見知った顔も有り、彼等に手を振りながら本部に降りていった。
◇
「ご苦労様、セラ。確認をするからしばらく待って頂戴」
本部で作業完了の報告を済ませると、待機していたフィオーラにそう命じられた。
この一連の作業の監督役はフィオーラだ。
「セラ副長、お疲れ様です」
早く帰りたいなと考えていると、マーカスが氷の入った飲み物を出してきた。
さっきまで集まった野次馬の対応をしていたのに、気が利くにーちゃんだ。
「うん。ありがとー。……マーカス、1番隊で街の外の哨戒とかが仕事じゃなかったっけ?」
礼を言うついでに少し気になる事を訊ねた。
マーカス君は、最初は領都内の警備隊に所属していたけれど、その後は確か1番隊に引き抜かれて、そこで領内の哨戒任務に就いていた。
今は違うが、ゼルキス領で代官を務めていた家出身だけに、リアーナ領内にも顔が利くって事だったし、重宝されていたと思うんだけど……また戻ってきたのかな?
「はっ。当初こちらで警備隊に所属していた事もあって、街の事情に明るいだろうと先日から団長直属の部隊に配属されました」
姿勢を正し生真面目に答えている。
便利使いされている様な気もするが……、リアーナ領が出来てもう一年経ったとはいえ、騎士団の正規兵はまだまだ旧ゼルキス出身の者は少ない。
先程の野次馬との接し方を見ても、コミュ力が高そうだし、重宝されているんだろう。
「セラ、待たせたわね」
雑談をしていると、動作確認を終えたフィオーラがやって来た。
「問題無く作動しているわ。後はこちらで片づけておくから、貴方は上がって頂戴」
「はいよ。んじゃ、お疲れさまー」
「お疲れ様です!」
本部を発とうとすると、マーカスを皮切りに周りで作業をしていた兵達も揃って挨拶をして来た。
適当に俺も返しながら、【浮き玉】の高度を上げた。
流石オーギュストの直属……みんな行儀がいい。
2番隊はもっと砕けている。
強面ぞろいだし、あんな風にビシッとしたら迫力あるんだろうけれど、きっと似合わないよな。
というよりも、そんなことになったら俺が浮く。
「……ぷふっ」
想像すると、おかしくて吹き出しそうになった。
やめやめ。
お堅いことは、彼等や1番隊に任せておこう。
それよりも、さっさと帰ってシャワーを浴びよう。
「ほっ!」
屋敷目指して、【浮き玉】を加速させた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




