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サイモドキの搬送が完了し、代官屋敷に到着後、汚れとサイモドキの血を落とす為に、報告はアレク達に任せて風呂に直行した。
そして、使用人は断ったがテレサとフィオーラに体を洗われ、その後頭部や背面部を念入りに調べられた。
……自分で見られない場所だから仕方が無いとはいえ、最近人前で脱ぐのに慣れてきた気がする。
「どーよ?」
「……異常はありませんね。頭皮も頭髪も傷んでいません」
「背中も問題無いわね……。蹴った足も、斬りつけた指も問題無し。セラ、入っていいわよ」
サイモドキの血がかかった部位の確認をしていた二人から、問題無しとのお墨付きが出たので、浴槽に身を沈める。
「ふぃー……」
もうすぐ夏とはいえ、濡れたまま素っ裸で十分近く突っ立っていたから、すっかり冷えてしまった。
俺なら泳げそうなほど広い浴槽は、薬草から作られた入浴剤が溶かされ、湯が緑色になり浴室全体にミントのような香りがしている。
薬効は美肌らしいが……残念ながら俺には意味が無い。
「それでは、私達は出ておきますから、ごゆっくりどうぞ」
「ドアは開けておくけれど、眠らない様にね」
「へーい……」
手を振りながら返事をし、浴室から出て行く二人を見送った。
ドアが開けっ放しなのは気になるが、折角いい風呂なんだし、一人の方が落ち着ける。
北の村の代官屋敷は、基本的に外部の来客はまだ受け入れられる状況では無い。
まぁ、開拓や鉱山の採掘がメインの場所だし、代官も直接現場に出向く事が多いからな。
ただ、そういった場所だからだろうか?
現場に出て疲れた体を癒したいのかもしれない。
この屋敷と比べて似つかわしく無いほどに凝っている。
領主屋敷の地下訓練場にあるシャワー室に浴槽が追加されたら、ここと同じような感じになりそうだ。
「セラー。眠っていないでしょうね?」
浴槽の縁に顎を乗せてしばらく浮いていると、浴室の外からフィオーラの声がした。
「起きとるよー。今出るー」
まだそれほど時間は経っていないが……、二人も早く風呂に入りたいのかもしれないな。
先を譲ってもらったし、そろそろ出るか……。
◇
「ありゃ?三人とももう風呂入ったの?」
風呂から出て、ふよふよ漂いながら談話室に向かうと、討伐組の男性陣そしてこの屋敷の主の代官が机を囲んでいた。
服が代わっているし、なんとなく小ざっぱりしている。
ただ着替えただけってことは無いよな……?
「土埃と汗を流すだけだからな。時間はかからないさ。……二人は?」
カラスどもめ……。
アレクの言葉にそう思うが、あんまりこの世界の男性は風呂には興味が無いんだろうな。
衛生観はしっかりしているが、あくまで汚れを落とすだけでしか利用しない。
女性は結構風呂を楽しんでいるんだが……。
「今入ってるよ。先に俺だけ一人で入らさせて貰ってたからね。立派なお風呂ですねー。堪能しました!」
代官に向かいそう言うと、困った様な笑みを浮かべている。
「ははは……ありがとう。あれは妻がこだわった物でね。喜んでもらえて何よりだよ」
……このおっさんもカラスか。
こだわっているな……って少し感心していたのに!
「今彼等から報告を受けていたが、セラ副長も戦闘に参加した様だね。無事で何よりだよ……」
代官はその後一つ二つ話をして、部屋を出て行った。
まだ、運び込まれたサイモドキの警備や、これから戻って来る兵士達の受け入れの準備等があるし、忙しいんだろう。
三人の前に置かれた飲み物もよく見ると酒じゃ無いし、彼等もまだいつでも動けるようにしている。
皆真面目だな……。
「どうした?」
見ていたのに気づいたのか、ジグハルトが顔を上げた。
「ん?なんでも無いよ……。あ、そうだ!あの魔王種倒した魔法さ、あれ何なの?首貫いたのはわかったけど、その瞬間変な光り方してたんだよね」
誤魔化すわけじゃ無いが、話を変えてサイモドキを倒した魔法の事を聞く。
アレは俺が今まで見た事のある魔法とはだいぶ毛色が違った。
一撃で倒した事に違いは無いが、単に高火力、高出力ってだけじゃ無いはずだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




