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南の拠点での説明を終えて、アレク達のいる場所に戻ると、そこでは多くの兵士が作業をしていた。
東の戦闘に参加せずに、村で待機していた兵士達だ。
今回の目的は、魔王種を倒す事ではなく、その遺骸を手に入れる事だ。
極論だけれど、無傷の遺骸がそこら辺に転がっていたら、それでよかったわけだしな……。
で、彼等の役割は、この遺骸を無事領都に届ける事だ。
重さはどれくらいあるかはわからないが、車輪付きの荷台で運べるサイズではない為、この広場の周辺の木を伐採して、それを使ってソリを作り、それに乗せて馬で牽いて行く。
一の森とかで、俺が倒した魔物の処理で似たような事をやっているが……サイズが大違いだから、大仕事だろう。
「ただいまー」
少し離れた所で、その作業を眺めているアレク達の姿が見えたので、そちらに降りた。
アレクは盾を外しているが、痛めていた左腕は問題無いようだ。
ジグハルト達も合流しているが、彼等に疲労の跡は無い。
むしろ俺に気付いて、聖貨を見せて来ているし、余裕そうだな。
テレサとルバンも、直撃は無かったはずだし、こっち側は全員OKだな。
「時間がかかったな。向こうはどうだった?ポーションの要請って事は最初の分が足りなくなるくらいの被害が出ていたんだろう?」
「ついでに南側にも行って来たよ。北側が少し範囲が広がり過ぎて、部隊間の援護が難しくなってきていたんだって。それで被害が少し増えて来ていたらしいけれど、規模を縮小できるから問題無いって。南側は、順調。どっちもこのまま作戦通りで良いそうだよ」
「運び出しの応援も来るんだろう?なら、一先ずは俺達の仕事は終了かな?」
「一旦向こうで再編してからになるけど、ちゃんと送ってくれるそうだよ」
アレクとルバンの問いにそれぞれ答える。
まだ魔物の警戒のために、ここに留まる必要はあるが、俺達の役目は終了と考えていいだろう。
どの部隊でも死者は出ていないし、一見余裕の勝利だが、昨年からジグハルト達が時間をかけてしっかり調査して、備えてきた結果だからな……。
百人以上の兵士と冒険者を動かして、減った防衛力を他所の街から補充して……。
俺が何かやる事はあまり無かったが、これだけの大人数が関わる領地の一大事業が無事完了できそうで、ホッとした。
「姫……」
ホッとしていると、後ろにいたテレサが何かに気付いたようだ。
「ほ?」
「その背中はどうされたのですか?」
……背中?
そう言えばなんかスースーするような気がするが……。
「……んん?何だこれ!?」
両手を背中に回し、ペタペタと探ってみると、丁度肩甲骨の間あたりだろうか?
その辺から下にかけて、広範囲に穴が空いているのがわかった。
どこかにひっかけたんだろうか?
薄いシャツの上にワンピースを身に付けているし、二枚とも破れた事に気付かないってのは流石に無いと思うが……。
「肌に傷は無いし……、この服も破れたというよりは溶けている様ね……」
気になったのかフィオーラも後ろに回り、そこを触れたりしている。
肌に傷は無いのか……まぁ、痛みも何も無かったしな。
それにしても溶けた……?
サイモドキとの戦闘ではもちろん、両拠点へ行った際も俺はずっと空を飛んでいたし、アカメ達も何の反応も示さなかった。
攻撃を受けたって事は無いだろう。
はて……?
と首を傾げていると、何かに気付いたのかジグハルトが口を開いた。
「セラ、お前、アレの尻尾斬った時に血を浴びなかったか?」
「血……?」
「ああ、ソレがあったわね」
フィオーラも思い当たったようだが……どれだ?
「魔王種の血ってのは、その魔力がしみ込んでいるからな。まともな鎧でも、その血がかかったらすぐに腐食する。お前の着ている服は魔布や魔糸で編まれた物じゃ無くて、普通の服だろう?それならそんな風になるんじゃないか?」
「まじかー……あ、ありがと」
フィオーラが上着をかけてくれた。
流石に周りに兵士がいる中で【隠れ家】には入れないからな……。
「髪に付いた血が固まっていますね……。特に痛んだりはしていない様ですが、これはどういうことかわかりますか?」
肌や髪を調べていたテレサがフィオーラに訊ねた。
竜の血を浴びてパワーアップとか有りがちだけど、何かそういうのがあるのかな?
……呪いとかは無いよな?
「それなりの魔力があれば、直接飲みでもしない限り害は無いわ。少しくらいなら痛んだりもするでしょうけれど、【祈り】の効果もあるでしょうし、後で洗い落とせば問題無いはずよ」
バフもデバフも無さそうか……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




