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「おお……結構本格的じゃないか……」
要請があったのは騎士団が守る北東の拠点だ。
森の中にあって、ポコポコ人が死ぬ開拓拠点……正直、掘っ立て小屋に木の柵を立てただけの貧相な物を想像していた。
拠点の周りは堀がめぐらされ、その奥に馬防柵の様に柵が築かれている。
人間相手だとちょっと弱いかもしれないが、魔物相手ならこれで十分戦えるのだろう。
さて、開拓拠点が立派なのはいいとして、俺はどこ行きゃいいんだ?
拠点内を兵士達が忙しそうに走り回っているが、特に出入りの激しいひときわ大きな建物がある。
見た感じ倉庫みたいだけれど、そこでいいのかな?
「副長ー、ここだ!」
丁度そこから出てきた兵が俺に気付いた様で、手を振っている。
やっぱそこが本部だったか。
「お待たせ!ポーション持って来たよ」
手に下げた袋を彼に見せる。
中には高濃度ポーションが5本入っていて、水で割るだけで十分な効果を発揮するそうだ。
……カクテルみたいだよな。
「助かる!俺はこれから出動だから、中の奴に渡してくれ!」
それだけ告げると、こっち側の状況を聞きもせずに、バタバタと走り去っていった。
忙しそうだな……。
◇
建物はやはり倉庫の様だが、本部にするために中の荷は壁側に押しやられている。
そうする事で出来たスペースに机が置かれ、そこには地図や駒、報告書らしきものが広げられていた。
さっきの兵もそうだったが、倉庫の中には伝令兵らしき者達がいて、今も指示を受けて外に出て行く。
そして、その指示を出す者の中に、オーギュストもいた。
「あれ?団長じゃん」
若いし強いし、何となく前線に出ているかと思ったけれど、後ろで我慢していたのか。
「セラ副長か。ポーションは?」
「これ。一本で十本分くらいになるらしいよ。足りなきゃまた持って来るけど……」
「いや、十分だ。おい、持って行け。それよりそちらはどうなった?少し前に二度目の合図が上がっていたそうだが……」
「うん。ジグさんが倒したよ。こっちはアレクが少し腕を痛めたけど、大きい被害は無いよ」
受け取りに来た兵にポーションの入った袋を渡しながら、討伐に成功した事を告げると、建物の中が一気に沸いた。
オーギュストも興奮した様子で話しかけてくる。
「そうか……!こちらは範囲が広く隊が間延びして、徐々に被害が増えて来ていたからな……」
こっち側は山間部を含む広範囲をマークしている。
人数が多いのと馬がいるからってのが理由だけれど、流石に負担は大きかったか。
魔物を倒すだけじゃなくて、死体の処理とかもしながらだしな……そりゃ大変か。
「南側やリーゼル様へはその事は?」
「まだだよ。これから南にも伝えに行こうと思うけれど、旦那様は捉まるかな……?」
朝からずっと戦い続きだろうし、こっちほどじゃないにしても、南側の冒険者組だって消耗しているはずだ。
伝えたからって、すぐに「はい、終わりっ!」とはいかないだろうが、それでも精神面で余裕が生まれるはずだ。
問題は、リーゼル率いる遊撃隊で、彼等は拠点間を行ったり来たりしているが、俺のように空を飛んでいるわけじゃ無い。
森の中を移動しているから、接触するためには拠点間の最短ルートを外れて追いかける必要がある。
下はともかく、森の上は鳥の魔物がいるからあまりうろつきたくないんだよな……。
「そうだな……。セラ副長は南側の拠点に討伐成功を伝えてくれ。遊撃隊はこちらと向こうのどちらかで休憩をするから、その時に伝えればいい」
「そか……どっちかには必ず来るんだね。じゃあ、そっちは任せるよ」
「うむ。徐々に戦線を下げて日暮れ前には拠点に撤収できるはずだ。アレクシオ隊長には作戦通り進められると伝えてくれ。こちらからも再編成を終え次第、兵を出す」
一気に撤退すると魔物がついてきたりするから、時間をかけてじっくりと下がり、そして今日も拠点で一泊して、その後リアーナへ……。
それとは別に、魔王種の遺骸を運ぶ作業用の人手も出して貰う。
ハードだと思うが、ここは踏ん張って貰おう。
「りょーかい。それじゃ、オレは行くけどみんな頑張ってね」
今度は撤収に向けて忙しそうにしている兵達に【祈り】をかけると、外に出た。
外で戦っている部隊を見かけたら【祈り】をかけるくらいの援護はしようかな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




