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「えっほっえっほっ!」
【隠れ家】内に運び込まれた木箱から、中身のポーションをテレサが取り出し、俺が冷蔵庫に運び込んでいる。
常温でも問題無いと言えば問題無いが、折角の高品質かつ高濃度のポーションだ。
これを希釈するだけで、10数本分になるらしい。
出来ればベストなコンディションで保管しておきたい。
「よいしょっと」
冷蔵庫の扉を開き中に入れていく。
普段から俺がストックしている分は別に移しているが、そろそろ入れる場所が無くなって来た。
流石に冷凍庫に入れる訳にはいかないしな……。
40本位あるし十分かな?
その事を伝えに玄関前に行くと、テレサが空き箱を重ねて外に運ぼうとしていた。
地下の倉庫にはアレクが、そして【隠れ家】の玄関にはテレサがいて、ドアを開けっぱなしにして二人でそれぞれバケツリレーの様にして箱の出し入れを行っているが、一旦ストップしてもらおう。
「テレサ、もうポーションは一杯になるよ」
「!?わかりました。それでは先に箱を出してしまいましょう。アレク、一旦運び入れるのは止めて下さい。箱を全て出しますよ」
『わかった』
ドアから半身を出したテレサの声は普通に聞こえるが、外にいたアレクの声は【隠れ家】全体に響いた。
ドアを開けっぱなしにしていても外は外と認識している様だ。
高品質ポーションは値が張るだけに、破損しない様にやや過剰に梱包されているから、一辺30センチ程の箱一つに付き4本しか入っていない。
どうしても運び入れるだけより、箱を開けてそこから出してと二手間余計にかかる分、中に溜まってきてしまう。
廊下に箱が山の様になっている。
「オレも手伝うよ」
力仕事は苦手だが、なんかの役には立つだろう。
◇
「……セラ副長、聞いているか?」
「……きいとるよー」
会議室に響くオーギュストの硬い声に、こちらはテーブルに突っ伏しながら柔らかい声で返す。
木箱めっちゃ重かった。
俺が知ってる木箱はもっと大きくても軽かったのに……安物と高級品と中身が違うから、箱の材料も違うのかな?
空き箱を三個運んだだけで手足がプルプルする……。
【祈り】を使えばよかったかもしれないな。
「んんっ!では、話を戻そう……」
一つ咳ばらいをし、オーギュストは再び話を始めた。
会議の議題は、魔王種討伐の大まかな作戦概要で、【隠れ家】への運び入れが終わったところで招集された。
出席者はリーゼルや俺達、騎士団の面々に加えて、冒険者ギルドの支部長や討伐に参加する冒険者の代表たちと、ルバンはいないが主要な顔触れが揃っている。
顔見せと、簡単な情報共有の為に設けたんだろう。
この事がわかっていたら手伝わずに大人しくしていたのに……まぁ、今更この連中の前で取り繕わなくてもいいか。
気を取り直して顔を上げると、オーギュストは戦場予定地とその周辺が描かれた簡易地図の貼られた黒板の前に立ち説明を始めている。
地図は大部分が森で埋まっている。
その中にいくつかの開拓村や、周辺の地形、そして戦闘の予定地がしっかり記されている。
「2番隊と戦士団を中心とした冒険者達でこのラインを封鎖する。目的は二つ。魔王種の逃亡と、周辺の魔物の流入を防ぐ事だ。やる事は難しい事ではない。魔物を倒す……それだけだ。2番隊は隊長のアレクシオが討伐隊に参加する為、私が率いる。冒険者はザック殿、卿に任せる。よろしいな?」
オーギュストが戦闘予定地を囲むように、ラインを引いている。
二つの開拓村を繋ぐ様にして森を思いっきりぶった切っているな……。
「おう」
「うむ。この二つの部隊はそれぞれ距離がある為、部隊間の連絡と援護は領主様が率いる別動隊が行う」
皆の視線がリーゼルに向くと、余裕たっぷりの表情で手を上げ応えている。
「セラ副長。君は討伐隊に組みこまれるが、同時に二つの隊の支援も行ってもらう。我々の隊の補給拠点となるのはこの二つの開拓村だ。そちらにポーション類は運び込む事になるが、不足した場合君に届けてもらうことになる。合図は照明の魔法だ。戦闘予定地は既に伐採を済ませているから木に遮られることは無いと思うが、極力それが見える位置にいてもらう。いいな?」
「はーい」
少し移動距離が増えて規模が大きくなったけれど、クマの時とやる事に変わりは無さそうだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




