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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
11章・そろそろ魔王種とアレコレと

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326 怪しい人side

冒険者ギルドの建物の中に入ると、少々遅れてしまったせいで、中は冒険者で溢れている。

尤も遅れたと言っても、まだ早朝と言っていいくらいだが……。


「よう」


「おう。出遅れたな。もう目ぼしいのは片付いているぜ?」


「職人の追加が来るらしいぜ。商人達がさらに張り込んできたぞ」


顔馴染みの冒険者達と挨拶を交わしながら、奥の掲示板へ向かう。


この街の冒険者ギルドも他所と同じように、職人や商人達の依頼をここで受理し、それを掲示板に貼り出している。

魔物を狩る事に変わりは無いが、狩場の選別の目安になるし、普通は誰かしら受けているんだが、この街の場合は狩場が魔境だ。

一々魔物を選ぶような余裕を見せる者は少なく、依頼は何時も溜まったままだった。

結局依頼は消化されなくても、冒険者ギルドから素材は流れてくるから、特に問題は無かったんだが……。


詳しい経緯は知らないが、昨年から冒険者ギルドや騎士団が合同で教育を施していた見習いが、口を滑らせて親が隠していた聖貨のありかを漏らしたらしい。

そして、その親が領主に聖貨を全部売っぱらったんだとか。


ま、そりゃそうするしかないだろう。

今はこの街は他所からやって来た冒険者が数多くいる。

隠し場所が知られたのに呑気に家に置いておくなんて、馬鹿でもやらねぇ。


だが、売る側がケツに火が付いているんだから買い叩きゃいいのに、領主はそれを通常より高く買い取ったらしい。

さらに領主自らが公表しているわけじゃ無いが、冒険者ギルドを通じてその事を広めた。


どこの街にも、いつか聖貨を使う事を夢見て貯め込んでいる奴はいるが、10枚集めて実際に聖貨を使う事が出来る者は滅多にいない。

今回の事は、そう言った連中が聖貨を手放すいいきっかけになったんだろう。

そして、その連中が手にした現金を安全に、尚且つ自分の役に立つ物として目を付けたものが、魔境産の素材をふんだんに使った武具だ。

値は張るが性能は文句無しで、盗られるような物でも無くて、金の使い道としては文句無しだ。


聖貨を持っていない連中も、商人達がその需要を見込んで高値で素材を購入している影響で、狩りに出れば稼ぐ事が出来る。

冒険者ギルドの買取よりも割高の依頼を出しても、ここで他者より抜きんでる事が出来れば、まだ出来たばかりで若いリアーナの市場を押さえる事が出来るかもしれないし、勝負どころと見ているんだろう。


お陰で、まだ10日も経っていないのに冒険者周りは随分景気がいい。

おかげで俺達も活動資金に困ることは無いが……。


領主は住民から聖貨を回収し、住民はそれで得た金で景気が良くなる……上手い事やったもんだ。


「……ちっ」


掲示板に向かうと、言われた通り既に目ぼしいものは全て持って行かれている。

残っているのは、時間や手間がかかるものばかりだ。


他の連中の様に追加の依頼をここで待ってもいいが……いい加減入って来た時から向けられている視線が鬱陶しいし、今日は引くか。



拠点用に借り切っている領都北東部の安宿に戻ると、街に出ていた仲間も戻っていたのでそれぞれ情報を交換した。

冒険者ギルド、商業ギルド、街の西側、教会と、それぞれに日々入れ替わりで出向き、些細な事でもいいから情報を集めている。

それは、この街に来て1年以上経つが、欠かさず続けている。


「昨晩、騎士団本部に外からの伝令が複数来ていたらしい。詳細はわからないが、随分バタついていたらしい」


「冒険者ギルドはいつもと変わらなかったが……1番隊か?」


「だろうな。それが理由なのかわからないが、あからさまに警戒されていたな」


他から「俺もだ」と声が上がる。


「俺の方もそうだったな……」


冒険者ギルドで向けられた視線を思い出す。

冒険者ギルドの職員も騎士団だし、あれは監視だったんだろう。


気付いたのはここ数ヶ月の事だが、教会のあるこの北東部の兵の巡回が増えて来ていた。

最初は教会があるからかと思っていたが、徐々に出入りする者にまで及び始めている。


「……そうか。どうする?」


「……どうしようもないだろう」


その事に気付いた時から何度も繰り返された問答だ。


俺達の他にも教会や西側に雇われた冒険者が街に潜り込んでいるが、その監視のせいで碌に連絡を取る事も出来ず、どんどん情報が共有されなくなってきている。

いずれ、セリアーナを襲撃する事になるだろうが、はっきり言って今のこの街にいる戦力では成功はまず望めない。

だからこそ、いっそこのまま冒険者として過ごすか?と何度か話題に上がったが……、セリアーナの加護が問題だ。


領主の方はまだ穏やかだそうだが、セリアーナは領民には夫同様甘いそうだが、敵には大分苛烈らしい。


監視の具合から、恐らく俺達は既に捕捉され、いわば泳がされている状況なんだろう。

まだ俺達は敵対するような真似はしていないが……、だからと言って見逃されるかはわからない。


結局判断が出来ずにズルズル来ている。


近く、魔王種の討伐に主力が街を空けるそうだが、それでもこちらを遥かに上回る戦力を有しているし、俺達もだが恐らく他の連中も動かないだろう。


「何かあるまで待つしかないだろう……」


結局はこれしかないか。

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・3枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚

エレナ・【】・【緑の牙】・5枚

アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚

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― 新着の感想 ―
[一言] 監視している事がわかるように監視しているということは、自ら引く事を求められているという事だよ。 届けこの思い!笑
[一言] 襲うことも逃げることもできないって感じかな? セリアーナの手がじりじり近づいてるのを感じてるのに現状維持しかできないのは胃にくるでしょうな。 作中でも言及されてたけど、手が届きそうなチビッ…
[一言] この人達どうなるんだろうなぁ
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