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「なんか……警備が厳重だね……」
親父さんの執務室に近付くにつれて警備の兵士の数が増えている。
普段は部屋の前には居ても、廊下や階段には控えていないのだが、それだけ客が大物って事なんだろう。
だが、その厳重さから客が誰なのか何となく予想は付く。
ミュラー家と同格かあるいは格上。
この周辺でここより上の家は、リセリア家……つまりセリアーナ達だけだ。
そこが無いとなると、後はもう一つしかない。
同じ伯爵家で、領地が近く親交もあって、尚且つ直近でここまで警備を敷かれるような者が訪れる様な用事がある家となると、マーセナル領のサリオンさん位だろう。
「どうぞ」
執務室の前に着くと、前に立つ兵士がドアを開けてくれた。
「セラ、入りまーす」
一言告げてから中に入ると、親父さんに、ミネアさんにフローラさん。
そして、テレサと……。
「久しぶりね。セラ」
予想通りエリーシャさんの姿があった。
今まで会った時よりも少し落ち着いた印象を受ける。
髪型や服装は大きく変わっていないが、アクセサリーの土台が金から銀に代わっているからかな?
「お久しぶりです……1人で来たんですか?」
聞いたところ、エリーシャさんがやって来たのはリアーナに送る職人達の引率の為で、今朝がたゼルキスに到着したそうだ。
夫のエドガーさんは、船団を率いて海の上だとか。
領地の高官でもいいのに、王女とは言え新参者だし、領内に丁度いいアピールになるからと、わざわざ彼女がやって来た。
思い切りのいい人だ……。
随分早く着いたなと思い、そこも聞いてみると、リアーナから手紙が届いてすぐに領都とその周辺の街から数名ずつ徴収しながらやって来たらしい。
職人達は往復の期間も含めると2ヶ月近く家を空けることになるが、その間の生活費はリアーナが持つし、魔境産の素材を扱えるからって事で希望者も多く、無理やり連れて来るようなことは無かったそうだ。
あちらさんでは雨季とかによる職人への依頼量の波が少ない事も幸いした。
とりあえず、俺もその現場にいたし全くの無関係とは言えなかったから気にはなっていたが、これであの少年のやらかしに端を発した、リアーナの武具職人不足問題も落ち着くだろう。
新領地ならではの問題でもあるが、上手く解決してくれてよかった……。
と、そこら辺の事は俺が起きる前にすでに話し終えていたそうだ。
申し訳ねぇ……。
「職人達は今日一日この街で休んだら、すぐにリアーナ領都に向かうわ。兵士の護衛付きだから通常よりも早く到着できるでしょうね」
「我々も兵を動かす良い口実になったよ。流石に商人が護衛を雇えないから……と、その程度の理由で動くわけにはいかんからな」
が、手続きやらは既に終えているのに話す内容は仕事の事だ。
親父さんがいるからかな?
◇
さて、あの後親父さんは再び仕事に取り掛かり、俺を含む女性陣はミネアさんの来客用の部屋に場所を移した。
そして、昨年以来の【ミラの祝福】をエリーシャさんに施している。
「あーん……」
「どうぞ」
空になった口を開けると、すかさずテレサがフォークを口に突っ込んで来る。
話を終えた後、食事はどうしたのか?と聞かれ、「まだ。皆は朝食は?」と逆に聞き返すと、昼食なら済ませた……と言われてしまったからな……まさかもう昼を回っていたとは思わなかった。
親父さんの執務室に向かった際にルシアナが食事の用意を申し付けてくれていたようだ。
ありがたや。
「あのテレサが随分甘くなったものね……」
俺を膝に乗せているエリーシャさんが、何やら驚きを隠せない様子でそう言った。
「甘やかしているわけではありませんよ。エリーシャ様」
前回ここに来た時に似たような問答をやった気もするが、やっぱり俺は甘いと思うんだよな……。
見るとミネアさんはその事を思い出したのか、軽く笑みを浮かべている。
「そう……?私はよく叱られたものだけれど……」
「あれは、エリーシャ様がお勉強を放置して逃げ出すからですよ……」
エリーシャさんは中々ヤンチャさんだったらしい。
「テレサはエリーシャ様の侍女の候補だったんだっけ?結局親衛隊に入ったって聞いたけれど」
「ええ。入隊した後になりますが、護身の為の剣を教えたり等していたので、交流は有りました」
「ほーう……」
そういやリーゼルとは遠縁って言ってたし、それならエリーシャさんともだ。
テレサよりも強い人はいるんだろうけれど、王女様に教えるなら、同性で尚且つ縁続きの方が適しているか。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




