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「失礼します。テレサ様、商業ギルドから荷物が届いておりますが……こちらに運んでよろしいでしょうか?」
特に大した話をするでもなく、お茶を飲みながら街の事なんかについてお喋りをして時間を潰していると、使用人が商業ギルドからの荷物の到着を報せてきた。
部屋まで走ってきたのか、少し息が切れている。
今回の前倒しのゼルキス行きの件を聞いた翌日に運ばせた物で、道中俺達が追い抜いていたが……それでも5日……かな?
随分と飛ばしてきたな。
いくつもの街や領地を跨ぐ場合は、例えばA地点からB地点まではこいつが、B地点からC地点までは別の奴が……と分担したりすることも多いそうだ。
その方が効率がいいからだろう。
ところが、貴族絡みの依頼の場合は、道中の護衛が交代する事はあっても、基本的に引き受けた者が最初から最後まで運ぶそうだ。
荷に何かあったら責任を取らされるのは引き受けた者だし、それに折角のお貴族様からの依頼だ。
責任はかかるが、評価も報酬も自分だけで囲い込みたいんだろう。
だが、今回はもしかしたらその荷を運ぶ者も交代しているのかもしれない。
俺はともかく、テレサもいるのにそうするって事は、彼等もそれだけ急いで届けたかったのかな?
「お願いします。梱包を解くのは私が行いますから、手伝いは無用ですよ」
「はい。それでは。すぐにお持ちします」
今回の滞在はイレギュラーで、いわばお忍びに近いものなのだが、街に入る時の活躍で俺達の事は知られている。
その為テレサへの面会の申し込みが既に何件も入っていたが、面会用の服が無いという事で断っていた。
何か他に理由があって、それを隠す為とかじゃなく、本当にそれが理由だ。
俺にはよくわからないが、こちらで用意されていた服じゃなにかが駄目だったらしい。
その事を先程の使用人は知っていたからだろう。
急いで取りに部屋から出て行った。
もしかしたら商業ギルドに身内でもいるのかな……?
領主の屋敷で働けるって事は、そこそこ高い地位にいるのかもしれない。
「テレサは、お仕事するの?」
俺は今回の滞在期間は、このままダンジョンに行かないつもりだ。
仕事は手紙を届けた事と、ミネア、フローラ両名に施療を行った事で完了しているとはいえ、世話役付きでゴロゴロしている間に、テレサに仕事をバリバリこなされると、申し訳なさが……。
「その予定は有りません。今回私は休暇ですので……。それに、雨季明けの件が片付くまで大きな契約は行いません。彼等もそれはわかっているのでしょうが……大方討伐計画の進捗や成功の可否を聞きたいのでしょうね」
無駄な事を……と、テレサはため息交じりに呟いた。
「あら……」
まぁ、一応とは言え魔王種と直接戦う事になっている俺はもちろん、領地の代官達ですら漏洩対策の為かほとんど聞かされていないしな。
他領の商人程度じゃ無理だろう……。
◇
「……あ、おはようございます。セラ様」
俺の目覚めに気付いたのか、ルシアナがこちらにやって来た。
起床したら彼女がいるのにも、流石に3日目ともなると慣れてきた気がする。
ルシアナはこの世話役に就いている間は、家庭教師はお休みな様で、その事を喜んでいるってのを聞いたから、彼女に対しての心のつっかえが取れたからってのもあるかもしれない。
セリアーナやアイゼンと違って比較的自由な立場だったからか、割と呑気なお嬢さんだ。
「……おはよー」
体を起こし部屋の中を見渡すが……テレサがいない。
その視線に気づいたのか、ルシアナが口を開いた。
「テレサ様はお客さんが来ていて、お父様の執務室にいます。それと、セラ様が目を覚ましたら部屋に呼ぶようにとも言われています……恰好はそのままでもいいそうですが、よろしいですか?」
「む?うん……いいけれど……」
めっちゃ寝間着なんだけれど……それでもいいって客と言ったら……誰だ?
リアーナの面々か、それとも王都のじーさんとかかな?
ルシアナは知っているんだろうけれど、名前を出さなかったし……。
「ちとまって、顔だけ洗うね」
誰かはわからないが、それ位はやっておこう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




