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『姫、朝になりましたよ?起きてください』
隠れ家に響くテレサの声で目が覚めた。
……起こされたらすぐ起きれるんだよな。
「んー……っ」
大きく伸びをしてからベッドを降りて【浮き玉】に乗り【隠れ家】から出ると、服装から化粧までしっかり整えたテレサが立っていた。
「おはようございます。顔を洗い髪を整えたら着替えをしましょう。朝食は運ばせますか?」
「……ここで食べる」
「では、そう伝えます」
そう言うと、テレサは部屋の外に出て行った。
もっとも部屋から出てすぐの所に使用人が控えているから、彼女に伝えるだけですぐに戻って来る。
顔だけでも洗っておくか……。
タオルを手に、客室内に設置された洗面所へ向かった。
◇
今はまだ春の1月半ばだが、セリアーナからの要請で当初の予定では月末に向かうはずだったゼルキスに、予定を早めてテレサと共に向かう事になった。
話を聞いて3日後に出発と、少々ドタバタしてしまった。
移動の速さを優先するなら一息でゼルキスまで向かうのだが、道中の仕事を頼まれていて、領都からここまでの4つの街に立ち寄り、テレサは各代官と会談をしていた。
……と言っても領主の決定事項を伝えるだけではあったが。
その間俺は、例によって奥方に【ミラの祝福】をかけていた。
まだ立ち寄っていなかった2つの街もクリアし、この街に到着した時は既に夕方になっていた。
別にそのまま飛んで行っても問題無かったが、到着が夜になりそうだったので、ソールの街の代官屋敷に一泊させて貰ったわけだ。
ただ、客室はどれも1人部屋だったこともあり、用心の為俺は【隠れ家】に引きこもっていた。
テレサが自分以外は立ち寄らない様にと言いつけていた事もあり誰も来なかったが……この街での俺の評価がちょっと気になる。
わざわざ玄関まで見送りに来てくれた代官夫妻を見ると、特に妙な視線は感じないし、気にし過ぎかな?
「では、出発します」
「りょーかい」
【浮き玉】に乗り俺を抱えたテレサに答えると、一気に上昇させそのまま街の外を目指し加速していった。
「姫、このまま森の上空を通り抜けます。森の半ばまで行けば人の目も届かないでしょうから、そこから速度を上げてゼルキスまで休憩なしで行こうと思います。どうでしょうか?」
森の上空にさしかかって来た辺りで、テレサがゼルキスまでのルートを提案してきた。
どれくらいの速度を出すかはわからないが、順当に行って2時間かかるかどうか位か?
冬間近だった前回と違い、日中は暖かく速度を出してもそこまで消耗しないだろう。
「うん。それで行こう」
「はい。ただ、春は魔物の活動が活発です。姫には周辺の警戒をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はいよ!」
テレサが加速を始め次いで俺も【妖精の瞳】とアカメ達の目を発動した。
鳥型の魔物って、あまり大きくない割に獰猛なのが多く、容赦なく突っ込んで来るからな……。
距離があって正確な大きさはわからないが、魔物の数も多い。
魔境の魔物に比べたらさほど強くは無いが、それでもさっさと突破してもらいたいな。
◇
「見えてきたね」
ソールの街を出発して2時間程経った頃、ゼルキス領都の街壁が見えてきた。
街道を外れた場所を、高度をやや下げながら高速で移動してきたが、そろそろ人に見られてもいいレベルにまで速度を落とした方がいいだろう。
領都に入る為に検問所前で待機している者達や、その彼等を守る兵達が小さく見えているし、無駄に驚かせてしまう。
「速度を落とします。どうします?門を無視して壁を越えて中に入りますか?」
「んー……」
俺達は出入りは自由に出来る許可をもらっているし、目立つし姿を隠す様な事も無いから問題無いと言えば無いが……。
「いや、一応門から入ろう」
まぁ、礼儀は大事だ。
並んだりはしないけどな!
「わかりました。それではこのまま門に向かいます」
そして、テレサは俺の答えを予想していたのか、既に高度も下げて街道沿いに移動をしている。
この速度なら後10分位で到着かな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




