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「……確かにオレ向きかもしれないね」
どんな形状の物かはかわからないが、少なくとも俺が使って、誰かの邪魔になるって事は無いだろう。
「お前にはコレを譲ってもらっているしな。気にするな」
そう言うと右手を上げ、そこに付けてある【猛き角笛】を見せてきた。
以前、俺向きじゃ無いからと彼に譲った恩恵品だ。
それの効果を感じたのはクマの時くらいだったし、すっかり忘れていたが、そう言えばそれがあったな。
「そか……んじゃ、ありがたく」
「おう」
胸のつっかえも取れたし、いざチャレンジ!とセリアーナの方を向くと、待ちくたびれたのか腕を組みこちらを見ている……というか、睨んでいる。
このねーちゃんには、心の葛藤とかそういうデリケートなものは存在しないのかもな……。
まぁいい。
「おまたせ!」
「ええ、待ったわ。さあ、手を出しなさい」
「ほい」
言われた通りに、【蛇の尾】を持ったセリアーナの手に俺の手を重ねると、そのまま一息に開放、下賜を済ませた。
「……おお?」
【蛇の尾】は最初は布のベルトだったが、開放した事で布からチェーンに形状を変えた。
開放しても何も変わらない物もあるが、これは変わるタイプか……。
前世でバイカーが付けていた様な、ゴツイものでは無くて、両端が輪と錘状の飾りがついた銀色の細く華奢なチェーンだ。
色こそ違うが【緋蜂の針】とちょっと雰囲気は似ている。
セリアーナに渡すと、女性陣が集まりアレコレ批評をしている。
飾り気の無い所が今一らしい。
セリアーナは、自分ではあまり派手な物は身に付けたがらないが、アクセサリーが嫌いってわけじゃ無いからな……。
俺はこのシンプルな所が割と好みだけれど。
「結局これは……ベルトでいいのかしら?腰に巻くのよね?セラ、付けてみなさい」
「ほい」
受け取りそれを腰に巻く。
【蛇の尾】は1メートル位の長さだが、俺は細いし問題無いけれど、太っている人とかだったらどうするんだろう……?
太っているとかそんな理由で諦めることになるんだろうか……?
ファンタジーアイテムだし、調節されたりするのかな?
端の輪に反対側を通すと、先端に付いている錘状の飾りが重しになって、腰の位置に上手く収まってくれている。
ただ、巻いて余った分が40センチ程あるが、それが少し邪魔になりそうで気になる。
この余った分を入れるポケットでも新しく作って貰おうかな。
「アレク、【猿の腕】ってのは、腕が生えるだけで、危険な物じゃ無いんだよね?」
「ん?そうだな……それなりに力はあったが、使うだけで周りの物を壊したりするような事は無かったぞ。使うのか?」
「使いたい!いいかな?」
【猿の腕】が腕を生やすんなら、これは尻尾が生えるんだろう。
少なくとも発動するだけなら危険は無いはずだが、念の為セリアーナに確認を取る。
訓練所で使ってもいいんだが、使い道を考察するには俺以外にも人がいた方がいい。
流石に皆にあそこまで歩いてくれって頼むのも申し訳ないしな……ここで済むならそれが一番だ。
「端なら何も無いし、使うのならそこにしなさい」
「ほい」
言われた通りに部屋の端に移動した。
6畳ほどの何も置いていないスペースで、ここなら生えた尻尾の操作を失敗しても、何か壊れる様な事も無い。
「では……ふん!」
腰からお尻にかけてのラインを意識して、気合を入れる。
流石にこれだけ恩恵品を使ってくると、発動の仕方も何となくわかって来る。
「おや?」
発動し、お尻に生えているであろう尻尾を見ようと、体を捻り後ろを見るが……何も無い。
手で触れてみても、やはり何も無い。
何となく腰やお尻に熱を感じるから、発動しているはずなんだが……。
「どうかしたの?」
「うん……何か発動に失敗したのかも?」
……おかしいな?
「あら」
離れて様子を見ていたエレナが、何かに気付いたのかこちらを見ているが、その視線は俺のお腹辺りに向いている。
釣られて俺も自分のお腹を見ると、先程まで巻かれていた細い銀色のチェーンが無くなっていた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




