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アントーネ夫人は、細身の長身で、40歳前後のおばさん……もとい、御婦人だ。
よく鍛えてあるようで、膝に座った感じ、大分硬い感触がある。
俺の薄い尻には、それがよく伝わる。
痩せる必要などないし、主に荒れた髪や肌に作用するように施療を行ったが、グレアの時も思ったが、東部のご婦人方はよく節制している……。
土地柄なんだろうな。
……セリアーナは日頃から俺がくっついている事もあって、そんな風にはなりそうもないが、あまり領内でも差が出来過ぎると、奥様同士で溝が出来るかもしれない。
他の街にも偶に立ち寄るようにした方がいいか。
どうせ休憩ついでに小一時間程度お喋りするだけだしな。
アントーネの話に相槌を打ちながら、そんな事を考えていると部屋のドアを叩く音がした。
ドアを開けさせると中に入って来たのはフィオーラだった。
「あら、まだ終わっていなかったの?」
多少クールダウンはしたものの、あれからもミオとクロードは話を続けている。
それを見たんだろう。
確かにもう1時間以上経っているし、決定事項の最終確認みたいなものなのに、2人が盛り上がっているから、大分長引いている。
もう少しかかりそうな気配だ。
「休憩挟みながらだったからね。もうちょっとかかるんじゃないかな?フィオさんの方はもう良いの?」
「ええ。どれも問題無かったわ。ここの保管庫は中々の物ね。領都の保管庫と遜色無しで、調合の事を考えると他所で保管された物はあまり使いたくないのだけれど、ここで保管されていた物なら私も使う気になるわ」
フィオーラはこちらにやって来ると、勧められた席に座りながら、そう言った。
「可能な限り領内の他の街からの要望にも応えられるように、保管設備には投資を惜しみませんから……。領都はもちろん、王都にも引けは取らない自信がありますわ」
やや上から目線のその言葉に、むしろ自慢するように答えるアントーネ。
領都の屋敷にも薬品なんかを保管する倉庫がある。
俺達が結婚式の為に王都へ行っている間に、屋敷の改装をしていたが、その保管庫もその時に完成した。
ちなみに設計はフィオーラだ。
色々危険な物も収められている様で、俺は入ったことは無いが、自信作だとは聞いている。
「保管が上手く出来てないと、やっぱ駄目なの?」
錬金関係の事はよくわからないが、鍋に素材放り込んでグルグルかき混ぜるってわけじゃ無いだろうけれど、素材の良し悪しでなんか違うんだろうか?
ポーションは使う薬草で変わるとかは知っているけれど……。
「駄目ね。保管状態が悪いと素材が劣化してしまう場合があるの。見た目でわかる場合もあるけれど、1次加工済みの粉末や液体なんかは目で見てもわからないから、それが判明するのは作り終えた後……。その場合は作り直すことになるけれど、手間も素材もその分余計に使うことになるの。困った事にその素材もどこにでもある物じゃ無いから、再び手配するには時間がかかり過ぎるし……それを避ける為にも保管場所の確認は重要よ」
「へー……」
「ここが駄目だったら、魔導士協会から直接取り寄せるつもりだったけれど、その必要が無くて助かったわ。確実に品質を保った状態で届けてくれるけれど、手続きの手間がかかり過ぎるのよね……」
その手間が省けた事が嬉しいのか、フィオーラは随分ご機嫌だ。
「この街にも魔導士協会から運び込まれていますが、その際は特殊な馬車を使用しているのです。運搬中に素材を劣化させない為の工夫なんでしょうね」
「ほうほう」
アントーネの言葉に頷く。
冷凍車みたいなものか。
いくら運び込む先が保管設備に気を使っていても、運搬中に劣化してしまっては意味が無い。
流石にその辺りは抜かりが無いようだ。
ただ、そういった魔道具が組み込まれている馬車は、重量がかさむ様で、移動速度が遅いらしい。
恐らくその馬車もそうなんだろう。
船を使っても王都から港まで運ぶのにも時間がかかるし、船が着いてからもやっぱりそうだ。
それならここで賄えるのならそれが一番だ。
「あの2人……いつになったら終わるのかしら?」
フィオーラは新たに運ばれてきた自分の分のお茶を手にしながら、再び白熱して来た2人を見てそう言った。
「……そろそろ終わるんじゃないかな?」
そのはずだけど、ちょっと自信が無くなって来たかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




