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アリオスの街に到着し、馬車はそのまま代官の屋敷に向かった。
集めている途中の物資は、街にある倉庫に保管されているが、薬品は代官の屋敷に運ばれているらしい。
気温や湿度に左右されるそうで、保管するには設備が整った場所じゃないと駄目なんだそうだ。
「あれ?マーカス君じゃん」
到着し、馬車から降りると護衛の兵士達が整列していたが、その中に見知った顔が1人いた。
「はっ。お疲れ様です。セラ副長」
ビシッと敬礼をして来たのは、マーカスだ。
こいつ領都の警備隊のはずだけど……配置換えかな?
「彼は最近1番隊に移りました。土地勘があるので領内の哨戒任務にあたらせています」
ミオが横から伝えてきた。
「ほほぅ……」
そう言えば彼は東部でも中々の有望株って触れ込みだった。
セリアーナ達には物足りないと映ったが、あの人達のハードルは高いからな……。
めげずに仕事を頑張っているし、立派なもんだ。
「クロード様と奥方様が中でお待ちです。どうぞこちらへ」
そして無駄口は叩かず、屋敷へ案内を始めた。
◇
アリオスの街の代官、クロード・ゲイルとその妻アントーネ。
直系じゃ無いけれど、ミュラー家の一族だ。
案内された執務室で、クロードとミオが書類を広げて話し合いをしている。
基本的に街の警備がメインになるが、やはりすぐ側に魔境が広がるだけあって、万が一の際には魔物の相手をする必要がある。
魔境の魔物と組織立って戦う事が出来る者ともなると、この街にとっても貴重な戦力で、街から離す事はもちろん、命を落とされるような事態は避けたいんだろう。
白熱している。
「難しい話してますねー」
アントーネの膝の上で、白熱する彼等を見てそう呟いた。
実に盛り上がっている。
「最終的に夫が折れるでしょうが、街の兵士の中でも腕の立つ者を送ることになりますからね。彼等に何かあれば、それはそのままこの街、ひいては領地全体の生活に影響が出てしまいます。まだまだかかるでしょうね」
アントーネは少し大きな声で答えた。
先程まではもう少し小さい声だったんだが……わざとかな?
「なるほどー」
最後は折れるんだ……と思ったが、言われてみると納得できる。
領都の様にこれから発展していく街と違って、ここの様に出来上がっている街は、役割がしっかり用意されている。
そして、この街の役割は領地全体の物流の安定やバックアップと、非常に重たい。
手間を惜しんでいい加減に処理をして、その結果万が一の事が起きたら洒落にならない。
代官か……お腹が痛くなりそうな仕事だ。
「大変な仕事なんですねー」
「あまり家人には見せない様にはしていますが、悩んでいる事はよくありますよ」
「……君達。こちらまで聞こえているんだぞ?」
しかめっ面をしたクロードが、先程から呑気な会話をしているこちらに向かってそう言って来た。
ミオもやや気まずそうな顔をしている。
「貴方達が大きな声で話しているから、どうしてもこちらの話題もそうなってしまうのですよ。私はセラさんにこの街の事を話したり、領都やゼルキスの事を伺ったりもしたいのです。熱くなるのは構いませんが、それでももう少し落ち着いたらどうですか?」
2人とも真面目なのはいいが、だんだん感情的になって来ていたからな……アントーネの言葉にぐうの音も出ない様子だ。
クロードは、ゴホンと大きく咳ばらいをし、再びミオと向き合い話し合いを始めた。
先程に比べ、勢いも声の大きさも落ち着いている。
「ゼルキスの頃から、騎士団との交渉だとよくあった光景ですね。今は落ち着いていますが、そのうちまた熱くなって来るでしょう。その時はお茶にでもしましょうか」
夫の事をよくわかっている。
リアーナだと過激な事を言うのはセリアーナで、それを宥めるのはリーゼルだからな。
ゼルキスの親父さんは温厚な人柄だったけど……じーさんとオリアナさんはこんな感じだったのかもしれない。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




