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「済まないセラ殿。だが、フィオーラ殿の魔力と薬品の組み合わせで最も相性のいい土地がわかれば、それだけ戦闘が短くなるのだ。魔王種との戦闘に専念させるため、兵士達が周辺の魔物がなだれ込まないように防衛線を敷くが、魔境の魔物の大群が相手となると最悪の事態も覚悟しなければならない。戦闘時間が短くなればなるほど被害が少なくなるのだ」
「……なるほど」
箱の中身を想像して少々引いていると、オーギュストが俺の目を見て真剣な顔でこの作業の必要性を説いてくる。
同じく支部長も続いてきた。
「森での行動や戦闘に慣れているのは2番隊だ。しくじるわけにもいかないし、そいつらを連れて行く。よそ者なら死んでもいいなんて言う気はないが、それでもこの街の者に死んで欲しくねぇ。お前さんに負担がかかるだろうが……やってくれ」
「……にゃるほど」
あれか、魔人と戦った時の様にドバドバ魔物のお代わりがやって来るんだな。
あの時はあまり強くない魔物達だったし、俺一人でどうにかなったけれど、魔境の魔物さん達だからな……それも恐らく魔王種とべったりの。
そりゃヘビーだ。
「わかった……頑張るよ」
そう言うとおっさん達が口々にありがたいだの助かるだのと言ってくる。
……くそぉ……声援が野太ぇ!
◇
「次はこの組み合わせよ」
「ぉぅ」
フィオーラが、薬品を混ぜ合わせた液体を、容器に順に落としていく。
反応は……何も無し。
「そう……これも洗っておいて頂戴」
と、液体の入った瓶を脇に置いた。
そして、すぐにオーギュストが回収し、外に洗いに行った。
この部屋は、小さいがお偉いさん用の会議室で、調度品はそれなりの質の物が用意されているが、流石に洗い場は付いていない。
その為使った容器の洗浄は、オーギュストや支部長を始め騎士団のお偉いさんが行っている。
洗い方が甘く、結果に影響を及ぼしたりした時のことを考え、こんな仕事も手を抜くことなく緊張感を持って当たれる者……と言うことで、そのままお偉いさんたちがやる事になった。
いつも思うけれど、真面目だよな……。
「よし……フィオ、次はこれだ」
ジグハルトはフィオーラの助手として、薬品の調合を行っている。
大抵の事は力押しで解決できる人だけに忘れがちだったが、このおっさんもインテリ枠だからな……薬品の調合も堂に入ったものだ。
「わかったわ。セラ少し待って頂戴」
「セラ殿、どうぞ熱いタオルです」
作業に少し間が出来たことで、すかさずミオが熱いタオルを俺の目に当ててきた。
「ぁぃ」
作業開始当初はいなかったミオだが、戻ってこないオーギュストの様子を見にこの部屋を訪れたことで捕まり、俺のサポートをやる事になった。
別に俺は疲れるようなことはやっていない。
ただ、ひたすら土の入った容器を睨み続けるという、なんのカタルシスも無い作業なだけに、不毛とは言わないが、何というか……気が遠くなってくる。
幸いだったのは、一か所につき50通りも試せば、その土地の傾向はつかめるらしいことだろうか。
箱の中身を全部組み合わせを変えて4か所全てを、とかだとさすがに逃げ出したくなるが、これ位なら何とか……。
「出来たわ。セラ、これをお願い」
「ぉぅ」
もうそろそろ終わりが見えてきているし、もうひと頑張りだ……!
◇
「あのさぁ、今気づいたんだけど、別に今日一日で終わらせる必要無かったんじゃない?」
夜セリアーナの部屋で今日の作業の事を話していたのだが、ふとその事に気づいた。
なんか熱気に中てられついつい俺も頑張ってしまったけれど……。
「きっと作業をしていて楽しくなったのでしょうね」
「ほ……ほら、各責任者が一堂に会する機会は中々無いし、薬品だって取り寄せたりする必要があるし、早く準備ができるのならそれはきっと良い事だよ」
「ジグハルトに釘を刺しておいたはずですが、あれでは甘かったようですね」
淡々と事実を述べるセリアーナに、フォローを入れるエレナ、ジグハルトへの叱責を考えるテレサ。
……個性が出ているね。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




