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ガッツ溢れる彼女達を眺めていると、不意にテレサが訓練所の入口に顔を向けた。
話している途中なのにどうしたんだろうと、俺もそちらを見ると、セリアーナとエレナも同じくそちらに顔を向けている。
……なんかあんの?
「ジグハルトね」
と、セリアーナが呟いた。
ジグハルトはまだ春前なのに、フィオーラと共に調査だなんだと出かけていたが……戻ってきたのかな?
セリアーナはスキルがあるからともかく、2人も気付いていたのか。
本当に一体何を察知しているんだろう?
「よう」
程なくして、入口の扉が開きジグハルトが姿を見せ、そして、一言声をかけると中に入りこちらに向かって来た。
「久しぶりね。それにしても、貴方がここに足を運ぶなんて珍しいじゃない」
「戻ったのはついさっきだ。フィオもいるが、挨拶は後にさせてくれ。春の準備で調べる事があるんだが、セラを借りたい。いいか?」
春の準備……魔王種との戦いの事かな?
「構わないけれど、どこへ行くの?」
俺じゃなく、何故かセリアーナが許可を出すが、まぁいい。
でも、ジグハルトやフィオーラの調べ物に俺が役に立つ事ってあるんだろうか?
まぁ、調べ物って言うなら俺でも出来ることがあるかもしれないが……。
「下の騎士団本部だ。時間もそうかからないだろうし、危険も無い」
「わかったわ。セラ、ここはいいから行って来なさい。テレサもいいわね?」
「はーい」
何をするのかわからんままだが、ジグハルトとフィオーラもいるし、行けば教えてくれるだろう。
最近脳筋よりの活動が多かったが、ここらでアカデミックな仕事をするのも悪くない。
「わかりました。ジグハルト、お願いしますね?」
いつの間にか側に来ていたテレサはそう答えた。
何がお願いなんだろう……俺のお守か?
「悪いな……じゃあ、行くか。セラ」
そう言うと、ジグハルトは入口に向かおうとしたが、騎士団本部にはここから通路が繋がってもいる。
そっちを使った方が早いだろう。
「ほい。あ、あっちからの方が近いよ?」
誰でも使っていいって物じゃないが、よくよく考えれば俺もジグハルトも立派な騎士団関係者だ。
利用しても問題無いだろう。
「お?そうか」
何より通常ルートを使うと外に出ることになる。
それは寒いから嫌だ。
◇
直通の通路を使い、屋敷の麓にある騎士団本部へ辿り着いた。
いつもはここは1番隊の隊員がメインで使い、あまり2番隊の隊員達は見かけないが、今日は見知った顔がチラホラと。
ジグハルト達が調査に同行させていたのかな?
ジグハルトは彼等と挨拶を交わしながら、ずんずん奥へ進んで行き、ある部屋の前で足を止めた。
幹部用というか、お偉いさん同士の会談に使う会議室だが、中の声が微かに漏れている。
「ここ?」
「ああ。おいっ俺だ!入るぞ!」
と、ドンドンとドアを叩き返事を待たずに中に入っていった。
遅れて俺も中に入ると、部屋にはフィオーラにオーギュストに冒険者ギルドの支部長、それと参謀格の者達が揃って席についていた。
そして、フィオーラの前にはフラスコみたいな器具や、何か土の入った容器などがアレコレ置かれている。
他にも地図が置かれたり、魔物の絵が描かれた資料などが広げられ、それらを見ながら何か議論を交わしていたが、何をしているんだろう?
「ジグ……返事を待たないのならノックする意味が無いでしょう……?あら、セラ。久しぶりね……ごめんなさいね呼びつけて」
フィオーラはジグハルトにチクリと一刺しした後、顔を上げると俺に気付いた様で、呼びつけた事を詫びてきた。
「お久しぶりー。呼ばれたのは全然いいんだけれど……何するの?調べ物?」
「そうね……こっちに来て頂戴。見ながら説明をする方がわかりやすいでしょう」
そう言うと、フィオーラは椅子を引き、自分の膝を指した。
「ふぬ?」
何をするのかよくわからんが……資料運びとかじゃなさそうだな……。
割と気安い関係の面々が揃っているが、皆真剣な顔をしているし、それなりに真面目な仕事なんだろうな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




