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冬の3月に入って少し経ったが、訓練所を使う女性陣に新たなメンバーが加わった。
指導役のテレサと、彼女が募集、選別をしていた見習女性兵達だ。
人数は10人で、14歳から18歳の若い女性達となっている。
応募者はもっといたそうだが、一度に集めても仕方が無いという事で、各階層に配慮して冒険者の娘を5人、農家の娘を3人、商人の娘を2人とばらけて採用したそうだ。
一応選考基準として、最低限の礼儀作法等は見た様だが、あまり重視はしなかったらしい。
……この1年程でこの街も大分平穏になってきたが、それでも長い間開拓最前線として、荒っぽい空気で満たされていた。
冒険者になる程の荒くれ者ってわけじゃないが、それでもその荒っぽい街で生まれ育っただけあって、ゼルキスの領都や王都の住人と違って、ガサツというか……チンピラっぽいというか……まぁ、そんな連中だった。
テレサもそれに気づき、指導2日目で実技に入った。
初日はテレサが、2日目はエレナが、そして3日目の今日はセリアーナが、10人抜きをしてさらにその後10対1でボコっている。
もちろんボコられているのは見習達だ。
「こう……離れて見るとやっぱセリア様も強いんだね……」
「私やテレサとはまた違う戦い方でしょう?」
と俺を抱えて【浮き玉】に乗っているエレナが答えた。
最近エレナも【浮き玉】を扱えるように下賜した。
セリアーナとはぐれるような事態が起きた際に、迎えに行けるようにだ。
ちなみにその場合、俺は【隠れ家】に潜んでおく事になっている。
たとえどこにいようと、セリアーナなら見つける事が出来るし、下手に俺が動くよりかは安全だろう。
勘が良いのか運動神経が良いのか、あるいはその両方か……ともかく、すぐに使いこなしている。
セリアーナ達が戦っている場所から少し離れた、邪魔にならない位置からエレナの解説付きで見学をしているが、戦い方にも個性があって面白い。
テレサは剣と盾を持ち、その場からほとんど動くことなく完封した。
マンガなんかでよくある、足元に描いた円から一歩も出る事無くってヤツだ。
クソ強い。
エレナは、攻撃を捌きながら一気に駆け抜け、集団の外から一人一人を潰していった。
何度かダンジョンに一緒に潜った事はあったが、その際は彼女は支援役を主に務めていたから気づかなかったが、足の速い事速い事……彼女もまた一発も貰うことなく完封した。
クソ強い。
そして今戦っているセリアーナ。
「奥様は自分より身体能力が高い相手を想定して幼い頃から訓練を積んできたの。とにかく攻撃を受け止めない事、相手の正面に立たない事、足を止めない事……。君と試合をした時もそうだったでしょう?」
「だね」
その言葉通り、俺だろうと見習達が相手だろうと攻撃を受け止めたりせず、受け流して体勢を崩し、その隙をついている。
時たま俺が不発に終わった、燕返しや平突きからの横薙ぎとかを使っているのはお茶目か余裕か……。
とにかく彼女もクソ強い。
「あ、終わったね」
最後の1人は背負い投げだ。
俺が仕掛けた時は、腕を取り投げの体勢に入ったところで、逆に持ち上げられるという無様な結果だったが、これは見事な一本だ。
「魔物相手なら、ただ突いたり叩いたりするだけでいいけれど、人間……それもちゃんと訓練を積んだ相手じゃそうは行かないからね。彼女達は屋敷の警備だし、魔物以外にも人間を相手にする可能性もあるから、いい勉強になったんじゃないかな?」
「……そうだね」
俺からしたら、ここまで一方的にボコられ続けたら心が折れそうな気がするけれど……大丈夫かな?
エレナも出来る人側の人間だからな……。
「おや?」
ふむむ……と考え込んでいるとエレナが何か気付いた様な声を上げた。
「テレサが呼んでいるね。行こうか」
テレサは審判役を務めていたが、そちらに目を向けると、何やら手招きをしている。
「そだね、お願い」
何だろうか…反省会でもするのかな?
まさか俺にもやれとかは言わないよね……?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




