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テレサのゼルキスでの報告をセリアーナと一緒に聞いていたが、新航路は既に利用されているらしい。
その結果、王都経由で国中の品がゼルキスにも入って来るようになった。
思えばパーティーでも、果物以外を使ったお菓子が結構あった気がする。
今までも陸路で運ぼうと思えば運べたそうだが……時間も人手もかかる上に、量もせいぜい馬車2-3台程度だ。
コスパが悪すぎる為、何か特別な物を除けば、ほとんど入って来ず、入って来てもその分値段が上乗せされ高級品扱いになっていたらしい。
ところがこの新航路だと、大量の荷が20日かからずで運ぶことが出来る。
今はまだ利用できる者を選別しているそうだが、軌道に乗れば自由になって、いろんなものが入って来るんだろう。
……流通の転換期を見ている気がする。
「大変結構。アイゼンも馬鹿じゃない様で安心したわ」
報告の過程で、アイゼンについても少し触れていたが……姉の目は厳しい。
合格点には達していたようだが、それでもギリギリな雰囲気だ。
「……厳しいね。結構頑張ってたよ?」
「頑張るだけなら誰でも出来るわ。ルバンに任せている拠点も順調に成長している様だし、数年もしたら、その気になればリアーナはゼルキスを経由しなくても、いくらでも外から物を運べるようになるの。アイゼンが使えないままなら、私は実家でも切り捨てるわよ?」
セリアーナは真顔で言い切った。
「ぉぅ……」
アイゼンが領主になる頃にはリアーナも力を付けているはずだ。
ただでさえ爵位はこっちの方が上なんだし、わざわざお隣さんを気にしなくてもよくなるのか。
……大変だなー。
「そんなことより、お前の方はどうだったの?【ダンレムの糸】を実戦で使うと張り切っていたけれど?」
「ん?うん。使って来たよ」
あの内容をそんなこと、で切り捨てた事に少々驚きつつ、ゼルキスのダンジョンでの事を話した。
威力や俺が使う際の注意点、他者と共闘する際の使い方……、ダンジョンで相手はオーガのみと少々偏ってはいるが、満足いくまで試す事が出来た。
ゼルキスの支部長や冒険者に【ダンレムの糸】の事を知らせたのは、予定に無い事だったが、まぁ必要経費って事で問題無いだろう。
一通り話し終えるとセリアーナは、そう、と一言呟き頷いた。
「伝えた事に関しては問題無いわ。こちらであれだけ大々的に試射をしたのだし、仮に隠していてもそのうち伝わってきたでしょう。それならダンジョンの異常と警戒させるよりも伝えてしまった方がいいわ。結果的に集団戦の訓練も出来た様だしね……どう?【ダンレムの糸】は。使えそう?」
「うん。完璧に狙ったところに命中させるのは難しいけれど、大丈夫だと思うよ。ただ……森で使うのは危ないね……。一応俺なら離れた所に人がいてもわかると思うけれど、威力が高過ぎて森を荒らし過ぎちゃうよ……」
高威力ってのは魅力的だが、度が過ぎると問題だ。
生態系が安定しているダンジョンならともかく、外でともなると話が変わって来る。
ちょっとした縄張りの変遷で街への襲撃に繋がったりもするんだ。
迂闊にバシバシ撃ちまくって、森を荒らしてしまうと、それがどんな影響を及ぼすかわからない。
「そうね……森の浅瀬なら問題は無いでしょうけれど……、今度支部長に相談してみなさい。彼なら大体の魔物の生息位置や縄張りを把握しているでしょう。彼が駄目だと言ったら、その時は森の狩りで使うのは諦めなさい」
「はーい……」
残念だが……まぁ……しゃーないか。
「でも、またこれからもゼルキスに行くんでしょう?ダンジョンも中層の手前での狩りは余裕みたいだし、そこから先だと遠距離手段があるのは心強いよ」
俺の力ない返事を気にしたのか、エレナがフォローを入れてきた。
「それもそーだね!」
確かに森での使用は難しいかもしれない。
ただ、これからも俺はゼルキスのダンジョンに通うだろうし、それに何より、この街にもダンジョンがそのうち出来る。
そこでガンガン使っていけばいい。
その時に備えて、練習は欠かさない様にしておこう!
「あ、そーだ。聖貨渡す分があるよ」
「あら素敵」
覚えているうちに渡さないと……後になると渡す時に損したような気持ちになるんだよな……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




