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「お疲れ様です!セラ殿。テレサ殿」
リアーナ領領都の西門の門番達が、俺達に対し一斉に胸に手を当てる敬礼をした。
寒い中防寒具はマフラーと手袋だけなのに、ビシッとしている。
門の奥には詰所の様なものがあるが、そこから待機中の者達まで出て来る念の入りよう……1番隊だな。
「はい、ごくろーさま!」
同じく俺も答礼する。
「寒い中ご苦労様です。どうぞ職務に戻って下さい」
「はっ!失礼します」
テレサの言葉に職務に戻っていくが……実に真面目だ。
門をくぐり少し行ったところで振り向きそちらを見るが、お喋りをしている様子もない。
「真面目だねぇ……」
普段門を利用することは無いが、いつもあんな感じなんだろうか?
2番隊とは大違いだ。
彼等だと、口笛吹いたりゲラゲラ笑いながら出迎えるだろう。
「検問に立つ兵はその街の顔でもありますから、礼儀作法も含めて訓練を受けています。特にリック隊長は厳しいですからね……」
「役割が違うからウチはアレでいいのかな?」
2番隊は騎士団っぽさよりも、タフさ荒々しさアグレッシブさが最優先で、規律は最低限守れればそれでいいって感じだ。
悪い連中じゃないが、こういったいかにも兵士然とした振る舞いには反発するだろう。
「少なくとも今いる者達や今後2-3年の間に採用される者達は、作法には目を瞑るでしょう。その頃には領地も安定して通常の採用試験を行えるはずです」
「ほーう……。2-3年か……それだけ時間があれば、連中も角が取れるかな?」
変に指導するより、時間をかけて性格が勝手に丸くなるのを待つ方が穏便に行きそうだ。
「仮に上手く行かなくても、彼等は対人業務はありません。その影響は少ないでしょう。……さて、姫。屋敷に向かいますから掴まって下さい」
「ほい!よろしく」
答礼の為に手を放していたが、再び彼女に掴まる。
通常領主屋敷に向かうには、地上を移動する場合だとここから街の中央広場まで行き、そこから南に曲がり現在建設が進められている貴族街を抜けて最後に坂を上る必要があるが、【浮き玉】を使うと西門から入ってすぐの高台を上れば、そこが屋敷だ。
警備の兵がすぐ側にいる状況で、裏から入るのはちょっとアレだが、ここは目を瞑って貰おう!
◇
「ぁぁぁ~…………」
カポーンとは効果音はしないが熱い湯に身を沈め、声を漏らす。
高台を上り屋敷に着いたが、1週間も空けていただけに流石に窓からでは無く、玄関から中へ入った。
すると、セリアーナの指示で風呂の用意がされていて、そのまま風呂まで直行することになった。
ちなみに俺はセリアーナ用の風呂で、テレサは客用の風呂だ。
街の西門はセリアーナのスキルの範囲内だから、俺達が戻ってきた事に気づいたんだろう。
「セラちゃん、顔赤くなっているけれど……大丈夫?」
例によって使用人付きなのは落ち着かないが、ありがたい事だ。
「んー……?のぼせてきたかも?……」
風呂に入って20分程経っただろうか?
ゼルキスの事をあれこれ話しながらだと、時間が経つのも早い早い。
温まるどころかすっかりのぼせてしまった。
「そろそろあがりましょうか?奥様にも報告に行くんでしょう?」
「あ、ありがと。そうだね……んじゃ、そろそろ……」
渡されたグラスを受け取り、一息で飲む。
レモンかグレープフルーツの様な柑橘類の果汁が入った程よく冷えているドリンクだ。
【隠れ家】の風呂は使い勝手ならそっちの方が上だけれど、ここら辺のサービスは無いからな……こっちの風呂もたまに使うにはいいもんだ。
「髪の毛はどうしましょう……少し時間がかかるわね」
体を拭き用意された服に着替えたが、髪はまだ濡れたままだ。
タオルを巻いているが、乾くにはまだ時間がかかるだろう。
使用人の中にはドライヤー魔法を使える者もいるが、彼女は使えない御様子。
まぁ、俺も使えないしな!
「奥様は旦那様の執務室でしょう?あそこに行けば誰かが乾かしてくれるだろうし、このままでいいよ」
「そう?……叱られない様にね?」
「大丈夫大丈夫」
心配そうな彼女に笑って答える。
普通だととんでもない事だが……俺の場合そういった振舞いを許されているというか……むしろ望まれているふしがあるしな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(11)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




