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一週間の滞在期間を終えて、今朝方ゼルキスの領都を出発した。
今回の滞在は概ね予定通りにいったが、アイゼンの件はいい意味で想定外の出来事で、その礼として、テレサは俺が貰っているのと同じゼルキス領内の移動許可を得た。
基本的には【浮き玉】で移動する事になるし、途中で街に立ち寄る事はほとんど無いだろうが、それでもあるにこしたことは無い。
一応貴族という事で検問はスルー出来るが、今後も行き来する事はあるだろうし、中央から離れたこの地で毎回毎回貴族の特権を振りかざすのは、あまりよろしくないだろうが、領主のお墨付きとなれば話は別だ。
親父さんからも冬が明けたらまた来てくれと言われたし、テレサのゼルキス領デビューとしては上々。
俺も【ダンレムの糸】を実戦でしっかり試す事が出来たし、有意義な時間を過ごせた。
次来るのは来年の春かな?今回は中層の手前までだったが……そこから先を目指したいな!
◇
日中という事もあり街の近くでは速度を落としていたが、街を離れてからは一気に速度が上がった。
街道沿いに進むのではなく、森の上を通ったりとショートカットをしながら、グングン進んでいる。
が、速度を上げるという事は受ける風も強くなるわけで……。
「ぐぁぁぁ……一週間位しか経ってないのに……大分寒くなってるねー」
行きと同じくコートに帽子にマフラーと防寒対策はしっかりしているが、それでも服の隙間から寒風が入り込んで来る。
風の抵抗を減らすために、前傾姿勢を取っているから、それがマズいのかもしれない。
冬の間は領都から出る気は無かったが……これは秋の移動も避けた方がいい気がする。
【祈り】を使う事で体調は崩さないで済むとは思うが、この寒さは単純にきつい。
「もう間もなく到着しますが、一旦降りて休憩しますか?」
「うぐぐ……どれ位かかりそう?」
ゼルキス領都を発ってから3時間近く経ち、少し前にゼルキス領を出てリアーナ領に入っている。
もう半分程は道程を消化したはずだ。
「あの森を越えればもう間もなくソールの街です」
体を起こし前を見れば森が広がり、それに沿うように街道が大きく曲がっている。
陸路だと大分遠回りになるが、俺達には関係無い。
森が陰になって街はまだ見えないが……30分かからない位かな?それなら半端に休憩するより一気に街を目指すか。
「休憩は無しで、このまま行こう。一応人目は気を付けて!」
「了解しました。森の上は速度を上げますから、しっかり掴まっておいてください!」
それを聞き、俺は彼女にしがみついている腕に力を入れ、同じくテレサも俺の腰に回す腕に力を込め、さらに【浮き玉】の速度を上げていった。
「姫!あちらを。もう見えてきましたよ!」
森の半ばまでさしかかったところで、テレサは前方を指差し、風に負けない様に大きな声で街が近づいて来たことを伝えた。
それを聞き顔を前に向けると、やや貧相な街壁が森の先に見えていた。
◇
ソールの街はリアーナ領に所属し、ゼルキス領との境にある街で、街の南西に俺達が越えてきた森があり、その反対の北側に農業地帯が広がり、人口は3000人弱とやや小規模ではあるが、住民の大半が農業に従事しリアーナ領の食糧庫の役割を果たしている。
出入りする人間も、農作物を買い取ったり、あるいは王都や領都の品を運んで来る商人がほとんどで、揉め事なんてほとんど無いんだろう。
一応近くの森を警戒する為に、この街出身の冒険者を中心としたクランが警備を担っているが……まぁ、平和な街だ。
その平和な街を代官屋敷を目指し案内の騎乗した騎士の後ろについてのんびり進んでいる。
「姫はこの街を訪れた事はありますか?」
「2回だけね。と言っても、ウチの奥様が領都に行く時と結婚の為に王都へ向かう時に一泊した時の事だから、ほとんど何も知らないね」
街の様子を見ながら聞いて来たテレサにそう答えた。
大きい建物こそ多数あるが、あまり人の気配は無い。
港側の倉庫街なんかと近い雰囲気かもしれないな……。
「この街は収穫物を保管する倉庫に大きく場所を取っていて、あまり外の方が訪れても楽しめるものはありませんね。収穫前などは、作物の出来を見る為に商人が訪れることがありますが……」
俺達の話声が聞こえたのか、前を行く騎士がそう教えてくれたが、マジで倉庫街みたいなものなのか。
「……なるほど」
テレサも納得がいったのか頷いている。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(11)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




