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昼餐会から二日経った滞在六日目。
昨日に続き今日もアイゼンとその従者はテレサと共に商人ギルドの会合に出席している。
特に何か仕事を任せているわけでは無いようだが、議事録を取らせたり細々した事をさせていたらしい。
能力が無いわけじゃ無いんだが、あまりそう言った事務方の仕事は性に合わない様で、今までは敬遠していたそうだ。
昨晩親父さんに感謝の言葉を貰い、明日からも頼むと言われていた。
ゼルキスが今までと変わらず辺境の最前線なら、じーさんみたいなマッチョ思考でも良かったんだろうけれど、これからはウチのバックアップもやって貰わないといけないし、今後もこの調子で成長して欲しいものだ。
さて……アイゼン君の未来はどうでも良いとして……俺は今日も今日とてダンジョン中層に出向いているのだが……。
「ぬぬぬ……人が多いなぁ……」
冒険者達もお休み期間が明けたのか、ここ数日お目にかからなかった盛況さだ。
この状況であまり速度を出すと驚かしかねないので、ふよふよと低速で進んでいる。
もうすぐ中層に辿り着くが、浅瀬の奥からここまで、狩場はどこも人の姿があった。
いつも通り中層の入り口近くの広間で狩りをする予定だったが……厳しいかな?
「セラ嬢!」
どうしたもんかと漂いながら悩んでいると、下から俺を呼ぶ男の声がした。
「お……?」
そちらを見ると、直接絡んだことは無いがアレクの知り合いで、ゼルキスでもそこそこ経歴の長いベテラン冒険者のおっさんが、こちらに向かって手を振っている。
少し距離を開けて20歳弱くらいの若い冒険者が何人かいるが……引率役なのかな?
◇
「ほっ!」
【ダンレムの糸】から放たれた矢が、地面を抉りながら群れのボスとその取り巻きを貫いた。
倒した数は3体だが、上手く群れを分断できている。
「よしっ!端の少ない方から削って行くんだ!残りは無理に戦って捕まるなよ!」
すかさず指示が飛び、それに従うように冒険者達が残りのオーガに仕掛けた。
若手のみで本来ならまだまだオーガの群れと戦うには能力不足だが、こちらの数は13人でオーガの数は11体と、数では負けておらず、その上オーガは統制を欠きただの集団に成り下がっている。
今ならいい勝負だ。
この13人は、4人が一組3人が2組の三つのパーティーで、その4人のパーティーが指示通り端から襲い掛かり、そして残りの2組が群れの合流を防ぐべく、間に入り込み牽制を行っている。
「今度はやれそうか?」
「さっきの戦いは分断を失敗してグズグズしている間に合流されたが……今度は上手くいきそうじゃないか?」
「……おっ!まずは一体仕留めたな。いいペースじゃないか?」
指示を出したおっさんと同じく残りのおっさん二人は、いつでも援護に入れるように武器を手にしながらも呑気な声で、戦闘の様子を解説している。
「結構やれるもんだね。最初に比べたら大分進歩してるんじゃない?」
そこに俺も混ざり、偉そうな事を言ってみる。
最初戦った時は、まともに攻撃を盾で受けて吹っ飛ばされたり、普通に切りかかって全く歯が立たずに反撃を食らったりと、中々上手くいっていなかったが……二戦三戦と繰り返すうちに徐々にコツを掴んできたのか、結構戦えている。
「まー……ボスさえ潰せればな。今は姫さんがやっちまっているが、普通だとそこが一番難しいんだぜ?」
そう言い笑い声をあげるおっさん達。
「入口の番人を潰しながら少しずつ端から釣り出して行って……一部屋突破するのに1時間近くかかったもんさ。ここを少数で30分かけずに突破できるようになったら、一流って言える位だ」
「なるほどー……」
と、相槌を打つ。
番人ってのは投石組の事だろう。
聞いた感じ、完全に投石組と本隊と分けて戦う俺の方法とは大分違う気がする。
投石組の相手をしつつ、本隊も少しずつ削って行くってのが一般的らしい。
陣形を敷くって習性が知られていなかったのは、完成する前に両方を同時に戦っていたからなのかもしれないな。
今まで魔物そのものの情報は仕入れていたが、討伐側の情報はあまり気にしてこなかった。
考えてみれば観測する者が違って来れば情報が変化するに決まっている。
これからはそっちの事も気にかけてみるか。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(8)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




