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「心配いらないわ。彼女達の目的は貴方を見る事よ」
「うん?」
俺の不安を払拭するかのような気軽な口調だが……どういうことだ?
「貴方がゼルキスにいた頃に施療を受けた者もいるけれど、彼女達はまだ受けられていないの」
「言われてみれば確かに……向こうの方に見た事ある人達がいるね」
会場内でいくつかのグループに分かれて話をしているが、そちらに俺がこの屋敷で施療を行った女性達がいる。
何やら持て囃されているが……まぁ、立食パーティーのあるべき姿ではあるな。
「セリアーナの言う事しか聞かないと思われている貴方を、アイゼンはパーティーに出席させる事が出来て、その上私との関係も良好……。貴方はリアーナに籍を移しているけれど、今回の様にゼルキスにも気軽に訪れる事が出来るのなら、自分達にもまだまだ機会があるかもしれない……そう考えているのでしょうね」
「あぁ……」
ミネアさんは俺を見に来たと言ったが、正確にはミュラー家に構われる俺を見に来ているんだな……。
セリアーナがこの屋敷にいた頃、人と会う時に俺を同席させ、わがまま……と言うよりは無礼な振る舞いをさせていた効果がこんなところにも表れるとは……もしかして最初から今の状況を想定していたのかな?
「ふむむ……おや?」
上手い事使われてしまったなと唸っていると、こちらを見ている人垣が割れたと思ったら、アイゼンが従者を連れてやって来た。
出席者達に挨拶をしていたはずだが……終わったのかな?
「抜け出て来ていいのかしら?挨拶は済ませたの?」
「奥方達にはまだですが、一通り挨拶をしてきました。セラは楽しん……ではいないようだな。酒はまだ飲めない歳か……何か食べているか?」
ミネアさんと一言二言言葉を交わしたかと思うと、今一不格好ではあるが俺を気遣う様な事を言ってきた……珍しい。
「食べてますよー」
食べているというよりは、わんこそばみたく口が空になると、テレサにひょいひょい皿の上の料理を突っ込まれている。
話の合間合間にいいタイミングで突っ込まれているからか、普段少食だが今日はしっかり食べている気がする。
「……そんな菓子の様なもので腹に溜まるのか?しっかりしたものを食べないと大きくならないぞ?」
……いつもより食べているのだが、育ち盛りの男子から見ればそうは思わなかったようだ。
今日俺が着ている服はルシアナのお下がりだし、それがより一層小さいって印象を強めるんだろう。
「セラさん、小食ですものね……。まぁ、そこはセリアーナも考えるでしょう。それよりもアイゼン、貴方はどんなことを話してきたの?お母様に教えて頂戴」
ミネアさんの言葉を受け、アイゼンは、そうですねと少し思案してから話し始めた。
会話した主な相手は貴族と有力商人だったそうだ。
貴族とは、任されている街の警備や訓練、周辺の騎士の巡回についてだったり、冒険者ギルドとの連携についてを話し、商人とは、領地間だったり各街間だったりを移動する際の護衛を選ぶ基準や魔物への対処法についてあれこれ話したらしい。
本人はいい話を聞けたと満足気だが……ミネアさんは深いため息をついている。
振り向いて顔を見るわけにもいかないが、何となくどんな顔をしているかも想像つくな……。
「貴方が騎士に思い入れがある事は王都でもわかってはいたけれど……」
そのミネアさんの反応に心外といった様子のアイゼンだが、これは俺でも流石にやらかしてるなってのがわかる。
「皆快く話してくれましたが、何か不味かったのでしょうか……?」
アイゼンとその従者は不安気に顔を見合わせているが、何をやらかしたのかはわかっていない様だ。
「貴方の話したいことを話してどうするの……?お友達同士じゃないのだし、貴方は話を聞く側よ?」
自分の話したい事を話すのに夢中になって、相手を置いてけぼりにする……オタクにありがちなやらかしだ。
今回アイゼンはホスト側で、わざわざここまで足を運んできてくれた者達をもてなさないといけない。
親父さんが側についていたし、何かしらフォローは入れてあるはずだろうが、ミネアさん的には査定にマイナスが付くだろう。
俺を出席させるというミッションはクリアしているが、それはセリアーナの力も大きいし、この事は含まれないはずだ。
ドンマイ、アイゼン君。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(8)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




