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昨晩のアイゼンの頼みは、俺に翌日開かれる昼餐会に出席して欲しいという事だった。
この昼餐会は毎年、春と秋の雨季明けに開かれているらしい。
移動が難しくなる冬季の前に集まれる者は集まって、会合を行っているそうだ。
移動が難しくなる冬季の備えや貴族学院の入学時期に備えての領内の治安強化……それらについて話し合うそうだ。
そして、最後に決起集会の様な物として昼餐会が開かれる。
貴族学院を卒業し、次期領主としてアイゼンも出席するのだが、春の時は彼はまだ王都にいた。
その為今回が初出席となるのだが、事前に入ってきた出席者の情報によると今年は何故か夫婦連れでやって来るものが多かった。
領内とはいえ、安全面を考えると女性が……それもある程度裕福な家の者が街の外に出るのは珍しい。
調べてみると、俺が雨季明けにこの街に滞在するとセリアーナが出入りの商人に伝えていたそうだ。
ギルドの会合の時にテレサに話を通せばいいのにと思ったが、俺は領主一族の客としてやって来ているわけだし、そこを飛び越えて勝手に話を通すわけにもいかなかったんだろう。
そしてもちろん、領主相手に自分の客として滞在している者に会わせて欲しいとも言えず、期待だけが宙に浮いた状態になっていた。
俺はテレサやミネアさんと一緒にいればいいそうだし、何かする必要があるという訳でもないので了承した。
多分、大分分かりにくいけれど……セリアーナなりの弟へのアシストなんだと思う。
セリアーナの結婚式に出席するために、卒業してからも夏まで王都に残っていたから、地盤固めが少し遅れている。
もし今回を逃すと次は半年近く先になってしまう。
だから、セリアーナの言う事しか聞かないとゼルキス領内で言われている俺を引っ張り出せると、彼の株が上がるのかもしれない……。
「それだけじゃないわ」
その考えを俺を膝の上に抱えるミネアさんに伝えたのだが、どうもそれだけじゃ無いようだ。
「アイゼンが自分でその事に気付くことが出来て、尚且つ貴方に頭を下げる事が出来るかを見たかったの」
「……厳しくないですか?」
……アイゼン君のテストも兼ねていたようだ。
「そうでも無いわ。あの子は……少し貴族主義というのかしら?身分に固執しているところがあったの。ただ貴族として生きるのならそれでもいいけれど、領主になるにはその価値観は相応しく無いわ」
「そういやセリアーナ様は、救護院とかに顔を出していましたね」
リアーナでは治安の問題でほとんど屋敷で過ごしているが、この街にいた頃は慰問だなんだであちらこちらに顔を出していた。
だからこそ、婚約や結婚の時など住民が総出で祝っていた。
たまに商人を弄っている時もあるが、ああ見えてただの意地悪なねーちゃんじゃない。
「そう。娘はこちらが何もしなくても、自覚をもって勝手に育っていたけれど……。矯正するなら早い方がいいでしょう?でも、私達がしなくても貴族学院でしっかり学んだようね。」
「……そですね」
まぁ、選民意識を持った領主なんて平民にとっては碌なもんじゃ無いだろう。
そこを危惧するのは当然かもしれない。
……ただ、この人達はちょっと採点が辛すぎると思う。
この人達は基準がセリアーナなんだよな。
一つしか離れていない姉があんなんじゃ、対抗意識で姉とは違うように振舞おうと考えても無理は無いと思う。
セリアーナが学院に通っていたのと合わせて2年程離れていたし、それが良かったんじゃなかろうか?
◇
「姫、料理をお持ちしました」
テレサが皿に料理を乗せこちらにやって来た。
話が一区切りついたちょうどいいタイミングだけれど、待ってたのかな?
この会は形式としては立食パーティーだが、広間の隅には腰を下ろして休憩できるスペースがある。
俺とミネアさん侍女のジーナに彼女付きの使用人達がそこに陣取っている。
他にも何組かの貴族らしき女性達がいるが……こちら、と言うより俺の様子を伺っているが、声をかけてこようとはしない。
「アレでいいんですか?」
そちらに視線をやり、テレサの持って来た、キッシュらしき物を食べながらミネアさんに訊ねた。
出席するだけでいいとは言われていたが、開始の挨拶以来俺はマジでここに座っているだけだ。
最初はテレサが隣に控えていて、ミネアさんがやって来てからはずっと彼女の膝の上だ。
時折こちらに視線が送られて来るが、それで何かあるという事も無い。
俺が気にする事じゃ無いんだろうけれど、だんだん不安になってきた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚(8)
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




