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通路の丁度中央あたりになる目印の凹み……そこの真上に辿り着いた。
この位置からだと投石組は壁に隠れて見えないが、その後ろにいる本隊には射線が通っている。
距離は200メートルも離れていないし、十分届くはず!
「よし!」
【ダンレムの糸】を発動し、弓を俺の前に出現させた。
2メートルと少しの大きく重たい弓だ。
それがドンと地面に落ち、ぐらりと傾いた。
慌てて上端に手をかけ支える。
「おっとっと……」
リアーナの領主屋敷の地下にある訓練所は整地されて平らだったが、ここはゴツゴツしていて直立させるためにバランスを取るのが少々難しいが……何とかなった。
上端に手をかけた状態で両腕を思い切り伸ばすと丁度弓の中心あたりに体が来る。
その状態で左足を握りに当て、弓に意識を集中させると……弦が現れる。
今度はさらに右足首に付けている【緋蜂の針】を発動し右足を弦に当てたまま思い切り外に向かって、足を開く。
傍から見ると弓にぶら下がって開脚しているような見た目になるが、これでしっかり発動できることは実証済みだ。
このとき気を付けることは、弦のライン上に体を置かない事。
普通の弓の様に射る時に体に当たったりするのかはわからないが、あれだけの威力を出すんだ。
もしこの引き絞った弦が体に当たろうもんなら、多分マップタツ……。
それは避けねば。
後は【浮き玉】をコントロールして、照準を調整し……魔物と重なる位置を見つける。
試射をしたアレクに聞いたところ、弓の握りにある光の輪っかの直線上を一直線に飛んでいくそうだ。
普通の矢よりもずっと太く、貫通力も申し分無し。
ある程度大雑把にでも狙いをつけて撃てば、射線上を広く巻き込んでくれるから、一射でまとめて討伐できる……といいな。
「よいしょっ!」
何はともあれ、弓に気合を込めると光の矢が現れた。
既に弓は引いた状態で、いつでも発射可能。
矢も気合ばっちりと言わんばかりに、ギュンギュン唸っている。
ここまでは地下訓練所でやっているが、実際に撃つのはこれが初めてだ。
よし……撃つ前に最後の確認をしよう。
射線上に人の気配は無し。
通路の壁で角度が限られているから、一度に巻き込めそうなのは5体程度。
でもそれだけで、本隊の厄介な陣形を崩せるから十分だ。
念の為傘も持って来ているから、全く掠りもしなかったとしても、今まで通り普通に倒していけばいい。
うん……問題無し。
いけるいける!
「いくぞ!……発射ぁぁぁぁっおぁぁぁ⁉」
アカメ達の目と【妖精の瞳】の両方で見て、狭い射角の中で一番多く巻き込める範囲をチョイスし発射した。
そこまでは良かったのだが……反動を考慮していなかった。
予定では通路出口の左側の壁を掠めるように、斜めに向かって矢が放たれるはずだったのだが……。
発射の瞬間、カッ!と光を放ったと思ったら、弓全体に力がかかりそれを抑え込もうとしたのが悪かったのか、弓の地面についている箇所を支点に、クルっと10度ほど左側に回ってしまった。
恐らく俺が弓の左側に浮いていたから、引っ張る様な形になってしまったんだろう。
放たれた光の矢は、壁を掠めるどころか抉りながらその奥にいたオーガを巻き込んでいった。
ドォンと遠くで音がしたのは、広間の壁にぶち当たったからだろうか?
地面や壁を抉った際に巻き起こった土煙で、視界が悪くはっきりとは見えないが、相当な威力だったのは間違いない……。
「ケホッ……」
距離はあるのにこちらにまで流れてきた土煙を避けるべく、弓を解除し一旦天井付近に逃れようとしたその時、土煙の奥で動く姿が目に映った。
と同時に飛んでくる、バレーボールほどの大きさの石。
「……っ⁉」
幸い距離がまだまだ遠く、反応が遅れてしまったが避ける事は出来た。
本来ここは奴等の距離では無いが、流石に敵認定されたか。
広間の状況も気になるが、まずは目の前の敵を倒す事からだ。
ちょっと思っていたのと違うスタートだが……やる事は変わらん。
殲滅だー!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




