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「見えてきましたね」
ソファーに寝っ転がり本を読んでいたが、エレナの声に身を起こし顔を向けると、2人でモニターを眺めている。
すっかり使いこなしている。
順応性が高いなー。
近寄り俺もモニターを見ると、まだ距離はあるものの長大な街壁が見えている。
ここからでは高さや厚みはわからないが、ゼルキス領都より規模はこちらの方が上だ。
流石王都!
どでかい!
「私達も準備しましょう。セラ、お前もちゃんと着替えるのよ?」
「はーい」
馬車1台での移動とは言え何だかんだで伯爵家。
今までの街や村は門はフリーパスだったが、流石に王都はそうは行かないらしい。
平民の様に並んで待たされたりは無いものの、検問所を通るため、髪や服装も家格に相応しい格好をしておく必要がある。
ちなみに俺は寝巻だ。
ここまでずっと寝巻だったが、俺も平民ではあるものの、伯爵家の使用人ということで同様だ。
【隠れ家】の中だと外から見えず、楽な格好でもよかったが…。
『聞こえるか?』
もそもそ着替えをしているとアレクの声が【隠れ家】内に響いた。
『そろそろ馬車の中に出てきてくれ。門が近づいてきた。警備の兵もいる』
「さ、行きましょう」
2人はもう格好を整えている。
俺待ちか⁉
慌てて着替え終え、ドアへと向かった。
◇
当たり前といえば当たり前だが、何事も無く門を通る事が出来た。
多少時期が遅れていることや、馬車が1台と小規模であることなど、他とは違うところはあっても所詮はその程度で、咎められるようなことでは無い。
そう、無いんだ。
街に入りいくつかの区画を越え貴族街に入り、王都の屋敷へ向かっている。
貴族街への道を通っているからなのかもしれないが、特に揉め事に遭うような事も無い。
何度か貴族の馬車とすれ違うこともあったが、実に順調だ。
「どうかしたの?」
がっかりしているのがわかったのかセリアーナが話しかけてくる。
「んー?いや何でも無いよ」
「セラの最近読んでいた物語で、貴族の馬車が街へ入る際に警備の者と揉める場面があるんです。きっとそれを期待していたのでしょう」
…バレている。
お貴族様的パワハラというか…。
される側だとたまったもんじゃ無いんだろうけど、今俺はする側に付いているからね。
一応理由はあるんだが、ちょっと期待していた。
「…お前はたまにバカになるわね」
セリアーナが呆れた様な目で見てくる。
何というか、街でも道中でも所謂悪徳貴族というものに出くわさないんだよな。
貴族と平民とで住み分けが出来ているというのも理由かもしれない。
基本的に接する機会が無いんだ。
元々孤児から一足飛びで伯爵家の使用人になっている。
この世界の平民、貴族、どちらの常識も身についていないんだよ。
冒険者ギルドには出入りしていたけれど、あそこはまた結構特殊な場所だし、あそこの常識を当てにしてはいけない。
この旅でセリアーナやエレナの持ちこんだ物語本を読んでいるが、貴族と平民が揉めたりという場面がそこそこ出てくる。
まぁ、主要人物である王族だったり、より高位の貴族がそれを窘めたりしていたから、踏み台にするためにあえて出しているのかも知れない。
ここ王都は、王族、貴族を含め外国の民も多く住んでいる。
セリアーナの世話は王都にあるミュラー家の別邸にいる使用人たちが行うし、俺が関わることは無いと思うが、万が一ということもある。
貴族パワーを1度は見ておきたかったんだが…。
本当だよ?
「王都の屋敷にはお祖父様がいるわ。あまり気難しい方では無いけれど、あまり変なことはしないのよ?」
「はーい」
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・4枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚




