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「久しぶりでしたが、腕は鈍っていない様ですね。安心しました」
ミネアさんはニコニコ笑いながらそう言った。
久しぶりと言っても、王都からの帰りに数日滞在した時にもやったから、数ヶ月しか空いていないはずだけれど……まぁ、フローラさんもあまり表情には出していないが満足気だし、喜んでもらえたんならそれでいいか。
さて、今俺達はミネアさんの部屋にいる。
親父さんとの話を終えた後、これから滞在する部屋に案内されたが、その部屋は屋敷の中に用意されていた。
外に来客用の住宅が用意されているが、一応俺達はセリアーナの客って事で身内扱いなのかもしれない。
慣れた場所だし気は楽だが、来客用の住宅にちょっと入ってみたかったから残念な気はする。
ここで生活していた頃はメイド見習いでもあったが、そこは立ち入り禁止にされていたからな……。
まぁ、貴族用の建物だから仕方ないんだろうが。
「ここにいた頃と同じように、セリアーナ様やエレナ以外にも屋敷で働く人相手にちょこちょこやってますからねー。むしろ日々腕は上がっています!」
これに関しては結構自信があるので、胸を張って答えた。
代官屋敷から領主屋敷へと格上げしたこともあって、使用人の数も増えたから練習相手には事欠かなくなった。
体に悪いものでも無いから、少しずつ手法を変えたりと日々あれこれ試している。
「でも、テレサ相手にまともにやるのはこれが初めてかな……?」
「そうですね。髪を乾かしたり、マニキュアを塗ったりする際に祝福をかけていただくことはありましたが……」
ミネア、フローラ両名の施療を終えた後、ついでだからと膝の上に座るスタンダード方式でテレサにも施療を行っている。
「あら?身近な者には気軽に行っていたのに……彼女にはしていなかったの?」
ミネアさんは、この屋敷ではもちろん王都の屋敷でも使用人相手に行っていた事を知っているだけに、不思議そうな顔をしている。
「昼間は仕事しているし、オレも森に行ってたりするから……。髪乾かして貰ったり爪を切って貰ったり、色々お世話されているけれど、あまり時間を取って一緒にいる事は意外と少ないんですよね」
それと、彼女なりの美意識なのかわからないが、俺から何かしてもらうってのを避けているような気がする。
距離感がある訳じゃ無いけれど、命令してまでするような事じゃないから何となく今までやって来なかったけれど……。
俺にはよくわからんが、肌がどうの髪がどうのと3人で盛り上がっているし、今回のは丁度いい機会になった。
◇
ゼルキス滞在二日目の朝が来た。
昨晩は親父さん達も一緒になって食事をした。
歓迎会というわけでは無く報告会の様なものだ。
リアーナ領の開拓の進捗具合や魔物の調査、討伐の成果等色々聞かれたが、もちろんゼルキス側でも独自に情報を集めている様だが、少しずつズレがあったりする。
これは恐らく又聞きになっているからであって、誰かが意図的に歪めて伝えたりって感じじゃ無い。
屋敷の地下訓練所の工事を建て増しの工事と間違っていたあたり、商人経由の情報かもしれない。
身分によって立ち入れる場所や手に入る情報が違うから、直接見るのがやっぱり一番だな……。
さて、昨晩の事はもういいとして……。
「姫、よろしいですね?」
マニキュアを塗りながらテレサが念押ししてくる。
「探索届に記した場所までしか行かない。異変を感じたらすぐ戻る。無理はしない……だね。大丈夫」
「はい。くれぐれも無理はしない様に」
今日はいよいよダンジョンに潜るのだが、ウチの副官はちょっと心配性かもしれない。
まぁ、魔物を倒したり、ダンジョンの探索が目的では無く、【ダンレムの糸】を実戦で使う事が本命だ。
初めてまともに扱うアイテムをダンジョンに1人きりでとなると、気持ちはわからなくも無いが……。
これでも俺は魔物相手には攻撃を貰った事は一度も無い。
そもそもダンジョンでケガをしたのも魔人に蹴りを入れた時に、足を痛めたくらいだ。
今日のお目当ては中層のオーガ君達だが、多少ビビらされた事はあっても無傷で攻略済み。
初手は遠距離からだし、失敗したなら普通に倒せばいい。
楽勝楽勝!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




