275
ゼルキス領都側の森で【隠れ家】に潜み続ける事しばし。
日が昇ったら外に出て街へ入る予定だったのだが……。
「んー……魔物の気配は無し……人の気配も無し……。うん、今なら大丈夫そうだ」
随分長い時間モニターで周辺の様子を覗い続けていたが、ようやく外に出るタイミングが訪れた。
この森は少し街道から離れた場所にあり、人が来ることは無いだろうと思っていたが、確かに商人や農民は来なかったが、冒険者や兵士がひっきりなしにやって来ていた。
なんでだろうなー……と思っていたが、この森は領都が利用している水源の一つがあって、雨季明けの調査の為だったらしい。
たまたま中から聞こえる範囲でそんなことを喋っていた冒険者がいて、その事が判明した。
テレサはこの街の事はほとんど知らないし、そこら辺は俺が把握しておくべきだったな……反省。
しかしまぁ……何というか……兵士は当然なのかもしれないが、冒険者も実に真面目な仕事振りだ。
どうにも未だ孤児院にいた頃のチンピラじみた冒険者達の印象が頭に残っていて、彼等の勤務態度にバイアスがかかってしまっている。
「はい。姫、こちらへ」
【浮き玉】に乗ったテレサがこちらに手を出している。
彼女の服装はスカート姿では無く、鎧こそ付けていないが騎士の制服に似たパンツスタイルに厚手のマントだ。
ここで休む事が出来る以上恰好なんてある意味何でもいいんだが、対外的には【浮き玉】に乗って飛んできたし、こっちの方が都合がいい。
ついでに偽装用の荷物が詰め込まれたバッグも用意済み。
差し出された手を取ると、ヒョイと持ち上げられた。
準備完了だ。
「オッケー!んじゃ行きましょー」
部屋の明かりを消し、出発だ。
◇
いざ外に出さえすれば後の展開はスムーズだった。
検問所の兵士も俺の事は知っているし、テレサも正真正銘の貴族で、ほぼフリーパス。
そして、本来なら先触れでも出しておくべきなのだろうが、雨季明けの来訪はセリアーナからの手紙で知らされており、受け入れ態勢も整っていた。
屋敷に着くとあれよあれよという間に、親父さんの執務室まで案内され、話し合いが行われている。
「それでは滞在は1週間という事でいいのかな?」
「はい。その間セラ様はダンジョンの探索と、【ミラの祝福】の施療を。私は領地間の協議や各ギルドの視察を行います。もちろん今回だけでなく今後も継続していく予定です」
等々……この辺の事は互いにわかっているし、確認の為だろう。
お忍びでやって来た前回と違って、今回の様に公式な滞在は何かと手続きと言うか手順が面倒臭い。
これでも大分簡略化されている事を考えると他所の領地を訪れる事とか考えたくないな……。
と、そんな事をぼんやり考えていると話し合いは終わったようで、部屋に案内されることになった。
「お二人の荷物はもう部屋に運んでおりますが……あれだけでよろしかったのでしょうか?」
その途中使用人がやや心配そうに言って来た。
まぁ、バッグ一つでやって来たからな……。
「問題ありません。事前にこちらの商業ギルドに領地より荷を運ばせてありますから、私達が到着した事を聞き届けに来るはずですよ」
「ああ……」
俺はともかくテレサは結構なVIPさんだからな……不興を買う事態は避けたかったんだろう。
ちゃんと用意されている事を聞いてほっとしたような顔だ。
もっともその荷物はフェイクで、使う分はちゃんと【隠れ家】に置いてある。
間に入る人間がはっきりしている分、何か細工や窃盗をするような事は無いだろうが、それでも安全に保管できる場所があるんだから、そちらの品を使う方がいいに決まっている。
そこら辺の小細工はセリアーナが嬉々として手配していた。
商人にしたらセリアーナやテレサとお近づきになれるチャンスだし、美味しい話ではあるんだろうが、実際にここまで運んだのは部下だ。
リアーナはこの国の端っこで、お貴族様の荷を運ぶことなんてそうそう無い事だろうし、プレッシャーのかかる仕事だったろう……。
リアーナに戻ったらセリアーナにチップを渡す様言っておこうかな……!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




