269・アレクside
「さてと……それじゃあ始めようか。お前さん達も仕事は山積みだろう?さっさと終わらせちまおう」
マイルとの話が終わったのを見計らい支部長が前に立ち話を切り出した。
今日の議題は、領内警備についてだ。
本来それは1番隊の任務で、通常1番隊によって街道沿いや領内の街や村の巡回は行われている。
それで問題無く領内の治安は保たれていたのだが、セラがミュラー伯爵から預かってきた情報で、少し事情が変わった。
無謀としか言えないが、街道から外れ人里を通らずゼルキス領からリアーナ領へ入り込もうとしている者がいる可能性が生まれた。
もしかしたら既に入り込んでいるかもしれない。
そうなって来ると、更なる侵入を防ぐ為にも、街道や人里だけでなく森や山も警戒が必要になる。
これは実力云々では無く経験の問題で1番隊では難しいだろう。
そこで2番隊や冒険者がそちらを代わりに行う事になった。
魔物との戦闘に関しては専門と言っていい為問題は無いが、こと痕跡探しとなると1番隊よりはマシといった程度なので、猟師ギルドの協力は非常に心強い。
他のギルドとも、他地域から入ってくる情報や護衛の選別で連携を取ることになる。
数年程度とは言え領内一体となる必要があるが、各々利権が絡む問題もあるのでどうなるかと思っていたが……この分では上手くいきそうだ。
◇
会議は1時間もせずに終わった。
まあ、今回の件は領主からの命令では無く、あくまで冒険者ギルド支部長が音頭を取って、それぞれ出来る範囲で協力し合おうという緩いものだ。
だからこそ、騎士団本部では無く冒険者ギルドで会議が開かれている。
何人かは酒を手にしているが、そうでも無ければこういった事は出来ないな。
元々そうだったが更に砕けた雰囲気になりあちらこちらで雑談が始まっている。
「なあアシュレイさんよ。あんたの所の隊長さんは来ていないが、よかったのか?」
「ええ。今は通常任務で手一杯でしょうからね。来年の春以降人員が増えていきますが……まぁ、当分そのままです。私が今日ここにいるのも領主様への連絡役としてですので……」
リックでは無くアシュレイがこの場にやって来たことを不審に思う者もいれば……。
「なあ、来年以降も子供の冒険者指導を行うのか?」
「その予定だ。ダンジョンが開かれたらまた変わるかもしれないが……とりあえず来年は同じスケジュールで行うぞ。なんだ?子供……じゃ無いな。孫か?」
「ああ。領主様の所のあの娘が恩恵品を使ったそうじゃないか。その話をその場にいた子供に聞かされたらしくてな……自分も冒険者になるとか言い出したんだ。以前なら止めていたが……今の冒険者達なら悪くはないだろう?それに冒険者にならなくても、戦えるのならその方がいい」
支部長と商業ギルドの長達は冒険者見習いについて話をしている。
この街でも何人か恩恵品を所持している者はいるが、あの様に大っぴらに使われているのを見たのは初めてだったのだろう。
この部屋に来る前も広間で子供達の姿を見たが……、刺激になっただろうな。
「なあ、アレクシオ?」
「あ?」
俺に話しかけてきたのは、商業ギルドの幹部の1人だ。
確かこいつは食品を王都圏へ出荷していた。
「お前さん所のお嬢さんがゼルキス領都まで4日で行けると聞いたんだが……本当か?」
4日って事は……ゼルキス側からの情報か。
「まあな……。どこから聞いたんだ?」
「それは秘密だ……。それよりも、お嬢さんに依頼を出したりは出来るのか?」
「出来はするが、セラへの依頼は全てセリアーナ様が窓口になっているぞ?おまけにあいつは金に困っていないから、必要以上に働こうとも考えないしな……」
「そうか……。まあ、ともかく4日で行けるのは確かなんだな?」
セリアーナの名を出した事で諦めるかと思ったが、存外粘る。
「まあな……。何を依頼したいのかは知らんが、あいつは形式上リアーナ領の騎士だからな。手紙にせよ荷物にせよ何か運ばせるのなら、先に中身はこちらで検めるぞ?」
「む……、そうか……。わかった」
わざわざ俺に話を聞くくらいだし、犯罪って事は無いんだろうが……、あまり綺麗な内容では無かったのかもしれない。
ただでさえ商人はなんら問題の無いような手紙でも、中を見られる事を嫌うからな。
猶更だろう。
セリアーナにテレサまでいるし、変な話にそうそう乗ることは無いだろうが、一応俺も気を付けておこう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




