268・アレクside
秋の雨季に入り連日雨が降る中、外套も着ずに外を歩く。
どうにも落ち着かない。
「急ごしらえの割には思ったよりもいい仕事をしているな……」
精々雨を防ぐことと夜間に明かりを灯せる程度と思っていたが、いざ雨季ともなると頼もしい。
冒険者ギルドに続く屋根付きの通路を歩きながらそんな感想を持った。
ゼルキス領ルトルの街からリアーナ領領都になった事で、街の拡大と合わせて主要施設の改装改築が行われている。
施設間を繋ぐこの屋根付きの通路もその一環だ。
本来は冬の間に作業を進める予定だったが、夏頃判明した魔物の生息地の変化で冒険者の手が空いたこともあり、その作業に彼等をねじ込んだ。
今はまだ領主屋敷から冒険者ギルドを含む騎士団の施設だけだが、そのうち商業地区にも伸びていくだろう。
通路を時折すれ違う兵士達の敬礼に小さく手を上げ応えながら進み続けると、目的の冒険者ギルドに到着した。
扉を開き中へ入ると、いつも以上に多くの冒険者の姿が目に入った。
春の雨季でもそうだったが、その時よりもさらに増えている。
それだけ外から入って来る冒険者の数が増えている証拠だろうが、特に問題は起きていないし、当分の間は集める事を止めないだろう。
得意げな支部長とついでに対照的な表情のリックの姿が頭に浮かび、ついつい笑みがこぼれそうになるが、それを堪え奥へと進んでいくと、そこら中から名前や二つ名、そして隊長とからかい半分に声が飛んでくる。
一冒険者から彼等の纏め役に立場が変わったが、幸いと言っていいかはわからないが、距離感は変わっていない。
適当にあしらいながら足を進めていると、その中に混じる子供の集団に気付いた。
数は10人と少しで、騎士にでも向ける様な眼差しだった。
今まで特に意識していなかったが、確かにこの街での冒険者の立ち位置が変わってきている様だ。
支部長は笑いが止まらんだろうな……。
◇
「おう。雨の中わざわざ足を運んでもらって悪いな。隊長殿」
全く悪いと思っていない様子で話しかけてくる支部長。
名目上自分の下についているし、公の場ではそう接してくるが、普段はこんなもんだ。
「通路が完成してなきゃこなかったさ」
肩を竦め言い返すと、大笑いをしている。
通路の設置作業での人員派遣で、この街がまだルトルだった頃からの負債もいろいろ返せたらしい。
冒険者の地位の向上も含めて、彼が頭を悩ませてきていた問題が大分解消している。
支部長から視線を外し部屋の中を見ると1番隊の副長アシュレイに、ザックと各ギルドの幹部達がいる。
簡単にだが今日の議題については聞いているので、ある程度予測は付いていた。
だが……。
「アンタが来ているのは少し驚いたよ」
部屋の隅に立つ歳は40半ば程の長い髪を後ろで束ねた男。
この街を始め領内の猟師達を束ねる猟師ギルドの長、マイルだ。
ここがゼルキス領だったころから、冒険者ギルドは猟師ギルドと、あまり良好な関係では無かったらしい。
恐らく冒険者が敬遠されていたんだろうが、街が襲撃されたりと緊急事態でもない限りは関わることは無かったそうだ。
「よく覚えていたな?」
意外そうな顔をしている。
彼と顔を合わせるのは俺がこの街に来た頃に挨拶をした時以来だから、1年半ってところか?
「なに……今までは魔物だけを狙う者が多過ぎたが、最近は冒険者達もマシになって来たからな。これならやっていけると考えたまでさ」
それを聞いた支部長はやや気まずそうな顔だが……無理もない。
獣は聖貨を落とさない。
マナーの悪い冒険者は、狩りの最中に出くわした獣を適当に痛めつけて追い払ったりする事もある。
手負いの獣は非常に厄介だ。
まして、ここは魔境がすぐ側にある。
本来なら冒険者ギルドが率先して咎めなければいけなかったが、街の防衛の要でもある冒険者との関係の悪化を恐れ強く出れなかったんだろう。
今の支部長は大分マシにやっていたが、それでも今までの積み重ねで、関係の改善には至らなかった。
「そうか……そりゃ助かるよ。これからの事を考えるとあんた達の力は欠かせないからな……」
何といってもこのリアーナ領の魔境を含む森や山の専門家だ。
俺達とはもっている知識量が違う。
マイル達猟師の協力が得られる事は非常に大きい。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




