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照星ダンレム。
北にある星の名前で、決して動くことの無い星。
船乗りや、大陸西部で夜に移動する者が方角の目印にする……まぁ、所謂北極星だ。
天から、決して動く事無く常に見続けるという事から、権力の監視者と言われる事もあるらしい。
王殺しの方は、もうそのままズバリ、ダンレムって射手が圧政を敷いた王を射殺した話だ。
作り話だが、教会の説法で用いられる事もあり、貴族の間ではそこそこ有名らしい。
緋蜂の時と言い、このアイテムを説教臭いエピソードに使っているのを考えると、彼等も持っている気がする。
裁判と違い殺害という直接的な行動に出る分、自分達で使うかどうかはわからないが……西部の傭兵団がもしかしたら下部組織なのかもしれない。
縁起が悪いというよりは、権力者、特に王に嫌われる名前だ。
「できたぞ」
ジグハルトの声でダンレムについての考察を中断した。
「おう!」
何が出来たかと言うと、的にする壁だ。
昔王都の訓練場で見たのと同じような、分厚い壁が30メートルほど離れた場所に建っている。
昨晩のガチャでゲットした【ダンレムの糸】を試すために、騎士団の訓練場にやって来た。
まずこれがそもそもアレク達の言う物と同じか試す必要があるのだが……、同じだった場合は威力を考えると、試す場所を考える必要がある。
その点ここなら、訓練場の外は平地が広がり、さらにその奥は森だ。
気兼ねなくぶっ放せるだろう。
ただ、昨晩あの場にいたメンバーはもちろんだが、話を聞きつけたリーゼルとオーギュストもやって来た。
これ、実は全く関係無い物だったらどうするんだろう……?
その時はジグハルト達に代わりに大技披露してもらうかな?
「いくぞー!」
足を肩幅ほどに開き、右手を掲げ合図をした。
今日は珍しく【浮き玉】から降りている。
代わりにセリアーナが浮いているが……それはさておき、もし予測通り弓が出た場合はもちろん射る事になるからな。
前世も含めて弓を扱うのは初めてだけれど、長弓とか言ってたし何となく立ったままの方がやりやすそうな気がする。
「……ふっ!」
【ダンレムの糸】は髪留めだし、今日もこの場には髪に付けて来た。
どうなるんだろうと思いつつも、他のアイテムと同じように集中し発動すると、目の前に何やら光る物が……。
「ちょっ⁉ぐっ……ぬぉぉぉ⁉」
何か目の前にデカい物が現れたと思ったら、それが俺の方に倒れて来た。
何かわからんが……これはヤバい!
「姫っ!解除を!」
ややパニックになっていたが、少し離れて後ろに控えていたテレサの声で我に返り、すぐに解除し事なきを得たが……地面にへたり込んでしまった。
久々に顔真っ赤になりそうな勢いで力を出したぜ……。
「クッソ重いな‼何だったの今の⁉潰れるかと思った!」
倒れてくる何かを支えるのに必死で、顔は下を向いて踏ん張っていたからよく見れなかったが、木の様な感触は手にあった。
俺の腕位の太さだったと思うが、木にしては重過ぎるし……。
「弓……だったと思います。アレクシオ隊長、ジグハルト。貴方達はどう見ましたか?」
答えるテレサは少し自信無さげだ。
彼女は俺が陰になって見えなかったんだろうな……。
アレク達は少し離れていたし見えたかな?
「ああ。俺が見たのと似ていた……大きさは使用者によって変わるんじゃなくて、固定なんだな……」
近寄ってきたアレクは申し訳なさそうにそう言った。
とりあえず【ダンレムの糸】は弓で間違いないようだ。
それがわかったのは、一先ずいいとして……。
「……アレク。手」
「ん?」
起こせと言うとでも思ったのか、手のひらを向けて差し出して来た。
丁度いい。
「ほい」
【ダンレムの糸】をその手に置き俺も手を重ね、下賜する。
「⁉」
これが弓だとわかりはしたが、性能は未だ何もわからん。
わかった事は重たいってだけ。
後ろをちらりと見ると、セリアーナ達は何しているんだ?と言った表情だ。
さらに遠巻きにこちらの様子を伺っている、兵士に冒険者。
そして、訓練中の子供達。
これだけ注目を浴びて、これでお終いってのはきまりが悪い。
俺が使えそうにない以上は、ここはアレク隊長に決めてもらおう。
「任せた、アレク!」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




