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親父さんとの話を終えると、俺はすぐに屋敷を発った。
休まなくて大丈夫かと聞かれたが、問題無しだ。
そもそも昼夜逆転しているから、あの時間帯が最近一番体調がいい。
と言う訳で、リアーナ領領都を目指してすっ飛ばしてきた。
今後はともかく今違うルートにチャレンジする必要もなく、何事も無くリアーナ領領都に辿り着くことが出来た。
あちらを発ったのが22時頃で、まだ辺りは薄暗い。
行きと同じ位の時間で戻って来れたとしたら、4時位か?
「……どうしよう」
この屋敷で働く皆、朝は早いが、それでも流石にまだ起きて仕事を始めるには早すぎる。
程よい時間になるまで【隠れ家】か、アレクの家で時間を潰すか……む?
屋敷の南館にある丁度セリアーナの部屋辺りで、なにやら光がユラユラと揺れているのが目に入った。
部屋に照明はあるが固定されているし、あんな風に揺れたりはしない。
セリアーナか!
ならばと、一旦上昇し屋根の上から、彼女の部屋の窓まで行くとすぐに開けられた。
「ただいまー」
「お帰りなさい。早かったわね」
中に入ると寝間着のセリアーナが、灯りを持ち立っていた。
声はいつも通りだが、髪が少し乱れているあたり寝起きなのかもしれない。
「起こしたかな?ごめんね」
空から近づいただけで、起きるとは思わなかったな……。
悪いことした。
「気にしなくていいわ。それよりも中へ」
そう言い寝室へ向かうセリアーナ。
それを追って俺も寝室へ入った。
◇
寝室に入り親父さんからの手紙や俺が貰った許可証を渡し、そして俺は【隠れ家】で風呂に入る事にした。
日中はともかく夜中から早朝にかけてはそれ程暑くも無く、コートを上に着ていても汗をかくことは無いが……何というか砂っぽいというか、草っぽいというか……外の臭いが染みついていた。
風呂に入り髪の毛も念入りに洗った事でそれ等は落ちさっぱりしたのだが、相変わらず自分の手には負えない問題が一つ。
「髪どうすっかな……」
未だドライヤー代わりの温風は身に付けられていない。
まぁ、熱と風と二種類の魔法を発動しなければならず、何気に高等技術を要するため無理もないのだが……。
以前はエレナやフィオーラ、最近はテレサに頼んでいた。
まぁ、放置しても風邪をひくような季節では無いが……。
「……出たのならさっさと来なさい!」
リビングからセリアーナの声が飛んできた。
一緒に【隠れ家】に入り、俺が風呂に入っている間親父さんからの手紙を読んでいたのだが、風呂から上がった事に気付いたようだ。
……しゃーない。
彼女に頼むか。
◇
ドライヤーの魔法は使い手の個性が出る魔法だ。
エレナはセリアーナ用に手を加えていったからか、風が強めで水分を飛ばす、まさにドライヤーの様な魔法だ。
フィオーラは……強風だったり水分だけ集めて蒸発させたり、とその時の気分に変えて違う魔法を使っている。
髪を乾かすだけというニッチな魔法に無駄なバリエーションの豊富さを見せる事が出来るのは流石と言うべきか……。
そしてセリアーナは、弱い風で髪を浮かせながら熱を当てていく。
アイロンみたいな使い方だ。
もしかしたら髪にはあまり良くないのかもしれないが、俺には関係無いしうるさく無くて話をしながら出来てちょうどいい。
「お前は内容は聞いたのかしら?」
「いや?通行許可証は見たけれど、それ以外は知らないね」
「そう……まあいいわ。道中で何か問題は?」
「なんも無かったよ。途中街道沿いにオオカミ?の魔物が追いかけて来たけれど……それ位かな?」
「ルートは街道沿い?」
「うん。山とか森を抜ける道は使わなかった。まぁ、昼間なら本気でやれば大丈夫だとは思うけれど、あんま派手なことして人目に付いてもいけないと思ったしね」
各アイテムを抜きにしても、俺の基本戦術は目潰しからの一撃だ。
たとえ山や森の中でも他に人がいたら目に留まってしまうかもしれない。
「……人を見つけたりは?」
「だーれも。街の近くを通過した時も壁の上に見張りもいなかったし……くぁっ」
でかいあくびが出た。
風呂に入って気が緩んだかな?
「魔境からの魔物の襲撃はこの街を中心とした各拠点が引き受けているから、警戒の強度を下げたのね。まあ……いいわ。何?眠いの?まだ明け方よ?」
セリアーナに背中越しでも伝わったらしい。
「ずっと風に当たっているのが結構堪えるんだよね……」
「髪も乾いたし、話は後にしましょう。テレサが様子を見に来るだろうし、私のベッドを使っていいわ」
「むぅ……」
手紙の内容もちょっと気になるが……いざ眠い事を意識すると……仕方ない。
諦めるか!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】13枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




