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「こちらを渡すようにと」
懐から封書を取り出し親父さんに手渡した。
「確かに。中身を読んでおくから君は楽にしておきなさい。食事が必要なら誰か呼ぶかい?」
「あ、大丈夫です。お構いなくー」
気を使ってくれてありがたいが、もう食事は済ませてある。
それよりも……。
「本棚見せてもらっていいですか?」
「構わないよ。重たいから気を付ける様に」
この部屋は何度か入ったことがあるが、いつも何かを報告しに入る位で中をゆっくり見る機会は無かった。
いい機会なので本棚を見せてもらうが……、資料だらけだ。
領内の魔物の分布に鉱山、農作物の収穫一覧に冒険者クランや戦士団の情報……。
あまり面白みが無いな。
強いて言うなら、領地開拓の歴史ってタイトルの本位か?
「君が楽しめそうな物は置いてないだろう?ここは客も通す場所だから、プライベートな物は別に置いてあるんだ」
「⁉」
確かに当たり障りが無いというか、領主の本棚ですっていかにもなラインナップだ。
本棚は人を表すって感じの言葉があるが、こういう場合は慎重さでも表しているんだろうか?
「そういえば、セリアーナ様も似たようなことしてましたね……」
親子だな……。
◇
「さて、待たせたね」
手紙を読んでいたと思ったら何かを書き始め、それもようやく終わったようで、話しかけてきた。
「君は中身を知っているかい?」
セリアーナからの手紙をヒラヒラとこちらに見せながら聞いてくる。
「いえ、何も聞いていません」
「そうか。まあ大した事は書いていないが、君はアレクシオの隊の副長になったようだね。リアーナ領内では騎士待遇だそうじゃないか」
「はい。と言ってもお飾りでやる事と言ったら領主様やセリアーナ様への伝令みたいなものですが……」
「上に直接話を持って行くことが出来るのは十分役に立つよ。……さて、今回君が単独でこちらの領都までやって来れる事が確定した。……これを」
親父さんが先程まで書いていた何かを差し出してきた。
「えーと……」
要約すると、俺のゼルキス内での移動の自由を認めるという事が書かれている。
「以前からセリアーナとは話をしていたんだ。まだリアーナでダンジョンが開かれるまで2~3年はかかるだろう?その間君が退屈するだろうとね。一ヵ月か二ヶ月に一週間程度、こちらのダンジョンで腕が鈍らないように訓練をしていきなさい」
領都の側の森も稼げるし悪くは無いが、浅瀬より先に進むにはちょっと勇気がいるからな……。
同じ種類の魔物でも戦い方や強さにばらつきがあるし、一発貰ったらピンチになる俺はあまり冒険が出来ない場所だ。
ダンジョンなら、奥に行けば強さも賢さも上がっていくが、出てくる魔物は魔人は別としてもある程度計算できる。
「ありがたいですけど……いいんですか?」
変な真似をする気は毛頭ないが、領内の検問フリーパスだ。
「構わないさ。戻れば聞かされるだろうが、リアーナで何か起こった時にここまで情報を持ってくる事が君の役割でもある。ある程度互いの領地の勝手を知っておいた方がいいだろう?」
「確かに……」
この街にいた時もダンジョンに行くかたまに街に出るかくらいで、街の外に出る事はほとんど無かった。
地図で見た情報程度はもちろん頭に入っているが、それ以外は全くと言っていいほどだ。
今回は街道沿いに飛んできたけれど、リアーナで何か起こった時にゼルキスが何も起こっていないとも限らない。
その時街道沿いのルートが使えない可能性だってある。
「もっとも移動が自由と言うだけで、領内に留まる時はこの屋敷を利用してもらう。君はリアーナ領の騎士でもあるからね」
「ぉぅ……お世話になります」
「構わないさ。妻達も喜ぶだろう……そこは覚悟してくれよ」
「はい」
何年後になるかわからなかったダンジョン探索が出来るし、宿代と思えば安いもんだ。
「それと、ここに書かれている日付は4日前になっているが、実際はどれ位かかったんだい?セリアーナは2日程度と読んでいたが……」
あのねーちゃん、なんでまたそんな小細工を……。
「ふむ……いや、答えなくてもいい。恐らくコレが盗み出された時の為の用心だろう」
「……そーかもしれません」
……あるいは俺が落っことした時か?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】13枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




