24
「うははははっ!」
ダンジョン浅瀬の最奥部。
もう上層との境が目に見える場に、子供の高い笑い声が響き渡る。
俺の声だ。
何が起こったのか?
それは!
ついに!
聖貨が!
10枚溜まったのだ‼
ソロでの探索許可が出てから早2ヶ月。
もう冬の3月目前だ。
10枚溜まったといっても、ちゃんと雇い主のセリアーナに契約分を渡している。
つまり14枚稼いだということだ。
3枚手に入れた初回の探索を思えば随分かかったとも言えるが、一般的に言えば驚異的な早さだ。
魔物を倒すだけならゴブリン程度どれだけいても余裕だった。
今の戦闘も8体を相手にしたが、無傷の余裕の勝利だ。
では何故2ヶ月もかかったかというと、魔物の数が足りなかった。
このゼルキスのダンジョンの浅瀬は、いくつかの分かれ道はあってもどれも上層への入口で合流するようになっている。
そしてそれぞれのルートに、ゲームの様にポップするポイントがある。
奥へ行けば行くほどその密度が高くなっていくが、毎年この時期はその奥に冒険者の数が多く、狩りをするペースが落ちてしまうそうだ。
浅瀬で狩りをする者はそこまで行かず、上層以降を目指すものはわざわざ相手をしないでスルーするこの境目手前という狩場を見つけたのが1月ほど前の事。
いや、回り道をしてしまったぜ。
さあ、さっさと帰ってガチャだガチャ!
◇
失敬した小型の女神像が【隠れ家】にあるが、違いがあるのかわからないが折角立派な女神像があるのだし、屋敷の礼拝所を使わせてもらうことにした。
…したのだが。
「2ヶ月そこらで集めるなんて、驚いたわね。でも、どうせならもう1枚取ってきてくれたらよかったのに…」
「出発まで間が無いですからね。王都のダンジョンで続きを期待しましょう」
俺だけでいいのにわざわざやって来た2人が好き勝手言っている。
まぁいい。
ガチャに集中しよう。
既に1枚ずつ確認したが、残念ながらどれも外れだった。
セリアーナに聞いたことだが、生まれた時と8歳の時以外はどれも外れの可能性があるらしい。
ただ、王族や貴族は子供が生まれた時の最初の1枚を父親が使い、8歳の時のは母親が使う伝統があるらしい。
平民は大半が換金する為、あくまでそういった説があるって程度らしいが俺の例もあるし信憑性は高いと思う。
別にその必要はないようだが、ここは作法にのっとってしっかり跪いてやってみよう。
フィジカルの弱さを補う【浮き玉】に、接近戦用のやたら攻撃力の高い【影の剣】。
足りないのは遠距離攻撃の手段だ。
ゴブリン程度なら今のままでも問題無いが、今後を考えると必要だと思う。
一応弓なんかも試したが、力が足りなくて引けなかった…。
ナイフや礫も、当たったら痛いかもしれないって程度の速度しか出なかった。
自力でどうにかするのは今は諦めた。
そんな訳でガチャだ。
頼むぞ…。
遠距離…。
魔法…。
銃…。
そう強く念じ、聖貨を捧げた。
もう5回目ともなるドラムロールが頭の中で鳴り響く。
よし…何か来い!
ドラムロールからファンファーレに音が変わった。
浮かんだ言葉は【祈り】。
…祈り?
祈りってなんだ?
「セラ?加護の様だけれどどうしたの?」
首を傾げている俺を不思議に思ったのか、セリアーナが何を引いたのか聞いてきた。
俺はスキルと呼んでいるが、人に宿る物は加護と呼ばれている。
そして、加護は大きく2つに分けられている。
1つは常時勝手に発動するタイプ。
もう1つは【隠れ家】の様に自分の意志で発動するタイプだ。
前者は引いた時点で発動し、使い方もわかる。
後者は自力で使い方を見つける必要があるが、その分強力なものが多いそうだ。
何も発動していないし、この【祈り】は後者のタイプのはずだ。
「セラ…?どうしたの?大丈夫?」
【祈り】って位だし何か祈るんだろうと、それっぽいポーズを突如あれこれしたのを不審に思ったのか、心配そうに声をかけてくる。
「祈りって何?」
「…祈り?」
祈りってなんだよ…?
増えてきたのでメモメモ。
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】・0枚
セリアーナ・【???】・【】・4枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・0枚




