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「そう嫉妬だ。新公爵領で領主直々に指名した若き騎士隊長ともなれば、羨望の眼差しを向けられる立場だ。だがこの領地の場合だと少し違う」
順調にエリート街道を邁進していると思うけれど……。
「……あ」
この領地ってのでピンときた。
ルトルと呼ばれていた頃からこの街は領主の目が届かず、冒険者程では無いが、騎士って職業もあまりステータスが高くなかった。
ところが最近は冒険者にせよ騎士にせよ、ちょっと風向きが変わって来た。
「気付いたか?今領都で最も信頼されている武力は、アレクシオとジグハルトだ。そして彼等が冒険者から騎士となり冒険者の一部を騎士に登用した。領民はわざわざ1番隊や2番隊と言った細かい事は気にしない。このリアーナ領の騎士の顔はアレクシオだ」
「あらぁー……」
冒険者内で人気というかカリスマがあるのはジグハルトだ。
クッソ強いし、アレは別格。
ただ、街の住民から人気があるのはアレクの方だ。
まぁ、ジグハルトはあまり街には出ないからな……日頃から街に出て割と気安く話をするアレクに集中しているんだろう。
セリアーナの側近とは言え、冒険者上りが自分の立ちたかった場所に立っているってのは面白くないのかもしれない。
それと俺とテレサの事だとか色々重なって、ああいう態度になっているのかもしれない。
「この領地での騎士の役割は当分の間は魔物相手になるから、2番隊が騎士団の主戦力になる。その間にリックには仕事を覚えてもらう予定だ」
「副官のアシュレイとは顔を合わせているね。彼はカロスの息子で、リックの指導役でもあるんだ」
リーゼルが後ろに控えるカロスを見ながら言った。
「リック隊長の様子を見る限り……大分甘いようですね」
カロスの言葉に手厳しい……とリーゼル達は笑いあっている。
「幸いと言っていいかはわからないが、今のウチの領地は2番隊で回るから、彼の成長を待つ余裕がある。それでもあまりに目に余るようなら、オーギュストでも僕にでも構わないから言ってくれ」
「ほい」
まぁ、何だかんだで仕事はしっかりしているからな……能力自体はあるんだろう。
俺の方からわざわざ関わろうとも思わないし、それでいいかな?
◇
「セラ、お前今日から夜は出来る限り起きていなさい」
夜、セリアーナの部屋で唐突にそう言われた。
エレナもテレサも怪訝な顔をしている。
「なに?夜遊びでもするの?」
それにしても俺を眠らせないってのはよくわからん。
「違うわ。今日から数日かけて昼夜を逆転させるの。その間は屋敷にいたらいいわ。1番隊の働きで森の浅瀬も人が増えているのでしょう?お前が狩りに出かけなくても問題は無いはずよ」
最近の冒険者の活動具合を思い出すが、確かに俺が行かなくても何の問題も無い。
「まぁ……そりゃそうだろうけど。……なにするの?」
だからと言って、俺が昼夜逆転する理由にはならないと思う。
「お前にお父様に届けてもらいたい物があるの」
親父さん……ってことは。
「ゼルキス領都まで行けって事?」
「そう。加えて誰にも見つからずにね。夜に動き始めれば可能でしょう?」
「まぁ……出来るとは思うけれど」
この屋敷は街の南西の高台にある。
部屋の窓から抜け出して、高度を取りながら移動すれば警備の目には触れないはずだ。
「お待ちください」
行けそうかなと考えていると、何か質問があるのかテレサがストップをかけた。
「なに?テレサ」
「姫が1人でゼルキス領都へ向かうという事でしょうか?」
「そうよ」
それに答えるセリアーナ。
「姫は馬に乗れませんし、【浮き玉】を使うのでしょうが危険ではありませんか?時間もかかり過ぎます」
「……セラ、テレサにどう説明しているの?」
「オレが走るよりは速いって……」
最初テレサがどういう立場で俺にくっ付いているのかわからなかったから、適当にぼかして言ってたんだよな。
【影の剣】は見せたけれど【隠れ家】の事もまだ教えていないし。
「慎重なのは良い事ね……。テレサ、【浮き玉】は馬よりずっと速いわ。道中の休憩拠点として各街の代官の奥方に話を通してあるから、問題無しよ」
結婚式で王都へ行くためにゼルキス領都に向かう際、各街でそんな事を話していた。
そこを利用することは無いと思うが……テレサは他にルートの事など二つ三つ確認し、納得いったようだ。
しかし……1人で他所の街にお出かけかー……何百キロあるんだろ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】13枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・12枚




