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待って!という俺の切実な頼みは聞き入れてもらえず……、と言うよりもセリアーナにさっさと先に進められ、話し合いは続き、そしてすぐに終わった。
俺一人驚いていたが皆は違うあたり話を聞いていたのかもしれない。
呼びに来た兵士が俺に対し妙に畏まった態度だったのも、この事を知っていたからかな?
……副長って何するんだ?
そもそもアレクってどんな仕事しているんだ?
アレクに聞こうにも話し合いが終わると、支部長と一緒にギルドに行ったし……わかんねぇよ……。
「お前は……なに蹲っているの?」
頭を抱えてソファーに蹲る俺に向けて言葉を投げかけるセリアーナ。
「訳の分からないことになって、困ってんだよ!昼からずっと聞いてるのに教えてもらえないし……」
「ジグハルトやフィオーラにも話すのだから、1度で済ませる方がいいでしょう?」
呆れた様な声のセリアーナ。
何か言おうと思ったが、ドアをノックする音に思いとどまる。
「来たわね……。下に降りるから、貴方達も来なさい。行くわよ、セラ」
「へーい……」
◇
結婚と北館の完成を機にセリアーナの部屋のある南館2階は立ち入り禁止となっている。
その為、今までは彼女の部屋に割と気軽にアレクやジグハルトも立ち寄っていたが、それも出来なくなった。
代わりに、南館の1階に新たに彼女用の談話室が用意された。
位置は一番奥で、セリアーナの部屋のすぐ下にある。
そこへ向かうと既にジグハルト達とギルドに行っていたアレクも到着していた。
「よう!久しぶりだな」
ソファーにだらしなく腰掛け、背もたれ越しにこちらに声をかけてくるジグハルト。
「結婚おめでとう。奥様と呼んだ方がいいかしら?」
その隣に座るフィオーラ。
いつも通りの2人だ。
この2人にはセリアーナの立場とかはあんま関係無いんだろうな。
「ありがとう。好きに呼んで構わないわ。外で仕事を終えたばかりなのに呼び立てて悪かったわね」
セリアーナは2人に言葉を返し、上座の1人掛けのソファーに向かう。
なんか【隠れ家】でいつも使っているのに似ているな……。
「さてと、話の前にまずは彼女を紹介しておくわ。テレサ・ジュード・オーガス。元親衛隊でセラの副官兼侍女よ」
……。
「ねー……それも初耳なんだけど……。駄目だよ?ちゃんと本人に伝えておかないと」
マジで俺聞いてないぞ?
「えっ⁉」
後ろで上がったテレサの声に振り向くと驚いた顔をしている。
そんなに変なこと言ったんだろうか?
「セラ……お前はテレサをなんだと思っていたの?」
セリアーナも意外そうな顔をしている。
「なんだって……奥様の侍女か何かかと……」
「……船に乗っている間もゼルキスの屋敷に滞在している間も彼女から世話されていたでしょう?私の侍女が何故お前の世話をするの」
「……よくエレナのお世話になってるよ?」
世話と言っても髪を乾かしてもらったり結んでもらったり位だが、ほぼ毎日だ。
「それもそうね…………言葉が足りなかったわね。謝るわ」
多分当たり前になっているから本人もすっかり頭から抜けていたんだな……。
エレナと顔を見合わせた後、珍しく謝罪の言葉を口にした。
「おや珍しい……。ところで副官っていうのは?」
「通常だと隊長を補佐する役職だけれど、テレサの場合は違うわね。お前の代わりに副長の仕事をこなしてもらうわ。2番隊自体冒険者の延長の様な仕事だし、アレクと支部長だけで手は足りているから忙しくはないのだけれどね」
「……それわざわざオレが副長に就く事無かったんじゃない?」
「領地を持つ貴族の次男三男等、箔付けとして自領や懇意の領地の騎士団に形だけでも入隊する事がありますし、場合によっては役職付きになる事もあります。その場合相応の能力を持つ者が補佐役として付くのですが、この場合は私ですね」
俺の疑問に答えるテレサ。
「そう言う事。元々お前が14歳になったら騎士に任命するつもりで、その前段階としてアレクの副官に付ける事を予定していたけれど、テレサを引き入れる事が出来たからお前を副長に据えることにしたの」
これも初耳だけれど、一応準備期間を設ける程度の慈悲はあったのか……。
「領内限定だけれど副長として騎士と同等の権限を振るえるし、悪い話じゃ無いでしょう?」
「なるほど……」
いつ使うかはわからないけれど、一応利点もあるのか。
今とやる事は変わらなそうだし、確かに悪い話じゃなさそうだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




