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新公爵領。
領地名はリアーナ。
その領都、旧ルトルに入るとすぐに道の両脇に並ぶ住民達に出迎えられた。
リーゼルが代官になって、積極的に街と関わるようになった影響もあるんだろうけれど、俺が脱走する前と比べれば大違いだ。
教会の専横にもガンガン突っ込んで、街での影響力を削いで行っているそうだし……。
まだ手は出せないけれど、冒険者の聖貨の売却先も大分こちら側に比率が傾いて来ているそうだ。
「……ふふふ」
馬車の中からこちらに向かい歓声を上げている住民達を見ていると、我知らず笑みが浮かんでくる。
幼い頃の夢だった、この街を火の海にってのは諦めてやるかな!
「……何変な顔をしているの?」
ついつい漏れた笑いが聞こえたのか、セリアーナにエレナ、テレサと同じ馬車に乗る3人から視線を集めている。
「失敬な……機嫌が良いんだよ!」
セリアーナの失礼な突っ込みも流せるくらいにはご機嫌だ。
別に俺が崇め奉られているわけじゃないが、俺の主がその対象だし、もともと住民ともそんなに接触無かったしな……寛容にもなるってもんだ。
「ふひひっ……痛いっ⁉」
馬車の外に笑顔を見せながら手を振っているのに、空いた手で俺の頬を抓って来た。
……器用な真似をしてくれる。
「良いじゃありませんか。私も幼い頃から知っている奥様が新領地でこうまで受け入れられていると思うと、誇らしくなりますよ」
「ふんっ……、まだ大して仕事をしていないもの……。この成果はリーゼルの物よ」
エレナがフォローを入れるも、外から見える為、表情こそ笑顔だが不機嫌そうな声だ。
まぁ、このねーちゃんアスリート気質というか、自分に厳しいからな。
充分仕事をしていたと思うが、彼女にとってはまだまだ足りないと感じているんだろう。
面倒な性格している。
「……辺境の街は貴族とは折り合いが悪い事が多いと聞きますが、こちらでその様な心配は無縁なのですね」
「旦那様が代官に就いた時から積極的に交流を持っていましたし、昨年冬に魔物の襲撃がありましたからね。それを死者を始め大きな被害無く乗り切れた事も大きかったんでしょう」
「ああ、ゼルキスの領都で資料を読ませていただきました。従来の襲撃よりも大規模なものだったとか……」
「ええ。旦那様も勿論ですが、その際に特に活躍したのがセラに、アレクやジグハルトと言った奥様の直属の配下ですから……。魔境がすぐ側に広がるこの街では冒険者と関りのあるものが多いですから、その話も浸透しやすいのでしょうね」
エレナとテレサが話しているが……目の前で褒められると照れるな!
◇
この街の南西部の高台にある代官屋敷改め領主屋敷。
街を発った春の2月の頃は、大分出来上がってはいたもののまだ建設途中だった。
しかし、そこから3ヶ月経った今、見事完成している。
会議室や食堂、リーゼルの執務室といった主要施設が詰まった本館に、セリアーナの部屋を始め侍女や女性客用の部屋がある南館。
そして新たに建てられた北館。
こちらは男衆の部屋がわんさかと…………。
北館南館、どちらも2階は男性用女性用と分けられている。
「ぐぬぬ……!」
「だからセラ、お前でも駄目だ。我々とて南館には入れぬだろう?お前に手を出す様なものはいないが、それでも万が一こちらで何かがあれば、通した我々の立場が危うくなる。諦めろ」
その北館に繋がる通路の前で、そこを警備する兵士に見事に通せんぼを食らってしまった。
屋敷へ帰還後、セリアーナ達はリーゼルと一緒に留守の間の報告を受けている。
アレクは冒険者ギルドに向かい、ジグハルト達は夜まで戻って来ないそうだ。
荷物の運び込み等の手伝いをやってもいいが、正直俺がいても大して役に立たない。
それならという事で、北館の探索に向かいたかったのだが……一応俺も女だからな。
ちょっと粘ってみたけれど、これは通してもらえそうも無いな。
彼等も真面目に仕事をしているわけだし、ここでごねても迷惑なだけか……新築だし興味あったんだが……。
「わかった……諦めるよ」
「ああ、見ても面白いものは無いからな……。それよりも、屋敷の女達に顔を見せにでも行ったらいいんじゃないか?よく話していただろう」
「そーだね……。んじゃ、また」
隙を見て忍び込むか、正攻法でアレクやジグハルトを連れて行くか……いつか突破してやる。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




