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「どーぞー」
部屋のドアを叩く音に、手に持った駒を置き、答えた。
エレナあたりかと思ったが、入って来たのはテレサだ。
「ありゃ?テレサさん、どうしたの?」
「セラ殿、そろそろお休みの時間ですよ?迎えに来ました」
セリアーナが寄こしたのかな?
今結構いい所だったんだけれど……。
「船に乗っている間は時間があるし、急ぐ事じゃないさ。今日はずっと移動だったからな……お前も早めに休んでおけ」
「ぬう……」
机の上に散らばる駒や紙片。
ただ散らかしているわけでは無い。
割と真面目に、今日見た騎士達の戦い方を考察していたのだ。
ウチはオーギュストを団長に騎士団を新たに設立するとは言え、まだまだ人数は少ないらしい。
何かあった時の主力はアレクがコツコツ声をかけ続けてきた、冒険者や傭兵達になる。
その少数の騎士を効率的に運用する方法を、模索していたわけだ。
半分……いや6割……もうちょっとか?
趣味ではあるけれど……。
部屋に時計が無いから何時かわからないが、夜も更けている。
まだ眠くは無いが、あまりここに長居するのも悪いしな……。
「仕方ないか……んじゃ、おやすみー」
「おう」
アレクはまだまだ続けるようだ。
こいつは7割8割位趣味だな……!
◇
部屋を出ると通路にテレサが待っていた。
街に着き、ユーゼフ達とはそこで分かれたが、彼女は一緒のままだ。
荷物を積み込む間セリアーナ達は代官達と食事をしていたが、そこにも同行していた。
……領地まで護衛に付くんだろうか?
セリアーナ付きの女性は俺は別として、エレナだけだし、ひょっとして引き抜いたのかな?
「テレサさんは船酔い平気な人?」
セリアーナの部屋に向かう途中、無言なのも何だしと話しかけてみた。
親衛隊って事は王都にいる事が多いだろうし、船に乗った経験はないかもしれない。
今はまだ川で揺れも穏やかだが、ここから海に出るとどうなる事か。
「船ですか……王族の護衛で何度か経験はありますが、海に出た事はありません。荒れた道を馬車で移動したりする訓練は積んでいますし、乗り物には強いとは思いますが……やはり川と海では違いますか?」
色んな訓練をしているんだな……。
まぁ、王族の護衛中に乗り物に酔って調子悪いから無理ですとかなったら、ふざけんなってなるだろうからな。
「女性陣はみんなダウンしてたねー。まぁあの時は雨季と被っていたから荒れていたのかもしれないけどね」
「なるほど……。セラ殿は大丈夫なのですか?ゼルキスの領都出身と聞きましたが、船に乗る様な事は無かったでしょう?」
「オレ、寝る時以外は浮いてるから……」
皆のダウンしていた姿が頭をかすめ、少々申し訳なくなってくるが、仕方が無い。
「ああ……。王都でもそうでしたが、随分と自由に動けるのですね。【浮き玉】……でしたか?高く飛び跳ねたり、速く走れるようになる恩恵品は見た事がありますが、宙を浮く恩恵品はソレが初めてです」
「いいでしょ。物運んだりには向いてないけどオレの移動用って考えたら十分すぎるよね。でも今聞いたのも面白そうだね……他にもテレサさんが知っているのとかある?」
「どうぞテレサと呼んでください。そうですね、他には……」
◇
テレサとの会話も意外に転がり、気まずくなること無く部屋の前に到着した。
「お帰りなさい、セラ」
ノックをするとドアを開けたのはエレナだ。
「はいはい、ただいま」
部屋に入ると、ソファーに座るセリアーナが目に入るが、こっちもこっちで机に何かを広げている。
「戻ったわね。何の遊びをして来たの?」
と、俺の残したメモを手に持ち、ヒラヒラ振りながら聞いて来た。
ちなみにメモの内容は「アレクの部屋で仕事を手伝ってきます」だ。
断じて遊んで来るではない。
「一応仕事だよ?今日の騎士の戦いをアレクに説明してたりしたんだ。それを参考にして少人数での効率的な陣形が……」
「エレナ?」
セリアーナは俺の説明を途中で遮った。
……信じてないな!
「……アレクは戦術研究が趣味ですから。セラ、遅くまで付き合わせてしまったね」
アレク……エレナに謝らせちゃってるぞ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




