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今回の襲撃の一連の簡単な説明は終わった。
正直この後の処分云々は興味が無い。
俺からすりゃー、ルトルに戻ってから面倒にならないのならそれでいい。
ユーゼフが今のままの地位に居た方が都合がいいっていうのならそうしてくれて構わない。
まして、チンピラ同士のけんか程度ならともかく、国防まで話が広がってしまうと俺に出来ることは無い。
後は専門家に任せる。
それが一番だ。
今日は色々話を聞いて頭を使ったし、さっさと寝てしまいたい。
「って事で、そろそろミネア様のお部屋にですね……?」
「まだ駄目よ」
昼間話を終えた後も皆は残り、そのまま晩餐となった。
俺は別室だったからそこでどんな話が交わされたかはわからないが、事前の雰囲気からそんなに悪い内容ではなかったはずだ。
「あの……足が痺れてですね?」
「我慢なさい」
食事から戻って来ると、何故かテーブルの上に正座をさせられてしまった。
この国は床や地面に座る文化は無いが、一応正座は存在する。
もっとも、謝罪の際だったり、膝裏に棒を噛ませて重石を乗せる拷問用だが……。
床は絨毯が敷かれ、ソファーでは柔らかい。
結果テーブルになってしまった。
「テレサに聞いたけれど、お前……様子見をしていたそうね?」
セリアーナが見下ろして来ながらそう言った。
俺の座るテーブルが低い事と彼女がソファーに座らず仁王立ちの為、高低差も相まって中々の威圧感……。
一見無表情だが、最近分かるようになって来た。
この顔は怒るほどではないが、何か面白くないことがあった時の顔だ。
しかし様子見……?
「……あ。襲われた時の事?」
「そうよ」
「あー……何をしてくるのかとか、何か持っているんじゃないかなって気になってね……。あの……もしやその事を怒ってらっしゃるとか……?」
「そんな事無いわ」
この声色は嘘だな。
油断していたわけでは無いし事件そのものは仕方ないにしても、確かに要らん余裕を見せすぎたかもしれない。
それでも無傷で切り抜けられていたならともかく、怪我したしな。
なるほど……テレサから詳細を聞いたのか。
「ごめんなさい」
ここは謝っておこう。
いつぞやのラギュオラの牙の面々に倣って土下座だ。
「調査は騎士団の仕事よ。そう何度も無いでしょうけれど、次また似たような事態に巻き込まれたら即倒しなさい」
全くの正論で耳が痛い。
ちと調子に乗っていたな。
「はーい」
「結構。明日からの事を話すわ。そのままで聞きなさい」
立ち上がろうとすると、ストップが。
【浮き玉】に乗るからあまり関係は無いがそろそろ足の感覚が危ういんだけれど……。
「王都を発つのは今週末、あと3日ね。明日からその準備に移るわ。明日はおじい様達への挨拶に。お前の荷物も回収するからついて来なさい」
「ほい。結構慌ただしいんだね?新ルートで大分時間を短縮出来るようになったのに……」
「ええ。帰路も狙われる可能性が残っている以上、相手に準備させる時間を与えたくないわ。もっともこのルートだと開けた平地でしか襲えないから、こちらとしては却って都合がいいのだけれど……だからと言って敢えて狙われるような真似をしてもね……」
やや不満げな顔だ。
そういった案もあったのかもしれないな。
セリアーナの案かな?
「伯爵様方もご一緒ですし、仕方がありませんよ。それに、領都でお披露目もありますから……」
フォローするように脇で見ていたエレナが加わって来た。
話題を変えたいのかもしれない……乗っかるか。
「そういえば家名とかが新しくなったんだよね。リセリア家にリアーナ領だったよね?新しく設立する時は名前を自分達で決められるって聞いたけれど……」
まぁ、予想は付くけれど。
「私とリーゼルの名前からよ。大抵夫婦で半分ずつ取るものだけれど、あまり王家が出過ぎるのもよくないから「リ」だけに止めたわ。家名は「リゼリア」と迷ったのだけれど……まあこれでも問題は無いわね。セラ、お前も今後はミュラー家では無く、リセリア家に仕えていると言うように。いいわね?」
「はいはい」
リアーナ領領主の、リセリア家……間違えないように気を付けないとな!
しかし、そうか……。
リーゼルは押し負ける事が多いし、てっきりセリアーナとの力関係でその名前に決まったと思っていたけれど、ちゃんとした理由があったのか。
心の中で謝っておこう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




