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「その……よろしいでしょうか」
少し間が出来たところで、今まで聞き役に徹していたアイゼンが発言した。
律儀に挙手をしてだ。
「今回の件で何か組織に変化が出たりするのでしょうか?自分は卒業後、王都の騎士団で勉強させてもらいましたが、今回の件を踏まえても大きな不備があるようには思えませんでした」
「あら?貴方そんなことしていたの?」
意外そうな顔をするセリアーナ。
「……はい。いずれ領地で必要になると思ったもので」
顔をややこわばらせながらアイゼンが答えた。
もう少し弟に興味持ってやろうよ……姉ちゃん。
「ふむ……結論から言うが、変更は無い。私や副長達がいくらか給与を返還するがな」
そう言うと一旦話を止めこちらを向いた。
「すまんな。君は不満かもしれんが、ここは動かせんのだ」
「……別に不満は無いけれど、何か理由があるの?」
よくよく考えてみればじーさんの友達で騎士団の偉い人って事しか知らない。
「私とその派閥は、主に対西部を念頭に置いて行動している。アリオスもだが、国境の警備や同盟全体で連携し西部との紛争にも幾度となく参加しているが、対立というわけでは無いが、もう一つの派閥は魔物との戦闘を念頭に置いている」
「ほう」
派閥のスタンスが違うのか。
ちょっとわかって来た。
「今回の件を金目当ての強盗ではなくセリアーナ嬢の暗殺の一環としてしまうと、事が大きくなってしまい、最終的に私にまで責が及ぶ。それはそれで仕方が無い事なのだが、そうなると派閥が弱体化し、もう一方が力を持つことになる」
「魔物討伐が中心になるんだね?」
「その通りだ。それが悪い事ではないのだが、魔物と戦える冒険者や傭兵のチェックが甘くなるかもしれない。そうなると、ルトルでの襲撃に参加する戦力が増える事になる。その事態は避けねばならん」
「今回は実行に移さなかったけれど、私の暗殺と離宮の襲撃……失敗しようと成功しようとどちらにせよこの国防体制に変化を起こす事も組み込んでいたかもしれないの。全く……面倒な事をよくも考えるものね」
なんというか……二手三手と続くあたりねちっこいというか……。
「……気が合うんじゃないかな?まぁわかったよ。ユーゼフ様が総長のままの方が都合がいいんだね」
その通りと頷くセリアーナ。
もともと処分を望んでいるわけじゃ無かったし、俺から言う事は何も無い。
「その分騎士団から相応の分を頂くから、楽しみにしておきなさい」
何も無いんだよ?
◇
粗方話すことは話し、誰が言ったわけでも無いお茶の時間となった。
とは言え、身分や上下関係が色々入り組んでいるからか、何とも静か。
「そう言えばセラ……拘束された時どうやって倒したの?無傷で昏倒していたそうだけれど、そんな器用な事出来たのかしら?」
「それは私も気になっていた。だが、他家の人間だけに聞き出すわけにもいかなかったからな……」
「うむ……体格差のある者を無傷で気絶させるのは簡単なことでは無いな。どうやったのだ?」
その静かな中、思い出した様にセリアーナが口を開いたことをきっかけに、じーさん方も乗って来た。
黙ってはいるが他の面々も興味が有る様な視線を向けている。
「アレクはどう思う?」
「おそらくアカメかシロジタで魔力を食い尽くしたんだろうが……どう当てたかがわからないな」
エレナとコソコソ話しているアレク君正解。
セリアーナを見ると、見せろとばかりに頷いている。
「気になる?ふっふっふ……仕方ないなー」
そう言うと皆が見える位置に移動し、口元を両手で覆った。
そして……。
「ばあっ!」
手をパッと退け口を大きく開いた。
その開いた口から黒い影が飛び出し、一瞬でスカートの裾に潜り込んでいく。
「⁉」
「わっはっは!驚いた?」
わざわざ確認しなくても皆の顔を見ればわかるが……中々いい反応だ。
「そ……そうか。体内なら影もあるし隠すことが出来るんだな」
最初に驚きから覚めたのはアレクだ。
「そう。髪の中と迷ったんだけどね……こっちの方がオレのタイミングで仕掛けられるしね」
その言葉を聞き、特に男性陣が感心しきりといった様子だ。
折角上がった株を下げる事も無いし、当日思いついたって事は内緒にしておこう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




