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式当日、セリアーナ達の帰宅は深夜だった……らしい。
俺は寝ていた。
翌日……つまり今日だが、彼女達の様子をそれとなく観察していたが、襲撃の件は知らされていなかったと思う。
来客が多かったというのもあるが、様子に何も変化無かったし、俺も何も聞かれなかった。
親父さんは会わなかったからわからないが、アレクも何も言っていなかったし、間違いないと思う。
流石は離宮の使用人と言うべきだろうか?
彼等も何も漏らしていないのだろう。
襲われたのは俺だったが、そもそもの目的はセリアーナ。
彼女に知らせないって事は無いはずだ。
間を開けるのは、王都での危険はもう無い事と、式を挙げた事への配慮なのかもしれない。
となると……明日か?
「あら?セラさんまだ起きていたの?」
ふぬぬ……とベッドで唸っていると、その声に気付いたミネアさんが声をかけて来た。
侍女のジーナと何か話していたのだが、聞こえてしまったか。
この人達も知らないみたいだし……。
「ちょっと考え事を……。俺明日は昼まで寝ますね!」
カーテン越しにだが、2人の「?」といった気配が伝わって来る。
正直、この件でセリアーナがどう動くかわからない。
騎士団総長が出張ってきたりと大事になっているし、俺の手には余る。
事態の収拾は他の人に任せよう。
◇
騎士団本部にある地下収容所。
主に王都圏で大きな犯罪を起こした外国人が、記念祭の初日に行われる処刑までの間収容される場所だ。
逃亡や救出を防ぐ為に地下に、そして内部も螺旋状に造られている。
貴族学院に在籍していた頃、場所が場所だけに中に入る事は叶わなかったが、そう教わった。
記念祭も終わり、ひと気はほとんど無い。
その収容所の廊下をコツコツと靴音が響いている。
私とエレナ、リーゼルとカロス。
騎士団総長のユーゼフとお付きの騎士が2人。
そして、襲撃に立ち会った親衛隊の3人。
外から来た私達の方が多いだろう。
「かび臭いわね」
「地下……それも牢屋だからね。花でも飾るかい?」
何となしに呟いた言葉に律儀にリーゼルが返してくる。
「必要無いわ……リーゼル。私は今朝聞いたのだけれど、貴方は今回の事をいつ聞いたの?」
「僕は昨晩だ。夜王宮に呼び出されたカロスが伝えてきたよ」
すぐ隣を歩くリーゼルが肩を竦めそう言った。
「そう……全く。昨夜セラがいつもより早くお母様の部屋へ向かった事を怪しむべきだったかしら?」
思い返せば、式の事について何も訊ねてこなかった。
あの娘は、何が面白いのかどうでもいい様な式典の様子や由来をも聞きたがるのに。
来客が多かったから遠慮していたのかと思っていたが、あれは私から逃げていたのだ。
夜も普段は迎えが来るまで部屋にいるのに自分から向かっていた。
「アレクは知っていたらしいけれど……。ユーゼフ総長。貴方が口止めしていたの?」
「口止めというわけでは無いが、この件は自分が預かるとは……な。セラ嬢はわからんが、アレクシオは自分に配慮したんだろう」
その問いかけに、前を歩くユーゼフが振り向くことなく答えた。
彼の肩書きを考えると、実質同じような事だろうに。
しばらくの間会話も無く進んでいると、大きな両開きの扉が見えてきた。
扉の前には槍を手にした兵が両側に控えている。
「ここから先が牢になる。今は先日捕らえた4人のみが収容されているが……少々刺激が強いかもしれんが、よいな?」
「もちろんだ。セリアも良いね?」
ユーゼフの念押しに軽く応えるリーゼル。
「ええ」
もちろん私も。
「では……。開けろ」
扉前の兵士が槍を置き、扉に手をかけ開き始めた。
中から徐々に光が漏れてくる。
牢へ繋がっているのに閂が付いていないことが気になったが、分厚く随分重そうだ。
これなら足止めには十分だろう。
開き終えたのを見計らい、中へと踏み込んでいく。
中は中央を通路が通りその両側に鉄格子の付いた牢が並んでいる。
収容されている罪人の数が少ないからか、牢という割には変な臭いはしないが、それでも微かに血の匂いが漂っている。
「牢なのに随分明るいんだね」
牢の中は昼間の様に明るい。
魔道具の照明それも随分強力だが、中で本を読むような自由があるとも思えないし……。
「そうね……お父様の執務室よりも明るいわ。何か意味があるのかしら?」
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




