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襲撃の際の事情聴取を受けているが……特に話す様なことは無い。
普通に仕事をしていた兵士が急に襲って来た。
こうとしか言いようのない事件だからだ。
城内で行動する兵士は4人で1班となっている。
賄賂などの不正対策なのか知らないが、勤務時間内でもローテーション制で入れ替わっている。
今日この部屋に届けてきたのも、襲撃犯一行を含めて4組いた。
その襲撃犯一行だが4回届けに来て、実行は4回目の時だった。
その時も、手順を省いたりして警戒を緩めていたわけでは無い。
強いて言うなら、書類のやり取りの際に俺と犯人から少し……と言っても数歩程度だが離れてしまった事くらいだろうか?
それにしたって、書類のやり取りは直接本人同士が行う決まりがある。
一々剣を突き付けたりするわけにもいかない。
俺はもちろん、親衛隊の3人もちゃんと仕事をしていた。
改めて考えても防ぎようは無かったと思う。
話を聞いたユーゼフは先程から渋い顔をしている。
完全に騎士団内部の問題になっているもんな……。
一応敵かどうかを調べるだけならセリアーナが出来そうだけれど、辺境の公爵夫人が王都の騎士団の人事に介入できるのはマズい。
露骨な足の引っ張り合いは無いけれど、主導権争い位はこの国にもある。
ミュラー家の姫が王子と結婚して王家の全面バックアップの下、新領地の開拓を行う。
それだけならまだしも、王都圏でも影響力を持ってしまう事になる。
騎士団が原因で国内に揉め事の火種を作ってしまいかねない。
そりゃー、そんな顔になってしまうだろう。
「む?」
どうするのかなと眺めていると、ユーゼフは顔を上げドアの方を見た。
と同時にドアをノックする音が。
「構わん。入れ」
入って来たのは強張った顔をしたアレクだ。
「失礼します。うちのセラが面倒を掛けました」
そして入って来るなり頭を下げるアレク。
「あれ?もう来ていいの?」
式に護衛として参加していたはずだけれど……。
「とりあえず俺だけな。服が変わっているが、怪我は?」
「もう治ったけど、肩外されて背中をちょっと切られたね」
「そうか……ま、無事で何よりだ」
そう言い、頭をペシペシ叩いて来る。
ホッとしたのか表情が和らいだ。
まーなー……警戒はしていたし備えもしていたが、本当に襲撃が起こるとは思っていなかったんだろう。
「そうだな……アレクシオ、貴様にも話しておこう。お前達、もう行っていいぞ」
ユーゼフが部屋にいる騎士達を下げさせた。
◇
「……まあそんな感じだ」
アレクへの説明を終え、ユーゼフはソファーの背もたれに体を預けた。
俺とアレクと親衛隊の3人にユーゼフ。
部屋に残っているのはこの6人だけだ。
部下は既に部屋を出て、多少は姿勢を崩せるようになっている。
「襲撃の件はどこまで話が伝わっている?」
「伯爵と私までです。今はセリアーナ様達の耳に入れていません。犯人達はもう捕らえているのですよね?この件はどう収めるのでしょう?実質被害はセラだけですが……」
「どうもこうも……金に困った兵が高価な品に目が眩み、居合わせた親衛隊に取り押さえられた……そうなるだろうな」
……なんか矮小化されている気がするけど?
「不満か?」
顔に出たのか俺を見てそう言って来た。
「別に不満ってわけじゃないですけど……一応お嬢様を狙っていたんでしょう?そんなんでいいの?」
「城内勤務できるのは王都圏出身の者だけだ。思想や政治が動機とは思えん。調べるのはこれからだが、金か女だろう。放棄されているのにもかかわらず、それに気づかず事に及ぶ程度だ。大した情報は持っていないだろう」
……まぁ、どう考えても賢いとは思えなかった。
まともか否か、とかではなく、ただの馬鹿って事だな。
「表には出さんが、相応の処分を下すからな。それで納得してくれ」
わざわざ騎士団内部の失態を公にする必要は無いか……セリアーナの式に泥塗る事にもなるし。
「わかりましたー」
いや、城内勤務の兵士が金に困って離宮で強盗を企てたってのも結構な失態だと思うけれど、どうなんだ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




