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「っ⁉」
背中にチクリと痛みが走ったかと思えば一気にドレスを切り裂かれた。
「貴様っ⁉」
それを見たテレサが声を上げるが、俺を盾にするように見せつけ押し留まらせる。
「動くなっ!その赤い目……情報通りだな。蛇はそのまま見える位置に留めておけ」
……アカメの事までは知っているか。
でも、シロジタの事は知らないみたいだ。
こいつらが何を考えているのかわからないから今まで大人しくしていたけれど、ここまでだな。
と言うよりも、これ以上引っ張ると逆に危ない気がする。
やったるぞ!
「……ねぇ」
体は無理でも首は動かせる。
なんとか後ろが見えるように回し、さっきから俺の首を掴んでいる男の顔を見る。
普通のおっさんだな。
目がイってるとかそんなんでも無いし……、まともっぽいのになんだってこんなアホな事を?
まぁ、それは捕らえた後で調べてもらおう。
とりあえず、大きく口を開き……。
「動くっ……なっ……」
勝手に動いた俺を怒鳴ろうとしたんだろうが、言葉の途中で崩れ落ちた。
軽いね。
「わっはっはっ!って……ぉぉぅ……」
動かないのを確認し、振り向いた時には既に制圧を終えている。
ほんの2-3秒なのに……。
血は流れていないし、魔法は使っていなかったから殴り倒したのかな?
そう言えば親衛隊って身分抜きにしてもエレナがギリギリ入れるかどうかってレベルだったな。
まともにやれば一般兵程度じゃ、こんなもんか。
「セラ殿、無事ですか?」
他の2人が拘束をしている間にこちらにやって来たテレサが様子を訊ねてきた。
「腕が痛い!」
多分脱臼だと思うが、腕が動かせない。
これもポーションとか魔法で治せるのかな?
骨折はいけたけれど……不安だ。
「すぐに治療をしましょう。その前に……その者は?」
彼女は床に倒れて動かない男を見ている。
あの位置からじゃ俺が何をしたか見えなかったんだろう。
「気絶してるんじゃないかな?」
「⁉」
人間相手は初めてだけれど、思ったより上手くいった。
足は無事だから、いざとなればセラキックをぶちかますつもりだったけれど、必要なかったな。
「そ……そうですか。では、先に拘束しましょう。治療は少し待ってください」
足に付けたポーチからロープを出し、手足を縛っていく。
親衛隊だけでなく王都の騎士は皆装備していて、中に何が入っているのかと思っていたが、捕縛用の装備だったんだな。
「お待たせしました。治療はあちらでしましょう」
応接用のソファーに移動し、まずは背中の傷を魔法で治した。
幸い浅く切った程度で痕は残らないらしい。
しかし回復魔法も使えるのか……。
「それでは肩に移ります。いいですね?」
さて、いよいよ本命だ。
「むぐ」
テレサの問いに、やってくれと頷く。
布を噛まされているから言葉では伝えられないが、今ので十分だろう。
脱臼……前世でも一度やった事があるが、手術はせず関節の位置を戻して2週間近く三角巾で固定していた。
こちらでも似た様なものらしい。
ただ違いがある。
魔法やポーションの存在だ。
固定するのは患部の回復を待つ為だが、こちらではその期間をショートカットできる。
素晴らしい……!
「んぐっ⁉」
問題は位置を戻す際の痛みは同じだって事か……。
◇
治療を受けている間に、1人が外に応援を呼びに行っていたらしい。
騎士の1隊を連れすぐにやって来て、襲撃犯達は連行されていった。
そして俺は破れたドレスを着替える為に一旦セリアーナの部屋へ向かった。
離宮内には使用人達が残っていたが、彼等には被害は無かったようで何よりだ。
彼等に着替えを手伝ってもらい、再び部屋に戻って来たのだが……追加で騎士の数が増えていた。
沢山いる騎士の中の1人は見覚えがある。
騎士団総長のユーゼフ。
【緋蜂の針】の試用の時にじーさんと一緒にいたが、今はお仕事モードなのだろう。
あの時の好々爺然とした様子とは大違いだ。
「来たか。では話を聞かせてもらおう」
部屋に入ってきた俺達を睨みつけながら口を開いた。
重苦しい雰囲気だ。
騎士団の失態と言えばこの上ない失態だし、無理もないのかもしれないが……。
まぁ、俺は被害者だ。
気楽に行こう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




