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「来たわね」
離宮に馬車で運ばれ中に入ると、仁王立ちのセリアーナとエレナが待っており、俺を見るやそう言って来た。
「……来たよ。なんでまたお嬢様が玄関で待ち構えてんのさ」
まぁ、退屈していたんだろうけど。
「退屈なのよ。荷物は?」
「やっぱりか……。荷物は何も持って来ていないよ。恩恵品は身につけて来たけれど、それ以外はなんかこっちで用意しているらしくて、手ぶらで行けって言われたんだよね」
「結構。話をするからついて来なさい」
「はいはい。お嬢様の部屋?」
「ええ。お前が寝る部屋はお母様の部屋だけれど、それ以外は私の部屋を使うわ」
「待って……?どういう事?」
何故ミネアさん?
◇
部屋に着き説明を受けていたのだが、なんか俺に配慮してか微妙にあちらこちらをぼかしていたけれど、どーもセリアーナの事を少女趣味と思われているふしがあるらしい。
ヌイグルミだとかフリフリの服が好きだとかではなく、少女が好きって意味だ。
領都やルトルの屋敷の人間ならそんな事無いとわかるけれど、まぁ、確かに使用人だか何だかよくわからない少女を自分の寝室に引き込んでいたらそんな風に邪推されても無理はない。
どういったルートで調べたのかも気になるが、そこは置いておこう。
跡継ぎの問題だとかも絡んで来るし、一概に咎めるわけにもいかない。
実際は違うし説明をすればわかってもらえるだろうけれど、もうすぐ結婚式を控えている。
セリアーナの命を狙うような真似をするのは流石に西部だけで、国内の者はしないが、彼女の事を快く思っていない者がいないわけでは無い。
余計な悪評を立てられる可能性は避けられるなら避けるべきだろう。
「……オレ使用人用の部屋で良いんだよ?」
それかエレナの部屋。
どうせ中で【隠れ家】を発動するんだし、場所さえあればどこでもいい。
「君の加護の事や王妃様からお声がかかった事は使用人達の間でも知られているんだ。城内で働いているだけあって、この離宮の使用人達は皆優秀だけれど、それでもふと魔が差すという事もあるでしょう。最初は私の部屋にと考えていたのだけれど、奥様がご自分の部屋をとね」
とエレナが言った。
「……危険なの?」
攫われるんだろうか?
「まさか。ただ、お前はここでは客人なのよ?それも王妃様からお声がかかった事もある。普段お前が使用人にも気軽に加護をかけているからと、自分にもかけてもらおうとしようものなら首を刎ねられても仕方ないわ」
「…………」
マジかっ⁉
外国の貴族を突っぱねるのに丁度いい箔が付いたなー程度に思っていたが、セリアーナの話によると思ったよりも重いのかもしれない。
驚いて言葉が出てこなかった……。
「エレナも言ったように、ここの使用人達は優秀だし大丈夫とは思うけれど、こちらでも気を付けておくべきだわ。だから、私の部屋が無理な以上、次点でお母様の部屋になったの。いいわね?」
「まぁ……そういう事情なら」
無駄に使用人達の自制心を試すような真似をする必要はない。
……しかしミネアさんか。
あまり気が休まらないかもしれないな。
「さ、この話はここまでよ。それより、街はどうだったの?」
セリアーナはポンと手を叩き話を切り替えた。
「うん。怪しいというか、目についた冒険者はいなかったね。アレクもいるとしたら、城の中だって。重要な位置に入り込むには時間が無さ過ぎたから、精々衛兵程度だろうけれど、気を付けて欲しいって言ってたよ」
婚約発表からまだ2年経っていない。
息のかかった者も多少はいるだろうけれど、直接影響を及ぼせるほどの者は入り込めていないんだろう。
「そう……。城の中に、私の事を害する気は無くても快く思っていない者もいるし、判別は難しいわね。この離宮の中には居ないし、来るとしたら戦技会と式の最中かしら?……でもそれも考えにくいわね」
自分の言葉に突っ込んだり何やら考え込んでいる様子。
城全体とかなら無理でも、自分の周りには怪しい者を近づけさせない位は出来るだろうし、大丈夫そうな気はするけれど……まぁ、慎重なのはいい事だ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




