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「どうぞこちらを。お嬢様と皆さまで召し上がって下さい」
そう言いバスケットを置いて執事さんは部屋を出て行った。
「……最近昼飯には困らないな」
「酒が飲めないのは残念だがな!」
そう言い、偉そうにふんぞり返っている俺を他所に、皆で食事の準備を始める。
「今のところもセラ嬢が治療したのか?」
「うん。内容は教えないけどねー」
ちなみに出て行った執事は王都で働く子爵家で働いている。
その家のお嬢さんが近く婚約をするのだが、足に火傷を負っていたことを親にも隠し続けていて、ポーションを使ったりと自分で治療しようとしていたが、効果があまり出ず、親に泣きつき最終的に俺まで話がやって来た。
領地こそ持っていないが、現当主は中々優秀らしく、繋がりを持っておくと便利らしい。
この国では男性はもちろん、女性も戦闘で負った傷ならそこまで忌避されることは無いのだが、彼女の場合は魔法の自主練習が原因だった。
それはそれで立派な事だと思うが、この場合だと自身の未熟さ、危険への認識の甘さが問題になってしまうらしい。
ポーションで治療を続けていた事もあり、範囲こそ広かったが障害と言えるレベルまでは行っておらず、【ミラの祝福】で無事元通りにする事が出来た。
どれ位まで治せるかがまだわかっていないからな……無事治せて良かった。
「ほら、苦手そうな物は除けておいたぞ」
俺の分を取り分けたアレクが持って来た。
VIPルームは俺達がいる部屋以外にも複数ある。
数えたわけじゃないからはっきりはわからないが、広さを考えると10部屋くらいかな?
恐らくそのお嬢さんの専属冒険者を探しに来ているんだろう。
今日は隣の部屋に両親と一緒に詰めている。
この部屋を使うようになってから、似た様な事で挨拶に来る者が増えたが、いつの間にか昼食を持ってくるようになっていた。
味もいいし、わざわざ出かける必要もなく助かっている。
「セラ嬢は来週から王宮に行くんだっけか?」
「王宮じゃなくて離宮だね。お嬢様の側に貼り付く仕事。式までは屋敷でのんびりする予定だったんだけどね……」
「なら俺達もここに詰めるのはもう終わりか?知っている奴を見つけても意味が無いんだろう?」
「俺達が知らない腕の立つ冒険者が潜り込んでいないかを探すことが目的だったからな。俺達でも雰囲気程度は掴めるが、やはりセラ抜きじゃ難しい。ま、その間俺は休暇だな。代わりに屋敷でゆっくりさせて貰うさ」
そう言いアレクも食事を始めた。
ここで冒険者談義しながらダラダラ過ごすのも結構好きだったんだけどなー。
◇
「結局見つからなかったねー」
「そうだな。ここまで来ると、冒険者としては入り込んでいないんだろうな」
VIPルームに詰めて10日程。
目につく者達はいなかった。
このやり取りも冒険者ギルドから屋敷への帰り道で何度かやったもんだ。
それも今日でラスト。
王都への新規の出入りはすべてチェックされているし、街中でもその姿を捉える事は出来ず、これはもう冒険者の中には居ないな……と言うのが結論だ。
「何か動きそうだと目を付けていたところも全く動きが無いままだし、これは陸路のどこかに戦力を張らせていたんだろうな」
「王都に戻って来るかな?」
「いや、ルトルに向かってそちらで合流するだろう。どこを拠点にするかはわからないが、そのまま機会を待ち続けるはずだ」
「ご苦労なこったね……」
「全くだ……。まあ明日からも冒険者同士の交流は続けるから、探りは入れ続けるが……お前も無理をしない程度に警戒は続けておいてくれよ」
夏の1月、第2週がもう終わる。
第3週から戦技会の予選が始まる。
それの優勝者とその推薦者はセリアーナ達の結婚式に出席出来るらしい。
王族の式だし、よくわからんが名誉な事なんだろう。
大分盛り上がっているそうだ。
それもあって、念の為セリアーナの守りを固めようと、俺も離宮に泊まる事になってしまった。
これ以上外を警戒するより、内側を固めようって事なんだろう。
素手の俺なんて役立たずもいい所だが、恩恵品の持ち込みも許可されている。
ドッキリの報酬第2弾だ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




