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ダンジョン入口は冒険者ギルドの地下にある。
これはどこのダンジョンもそうなっているそうだ。
ここ王都のギルドも当然そうなっている。
そして、地下に降りてすぐの受付前はちょっとしたロビーの様になっていて、ダンジョンに潜る直前、あるいは帰還後の話し合いが行われる事もある。
ただ、緊張、興奮した状態の者も多く、ダンジョン内での冒険者同士の争いが重罪であることから、ちょっとした諍いが元でここで暴れる者も少なくない。
その為、天井を高くとり、さらに天井の照明付近の傾斜の付いた壁に鏡が貼られ反射させ、明るくなるように工夫がしてある。
薄暗いより明るい方がケンカは起こりにくいもんだしな……。
ただ、実はそれだけでは無かった。
その鏡と思った物……反対側からは鏡ではなくガラスの様に見える、所謂マジックミラーの様な物だった。
そして、その裏に何があるかと言うと、ギルドの資料室から入る事が出来るVIPルームだ。
前世の劇場の貴賓席といった感じだろうか?
壁一面がマジックミラーで、部屋側からはロビーの様子を見下ろすことが出来る。
ここも資料室の一部に含まれていて、ダンジョンや周辺地域の魔物はもちろん、年代ごとの冒険者や魔王他持ち出し禁止の各種目録が置かれているが、ただの贅沢な資料室というわけでは無い。
では何の為に使われているのかと言うと、貴族が冒険者と専属契約する際の素行調査の一環で使われている。
直接貴族が名乗って面談をしても、その冒険者の本性は見えてこない。
仮に契約をした後で大問題を起こされた場合、放置しても、裁いてもどっちにせよ自分の見る目の無さを喧伝するだけだ。
そんな事態にならないようにと、冒険者の素の状態が出やすいロビーでの素行をここから観察している。
特にこの国は貴族の利用が多いらしい。
自分の見る目を信じる!
とかそんな事をしない堅実さが、なんというか……この国の貴族っぽい。
腕が立ち、経験豊富なのにいつまでたってもお声がかからない場合は、そこで撥ねられている場合が多いらしい。
この部屋の存在は隠されていて、タイアー達はもちろん、アレクも知らなかった。
俺も鏡が貼ってあることは知っていたが、わざわざ覗きに行かないし裏側の事は全く気付かなかった。
ダンジョンがある各地の冒険者ギルド内には、内装は違っても似た様な部屋が用意されているそうだ。
その地の領主か、王家の許可を得たものだけが利用できる様になっている。
そして、王都にあるここを利用できるのは、王家の許可を得たものだけで、俺達の場合はつい先日の王妃様とご対面というドッキリを食らった報酬だ。
「急に呼びつけてごめんね?何かお詫びしないとね」
「では、こんな事を……」
そんな感じだったらしい。
まぁ……体裁が大事なのはわかるが、もう少しマイルドな方法をとって欲しいんだけれど……。
◇
「お!あいつらまだ生きていたのか」
「どいつよ?」
「あそこのデカいハゲんところだ!ダンジョンよりも国境付近の外での活動がメインの連中だったがなぁ……いつの間に来ていたんだ?」
などと盛り上がっているタイアー達。
アレクも目録を見比べながらだが、楽しげだ。
親しい相手ならまだしも、中々冒険者同士あまりジロジロ観察することは無いから気持ちもわからなくは無いけれど……。
「セラ、お前はどう見る?」
「ぬ?」
お声がかかったので俺も見てみようと、寝転がっていたソファーから体を起こし、窓辺に向かってみる。
アカメとシロジタの目と、さらに【妖精の瞳】を通して、件のデカいハゲを見ると……うん……マッチョだ。
魔力はほとんど無く、ひたすら身体能力を鍛え上げた感じだ。
「超強い一般兵士って感じかな?恩恵品は持っていないみたいだよ。後魔法も使わなそう」
「そうか……。確かに国内で長く活動する冒険者は当てはまらないか。となると、やはり外国か……」
そう言うと資料棚に向かい何冊かの本を抜き出した。
冒険者目録かな?
「まあ、日数に余裕はあるからな。焦らず休養がてらやっていこう」
戻ってきたアレクがテーブルに置いたものは、国内の野盗の討伐記録だ。
……仕事か趣味か微妙なラインナップだな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】・【琥珀の剣】5枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・35枚
エレナ・【】・【緑の牙】・4枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




